【大切なお知らせ】(追記あり)
突然のご連絡失礼いたします。
私はこのアカウントの主である江戸空樹の母です。
江戸空樹は、一昨日の十月三十一日に永眠しました(享年二十一歳)。
息子は、今から六年前、息子が中学三年生の頃からこのサイトに小説家を書いて投稿していました。
息子の処女作である「まさしく聖天の霹靂〜ある晴れた日に空から降ってきた美幼女は、世界を救った聖女様の生まれ変わりでした〜」は、現役中学生が書いた作品として大きな注目を集め、ハイファンタジージャンルの日間ランキングで最高五位に輝き、たくさんの方に読んでいただきました。
その後の作品は、処女作の「聖天の霹靂」ほどは読まれなかったのですが、執筆活動の楽しさに魅了された息子は、毎日欠かさず小説を書き、このサイトにアップしていました。
小説を書くことが息子の生き甲斐でした。
私がこうして生前息子がお世話になっていたサイトユーザーの皆さまに息子の死をお伝えするに至ったのには、理由があります。
息子が最期に私に送ったLINEにて、息子に、そのようにするように頼まれたのです。
息子、江戸空樹は自殺しました。
なぜわずか二十一歳という齢で、息子が自らの命を絶たねばならなかったのかという理由は、息子が遺した遺書に書かれています。
その遺書を、息子の意思に基づき、公開します。
分かっていただけたかと思います。
息子はたしかに自ら用意した紐で自らの首を括って死にました。
しかし、息子を死に追いやったのは、あなたたちサイトユーザーなのです。
息子、江戸空樹は、死の直前まで、新作ファンタジーである「運転免許学科試験を三回連続で落ちた俺、異世界で天才ドラゴンライダーとして空を駆け名を馳せる」を連載していました。
しかし、新作「学科落ちドラゴンライダー」は、好意的な感想もいくつかいただいていたものの、一部の粘着質なユーザーから、誹謗中傷としかとれないような批判的な感想も寄せられていました。
息子の死後、母親である私が感想欄を確認したところ、以下のような看過し難い感想をいくつも発見しました。
これらの感想は、建設的でないばかりではなく、息子に対する人格非難まで含まれています。
このような感想を繰り返し書いていたユーザーたちは、一体何を目的としているのでしょうか。息子に精神的な打撃を与えて筆を折らせることが目的なのでしょうか。そもそも、このユーザーたちは息子の作品をちゃんと読んでいるのでしょうか。
私は、息子の筆ばかりか心まで折り、息子を死に至らしめたユーザーたちを絶対に許しません。
十一月二日 江戸空樹の母
…………
【十一月七日追記】
先日アップした文章に対して、皆さんから多くのご反響をいただきました。
江戸空樹の作品のファンだという方から、「学科落ちドラゴンライダー」の連載終了を惜しむ声がありました。また、今まで江戸空樹の作品を一度も読んだことがない方々にも「学科落ちドラゴンライダー」を含めた江戸空樹の作品に興味を持っていただき、作品に対する好意的な感想を多くいただきました。
そうした方々に朗報があります。
実は、江戸空樹は生きています。
先日アップした文章は狂言であり、僕、江戸空樹本人によって書かれたものです。
遺書も当然に偽造したものですし、遺書に映り込んでる手も、男性である僕の指に付け爪をしたものです。
エイプリルフールでもないにもかかわらず、僕がこのような嘘を吐いたのは、単なる悪ふざけではありません。
そうせざるを得なかった事情が二つあります。
一つ目の事情は、感想欄の粘着質ユーザーの撃退です。
先ほど文章は〈狂言〉と書きましたが、感想欄のスクリーンショットは実在のものです。
そして、僕がこうした一部のユーザーの書き込みによって精神的に追い詰められ、自殺未遂に及んだこともまた事実です。
僕は、僕の執筆人生、すなわち僕の人生において有害無益でしかない厄介ユーザーに、どのように痛い目に遭ってもらい、どのように消えてもらえるかということを四六時中考えていました。
その結果として思いついたのが、狂言自殺なのです。
そして、僕の思惑は見事に実現されました。
僕がスクリーンショットで感想を貼り付けたユーザーは、いずれも特定された上でネットで袋叩きに遭い、結果、全員がこのサイトのユーザー登録の解除を余儀なくされました。
また、うち一名に関しては、このアカウントに謝罪のDMまで送ってきています。
このような展開は、僕にとって愉快痛快だったということにとどまらず、このサイト全体の正常化にも繋がったようです。
サイト運営者は、感想を残す場合のルールについて新たな指針を設けるとともに、もらった感想を作者が自由に削除する機能を新設しました。
また、批判的な感想が作者に与える負の影響についての議論がネット上で活性化し、この問題が作者と読者に広く共有されたことも大きな成果だったと思います。
今回の僕の狂言を契機として、このサイトが今後もさらに温かいものとなることを心から願う次第です。
そして、僕が狂言自殺をしなければならなかった二つ目の事情ですが、それは他でもありません。
僕の作品の読者を増やすためです。
僕が毎日連載していた新作である「運転免許学科試験を三回連続で落ちた俺、異世界で天才ドラゴンライダーとして空を駆け名を馳せる」は、僕の今までの執筆生活における集大成ともいえるような自信作です。
それにもかかわらず、なかなか読者は付かず、ランキングに載るようなこともなく、ブクマ数は二桁台のままでした。
このサイトのユーザーであれば誰でも知っていると思いますが、このサイトで読まれる読まれないというのは、作品のクオリティと必ずしも比例しません。
僕は、「学科落ちドラゴンライダー」は書籍化ひいてはアニメ化にも相応しいようなクオリティの作品であり、本来であればもっと読まれ、もっと評価されるべき作品だと確信しています。
この点についても、僕の思惑は実現しようとしています。
僕の狂言自殺をによって注目を集めた「学科落ちドラゴンライダー」は、今では総合ランキングの一位となっており、毎日何百万というPVをいただけています。
「面白い」「映像化してほしい」という好意的な感想もたくさんいただけており、作者の「死亡」によって連載が打ち切りとなってしまうことを惜しむ声も数えくれないくらいいただいております。
安心してください。「学科落ちドラゴンライダー」の連載は再開します。作者はこうして生きていますからね。
僕に味方して感想欄の悪辣なコメントを批判してくださった方々の多くは、「作者の人格と作品は別物。作品が面白ければそれで良い」と言ってくれていました。
当然ながら、作者の生死と作品が面白いかどうかも別物ですよね。
連載打ち切りを惜しんでいた皆さま、再開後の「学科落ちドラゴンライダー」に変わらぬご支援をよろしくお願いします!
十一月七日 江戸空樹
こんばんは。ファンタジーが書けないミステリ書きの菱川あいずです。
この作品は単なる悪ふざけです。何一つとして真実が含まれていないフィクションです。
そんな単なる悪ふざけのために、約1000円の費用をかけて、遺書用の便箋と付け爪を買いました。
内容は相当にくだらないのですが、初めての試みがたくさん詰まった作品ではあります。
まず何より、前々から書こう書こうと思いながらなかなか書けなかったモキュメンタリーをようやく書けました。
「小説家になろう」という媒体でできるモキュメンタリーはなんだろうと考えた結果、このような不謹慎なものしか思いつかなかったというのは痛恨の極みなのですが、最初の一歩を踏み出せたことは良かったかなと思います。
なお、説明するまでもないですが、主人公のペンネームは、東京スカイツリーです。