番外編 【黒色の武装】御一行様、日本へ
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今回は番外編です!
それはコウキの気まぐれだった。
「日本へ行きたくないか?」
夕食の際、唐突に言い出したその言葉にジン達はあっけにとられながらも、各々の意向を示した
ジンは「まぁ、行っても良いか……」とアイリとグレイは「ジンの故郷に行ってみたい」という興味からだった。
そしてアンナ達もアイリ達と大体同じであり、意見が全員一致したところで、
「それじゃあ、ジンの女神様の力で俺たちを一時的に向こう側に転移させられねぇか?」
「多分、出来るだろうから……少し待って」
そう、ジンはエシラムの力を全て譲渡されたことである意味神の領域に到達したのである。
ジンはコウキの提案に頷くと、早速手を玄関の扉に向けて翳し、俗に言う‶神の力〟を集中し始めた。徐々に扉に神気が集まり、扉が光に包まれ始めた。
ふとアイリが、
「でも、こんなに軽々と異世界に渡ってよいものなのでしょうか……?」
「まぁ、仮に向こうの神がいたとしても『故郷に戻ってきただけ』でゴリ押せば何とかなる。というか最悪武力制圧できる」
「流石は神の座に一時的についていたただけのことはあるわねグリース。思考が物騒ね」
「お前だけには言われたくないんだがな、グーイ」
「お二人さん。そろそろ出来るっぽいぜ」
そしてそうこうしているうちに扉の形状が変化し、一際豪華な装飾と文様がついた扉に早変わりした。
その扉にはまるでどこぞの動く城に出てくるような形状の切り替え機のような物が付属していた。
「出来た。これで後は切り替えることが出来れば……」
そういってジンが切り替え機を操作して絵柄を変えた。
窓の外の景色が目まぐるしく変化したかと思うと、どこか親しみある現代風の建築物や、異世界では無かった電柱やたまたま通り過ぎた車、そして何より懐かしき空気の感じにジンとコウキは僅かに身震いした。
「ははっ……マジかよ……」
「ここは、俺たちのよく知る……」
「「日本だァアアアア!!」」
◆◆◆
桜が満開な季節の休日の渋谷にて
『あの金髪の女の子可愛くね?』
『あぁ、それにあの女の人も美人だよなぁ……家族連れか?』
道行く人々が次々とその御一行……正確には女性陣に視線を向ける。
視線の先には、黒いレースに身を包んだアンナと白いワンピースを着たアイリがいた。彼女たちの美貌は異世界においてもトップクラスであり、それは日本でも変わらずと言ったところだったのである。
そしてグレイとグーイは灰色のパーカーを着ており、彼女達に対して可愛い、という言葉が聞こえてくる。
人々は彼女達の美貌に魅了されながらも隣の男性陣に目を向けた。
彼らの視線の先には、流行の服装をしたコウキとジン、そしてグリースがいた。
『とするとさ、あの男の中で誰が父親よ』
『多分……あの灰髪のイケメンじゃねぇか? 隣の黒髪の男二人はジミ過ぎるからな』
「殺します」
「待って待ってアンナちゃん。流石にここで殺しは不味いって!」
「ジン様が、地味?」
「待ってアイリ、武力行使はこの世界では流石に駄目!」
アンナとアイリは自分の最高の伴侶を貶されたとして武力行使をしようとしてコウキとジンに止められていた。
絶世の美女ことアンナの手を両手で包み込んで必死で抑え込んでいるコウキとアンナに負けず劣らずのアイリの手をコウキと同じ方法で抑え込んでいるジンであった。
周りで見ていた人々は、『あいつらが彼氏と夫かよ!?』と驚愕と嫉妬を込めた視線を送っていた。
彼らが町中を歩いている理由は、主に日本観光が目的であった。
これもコウキが『せっかくだから日本の東京ぶらつこうぜ』と言ったことが始まりだった。
一先ず現代日本で職質されかねない鎧等を取り外し、この世界でも違和感がないような服装に着替え、服屋に行こうとしたが
『まず俺らこの世界の通貨持ってねぇ』
という至極真っ当なコウキの発言にジンは頭を抱えることになったが、
『では、私の《等価交換》であっちの通貨と等価値にしてみるわ』
『そういやアンナ、そんな魔法持ってたな……』
とアンナが手持ちのポイントを日本円に変化させ、事なきを得た。尚、ジン達の手持ちは下手をすれば国家予算かそれ以上になってしまうほどであり、今度は逆にこのお金をどう処理するか頭を抱えることになったのである。
その後は有名な服屋に訪れ、割と高価であったが女性陣の服を身繕ってもらい、現在に至るのである。
「取り敢えずデパート行かね?」
コウキの提案にジンは賛成の意思を示すも、それ以外の異世界組がデパートがどんなものか分からなかったため取り敢えず沢山商品がある、という曖昧にも程がある説明をしてついて行くことになった。
◆◆◆
「全員動くんじゃねぇぞ!! 動いたら撃つからな!!」
『なーんでこうなったんだっけ?』
『……強盗団がたまたまこのデパートに来ていたから……?』
『運悪すぎだろ……俺たち……』
現在ジン達がいるデパートは黒い覆面を被った強盗団に占領されていた。
男たちは拳銃やらアサルトライフルらしき銃を装備し、店内にはバリケードを敷いて完全にドンパチやるつもりなことが見て取れた。
ジンとコウキは三階電化製品コーナーにてゲームを探していたが、突然覆面の男たちが店を占領したことを受け、咄嗟に《念話》で会話をしているのだった。
アイリ達はというと、食材を買う為に一階の食品売り場にいるため、二手に分かれてしまっているのである。
『さーて、どうすっかな……外に警察がいるし、下手に動けんな……』
『……《完全沈黙》なら行けるか……?』
『だとしても周りの目が多いからな……とはいえアンナちゃん達が心配だ。……こいつらをボコボコにしてそうで……』
『……確かに』
《念話》を駆使しながら作戦を練っていたジンとコウキは、周りの目がある以上あまりうかつに動くことが出来なかった。
暫く唸っていると、コウキが一つの提案をした。
『……ちょっと考えがあるだが』
『なんだ? 父さん?』
コウキの作戦を聞いたジンは、マジかよ……という表情を浮かべながらも現状はそれしかないと腹を括った。
そして目の前に強盗団の一人が通り縋った時
「すいませんトイレに行かせてもらえませんか……?」
「あ゛? トイレだぁ? チッ、ほら立て! さっさと済ませろ!」
『よーし、じゃあ俺も後で合流する。思う存分暴れてこい』
コウキに《念話》で見送られながらもジンは男の誘導でトイレに案内された。尚その間も銃は突きつけられたままである。
そしてトイレに入り、他の人物がいないことを確認したジンは――即座に甲冑を纏い、男の顔面を振り向きざまに殴り抜いた。
「ブゲェッ!?」
男はきりもみ回転をしながら勢いよく地面に叩きつけられ、気絶した。
異世界で最強レベルに到達しているジンの前には銃を持っていようと形無しである。
「さーて……行きますか」
「……あいつどうしたんだ? おい、お前見に行ってこい」
「あぁ、行ってくる……」
(ジンが行動を起こした……今度は俺の番だな)
もう一人の男がトイレに行ったまま帰ってこない仲間を連れ戻しに向かった。周囲の人間は皆床に顔を伏せており――チャンスは今。
「たくっ……」
「ハーイお兄さん」
「何……何だおm」
「眠れ」
「アガッ……」
見張りの男の首を締め上げて気絶させた黒い甲冑の男――コウキは予め《念話》でアンナ達の無事を確認した後、アンナの《偽装魔法》で監視カメラが機能していないことを確かめたコウキは四階に向かって行った。
「おっと……もうこっちは片付いたか……」
遅れてトイレから出てきたジンは、《完全沈黙》による完全無音状態で堂々と二階に降りていった。
全員頭を伏せているため、誰も気づくはずがない。
――筈だった。
(あの黒い騎士様は……一体……?)
一人の少女が二階に向かうジンの後ろ姿を見ていたのである。




