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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第七章 終焉の先に待ち受けるモノ→いよいよ……最終決戦!
93/100

*93〝魔王討伐戦線〟開始

 日が昇り始めた早朝の朝の一室。


「おはようございます。ジン様♡」

「……おはよう」


 ジンが起きると隣には一糸まとわぬ状態のアイリがジンにしな垂れていた。アイリは猫撫で声でジンに迫っていた。

 それに対しジンは真っ赤な顔を手で覆いながら昨夜の自分の醜態を思い返していた。


 結論から言えばジンは終始アイリのペースに乗せられぱなしで年上としての矜持も何もかも失ったのだった。そして同時に恋する乙女は最強だということを思い知らされたのであった。

 さらに言えば、自分のことを可愛いなんて言われたジンは、残された年上青年のプライドも何もかも粉砕されたのである。


「……死にたい」

「でしたら私も死出の旅路にお供させていただきます」

「ヒエッ」


 昨日のことがあったからか好意を隠さなくなったアイリがジンの呟きにそう返した。ジンはとんでもない存在を目覚めさせてしまったと僅かに恐怖心を抱くとともに満たされたような感情を覚えたのである。


 年端も行かぬ少女に怯えるその姿は黒鉄部隊が思い描くクールなイメージとはかけ離れており、恐らく彼を良く慕う者が今のジンを見れば卒倒することは間違いなかった。


「……それで、いよいよ今日な訳だが……」


 ジンは話を挿げ替えて今日の事――魔王の討伐について話をすることにした。


「はい。私達は遂に今日この日を以て魔王を、あの深淵を討伐するのです」

「そうだ」

「……私はもう怖くありません。ジン様もグレイちゃんもいますので」

「……頼もしい限りだ。ありがとうアイリ」

「ふふふ」


 この前までの無垢な少女はそのままに、愛する存在をその手の中に捕らえることに成功した少女は一皮も二皮も剝けたのだった。

 その微かな笑いの所作一つでも上品かつ異性を魅力する女性そのものでジンは再び思考が停止しかけたが、そろそろ準備をしないといけないことを思い出し、ベッドから起き上がろうとする。


「アイリ……そろそろ……」

「えぇ……そうですね。ですが、ジン様少し……」

「どうした?」


 チュッ


「は……はいぃ?」

「……生きて帰りましょうね」

「あ……あ……」


 突然の不意打ちに再び硬直したジンが復活するまで数分要した。

 それからジンは先に着替えて食卓に向かったアイリに遅れを取らないようにして急いで甲冑を身に纏った。


 ガチャン ガチャン


「……良し!」


 ジンは再び自らの内に決意を(みなぎ)らせ、甲冑を身に纏い、部屋を後にした。


 黒い甲冑は窓から差し込んだ日の光を吸収するかのように漆黒に輝いていた。



◆◆◆



「おはよう! ジン!」

「おはよう、グレイ」

「おはようございます。今日はジン様の好物をご用意させていただきました」


 食卓に並べられたのは、色とりどりの野菜と大きなステーキが入ったシチューと朝から食べるには胃に少々きつそうなメニューだ。

 しかしジンもグレイもその香ばしい香りに食欲をそそられ、口内から(よだれ)があふれ出しそうになっていた。


 そして食卓に全ての料理が並べ終わると、アイリも席に着き三人は顔を見合わせると


「「「いただきます!」」」


 息を合わせて食材への感謝を告げると、ジンとグレイは一目散にシチューを味わい、ステーキを味わって即座に空っぽになった。


「「おかわり」」

「あらあら、おかわりは幾らでもありますよ」


 そしてジンもグレイも新たに器にシチューとステーキを乗っけると更にぺろりと平らげた。彼らのその様子からは今日が決戦当日だということはまるで想像が出来なかった。


「……ジン。頑張ろうね!」

「あぁ!」


 やがて食事を終えた三人は屋敷を出て、部隊が待つ正門前に向かった。その際これまでいた屋敷に世話になったとして一礼をして感謝の念を告げた。



◆◆◆



 ――セーラス国 正門前


 既にそこには大勢の黒い甲冑を身に着けた黒鉄部隊がセーラス国の旗を掲げながら待機しており、そこには槍を肩に掛けたカルメンと魔導士が身に付けるローブを見に纏ったヒュドールが、そしてその最前線に立っているのはヴィクターだった。


 ヴィクターは最後の戦場として魔王城を選んだのだった。


 両手剣を地面に突き刺し威風堂々と構えるその姿は最後にジンと戦った際に見せた時に見せていた覇気を纏い、静かに目を閉じていた。

 それは己の最期を垣間見ているのか、はたまた何かに祈っているのか、彼にしか知り得ないことだが少なくともヴィクターは今日この日を己の生涯最後の戦場に選んだことは間違いないことだった。


 そして暫くした後、黒鉄部隊が一斉に分断し跪き、道を開けた。

 彼らの動きは統一され、まるで軍隊のように洗練されていた。


 黒鉄部隊が開けた道を通るのは、紛れもないジン。そしてアイリとグレイだった。


 音は発生しないものの、カルメンとヒュドールは後ろを振り返り、ジンを見据えた。一方ヴィクターはどこか懐かしむように空を見上げ、呟き始めた


「……遂に、この時が来た。我の……最後の戦が、我が……最後に剣を振るう時が」


 ジン達はヴィクターの言葉を静かに聞いていた。


「今日……我は、いや我々は、この血塗られた歴史に終止符を打つ。諸君、これは名誉ある戦である。諸君、これは歴史を掛けた戦いである。諸君、これは……我々の未来を決める審判の時である!!」


「「「うぉおおおおおお!!」」」


(……ディナルド、我が息子たちよ後は任せた。父は、この戦場で散るだろう)


 ヴィクターの覇気の乗った一声に黒鉄部隊はそれぞれ雄たけびを上げた。それと同時にヴィクターは両手剣を引き抜き、胸の前に掲げた。

 ヴィクターはここにはいない自分の息子たちのことを思いながら静かに作戦の開始を告げた。


「では……これより〝魔王討伐戦線〟を開始する! ヒュドール、他国に作戦開始の伝達を!」

「はっ!」

「カルメン! 黒鉄部隊を引き連れ所定の位置に!」

「はっ! ヴィクター様と最後に戦えることを誇りに思います!」

「そして……ジン! ……後は頼んだ」

「あぁ!」


 そしてジンは黒鉄部隊の方を振り返り、《完全なる色彩の光剣フルカラー・ライトソード》を天に掲げ力いっぱい叫んだ。


「……勝つぞ!」

「「「オォオオオオオオオオオ!!」」」


 ――こうして〝魔王討伐戦線〟の開始が火ぶたを切って落とされた

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