通学初日です
「思いついたよ、あの〇〇を救う方法」
「ゲーム開発会社に嘆願書を送るとか?」
「手紙はすでに何通も送ってる。気の毒過ぎるからどうにかしてほしいって」
「そこまで熱くなってくれる人間がいて、あの〇〇も幸せなんじゃない?」
「ゲームの内容変えるのが無理なら、同人誌作ってせめてお話の中だけでも幸せにって計画してる」
「需要あんの?公式設定資料集に潔く散る〇〇の小話が載ってんのに」
「ネットで何人かの同志は見つけた。紙の本は無理でもネット小説ならいけると思う」
「気の済むまで頑張りな。私は〇〇のざまぁ希望」
せめてお話の中だけでも幸せに、ってそもそもゲームの設定のお話なんだけどね。何故かあの〇〇に感情移入しちゃったんだよね。だって何の落ち度も無いのに・・・
初めて学院に通う日がやってまいりました。昨夜は興奮と緊張でなかなか寝付けず、少々寝不足です。通学の際の服装は自由なので、私は爽やかな色合いの動きやすい恰好を選びました。別宅から学院までは徒歩で通います。少し遠いけれど、貴族の子女全員が馬車を利用すると混雑して大変な事になるそうなので仕方がないです。
「それでは行ってまいります」
「ご無事の御帰りをお待ちしております」
ばあやに聞いたところ、初日は3年間で学ぶ授業内容の大まかな説明だけで終わるそうです。お母様は魔力の扱い方は教えてくださいましたが、学院生活についてはあまり話してくださいませんでした。おそらく私に楽しみを残しておいてくれたのでしょう。
管理人夫婦と共に歩く学院への道すがら、王都の町並みを楽しみつつ私の心は弾んでおりました。友人が出来るかもしれない、もしかしたら将来の夫と巡り合えるかも、などと浮かれておりました。学院での新たな出会いに、希望に満ち溢れた未来に、何の疑いも持っていなかったのです。
私は自分で運命を変えてみせます。お母様の為に、領民の為に、そして自分自身の為に。