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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第七章 終焉の先に待ち受けるモノ→いよいよ……最終決戦!
92/100

*92 決戦前夜

 ヴィクターとジンの模擬戦闘が終わっての数日間ずっと国中が喧騒に包まれていた。

 セーラス国、国王ヴィクターの敗北はそれほどまでに衝撃的な出来事であり、またそれを打ち破ったジンに対してもセーラス国のみならず大国や小国がその強大さを認め、それを保有していたセーラス国との経済的や政治的な繋がりをより一層強化していく方針を固めたのだ。


 誰もかの王を打ち破った【黒色の武装】を敵に回したくなかったが故の行動であるがその結果としてセーラス国は前例がないほどの経済効果を生み出し、広大な領地を保有していたセーラス国だが、移住をしに来た人々や新たな商業を展開しに来た商人たちだけで満杯になり、やむを得ず領地を拡大する旨を各国に伝える羽目になったのである。


 多少の反対意見もあったが、いずれもその領地拡大を認め、ますます発展していくことが期待された。


 そしてさらに国を騒がせたニュースがあった。


 それは、長きに渡って最前線に立ち続けたヴィクターの引退宣言である。


 既に半世紀近くセーラス国を統べて来た偉大な王の引退にはそれこそ領地拡大の宣言よりも多くの国々が様々な反応を見せた。

 しかし当の本人が自らの老いを実感させられたことと遠征や執務が殆ど王子たちに任せていたことを告げ、引退もとい隠居を宣言したのだ。


 これに際して王子の間で後継者を巡る争いが起きかねないとして、ヴィクターは国中に次期セーラス国国王を取り決める選挙を行うことを取り決めた。



 ――結論から言えば次期国王に選ばれたのは第二王子ディナルドであった。


 他の四人の王子たちと同じくらいの仕事量を担当していたとは言え、やはり決め手になったのは【黒色の武装】ジンのセーラス国への勧誘の成功とセイクリッド王国との強力な繋がりを造り上げたことが一番の決め手となり、見事王座を勝ち取ったのだった。


 人類の英雄たるジンをセーラス国の下に勧誘させた功績はやはり大きく、ジンが居なければ人類を脅かしていた四天王の撃破を成し得なかったと豪語した際は他の王子も納得せざるを得なかったという。

 さらにジンの交友関係からシニア―ク、セイクリッド、そして雷霆国との繋がりをちゃっかり持っていたことからもディナルドは王の器があるとして満場一致で決まったのだった。


 戴冠式に当たってディナルドは何時かは掴んでやろうとしていた栄光の冠を晴れ晴れとした表情で受取り、セーラス国の未来……ひいては人類の未来の為にと高らかに謳い、民衆からの支持を集めたのだった。



 こうしたことがあった中ジンは、きたるべき魔王討伐の準備を進めていた。


 ――魔王討伐


 それはかの【色付き】ですら成し遂げれず、封印するしかなかった人類が挑むべき最後の試練であった。

 それにあたって各国は兵力を高め、決戦に望もうとしていた。


 まずセーラス国ではジンの影響を受けたと思われる黒い甲冑で統一された部隊〝黒鉄部隊(くろがねぶたい)〟が編成された。彼らの多くは皆、元冒険者であったり、名を挙げた歴戦の猛者、そしてカルメンの部隊員などで構成され、その部隊の大隊長をジンが務め、隊長をカルメンが務めることになった。


 余談だが、訓練場に招かれたジンが初めて黒鉄部隊と顔合わせをした時に心臓が止まりかけるほどに内心仰天していたのである。


 次にシニアーク王国では女王ヴィティがフラムを長とする〝紅蓮部隊〟を結成し、魔王討伐の際にいつでも駆け付けれるように今も鍛えているのである。


 セイクリッド王国では新たに〝白騎士団〟が、雷霆国では〝迅雷衆〟が結成され、同じく来たるべき時を待っていた。


 来たるべき魔王討伐の決行日は――五か月後であり、その日こそ嘗て魔王を封印した日から丁度百年の記念すべき日であった。



 ――五か月後


「今日の訓練はここまでだ」

「「「ご指導感謝致します!」」」


 ヴィクターとジンが雌雄を決した模擬戦闘からニか月後、ジンは新たに併設された訓練場にて黒鉄部隊の訓練を行っていた。

 まるで軍隊のように統率されたその部隊には最初も戸惑いを隠せなかったジンだが、徐々に慣れていった、いや慣れてしまったのである。


 いくら精神的にも成長を遂げたとはいえ、見知らぬ人々の前で大声で話せるほどの度胸が無かったジンはそれはもう何度胃が悲鳴を上げたか分からない程であった。


 訓練場を後にしたジンの後姿を見て訓練兵たちは


「クゥ~! やっぱりかっけぇぜ! ジン様はよぉ!!」

「あの甲冑の造形といい、ムダなことを一切話さないクールぶりが何よりもカッコイイよな!」

「それに、アイリ様の作る飯が美味いのなんの!」

「本当だよな!」


 各々ジンについての話をしていたり、アイリが作る昼食についての感想を楽し気に述べていた。


 ジンが訓練を担当するに当たってアイリも何か出来ないかと模索した結果、兵士達の昼食を作ることにしたのである。その結果アイリは女神様と言われるようになり、兵士たちの食を担うことになったのである。

 そしてグレイもアイリとジンの手伝いをするようになり、小さな体で健気に動くその姿に男女問わず魅了させ、マスコット的な立ち位置になっていたのである。



 そしてその場を後にしたジンはアイリ達の待つ屋敷に向かっていた。


 屋敷の食卓には既にアイリが美味しそうな料理を並べて待っていた。グレイは風呂に入っている最中の様でその場にはジンとアイリしかいなかった。

 ジンは食卓に座り、冑を脱いだ。


「さて、ジン様いよいよ明日ですね……」

「そうだな……」

「……ジン様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「?」


 アイリが怪訝そうな表情を浮かべジンに問いかける。ジンは思わず何事かと身構える。


「ジン様は……この戦いが終わった後はどうするおつもりでしょうか……?」

「……戦いが終わった後」

「はい」


 ジンは思い返した。


 この世界に転生してから明確に自分がやりたいことが思いつかず、結果として四天王を倒したり、魔王を倒す羽目になったことを。そしてその道中で生き別れになった自分の父親と再開したことでジンには心の余裕がある程度出来ていた。

 明日には魔王並びにあの悍ましい深淵を討伐することになる。その為に今日のこの日までジンは膨大な数の武器を作り、収納すると共に、兵士達にも配布したりして着実に、そして確実に深淵を討伐するための準備を済ませていた。


 ジンは魔王や深淵には負けないつもりだったが、ふとアイリに言われてその先のことを何も考えていないことを悟る。しかし幾ら改めて考えても思いつかなかったため、ジンは正直に話した。


「……まだ考えていなかったな」

「あ、あの……でしたら……その……」


 アイリがどこか頬を染めながら俯いた。ジンは怪訝そうな表情をしてアイリを見据える。

 そしてアイリが覚悟を決めたような表情をしてハッと顔を上げた。


「私と……ッ! 結婚してください!!」

「……? え?」


 突然の告白にジンの脳はフリーズし、思わず手に持った冑を床に落とした。


 ガランと床に冑が落ちた音が響く。


 アイリは顔を真っ赤にし、己の好意を全てさらけ出した。その目には僅かに恋情と羞恥の感情が渦巻いていた。


「な……なぜ、俺と……? 俺で、良いの?」

「はい! ジン様と、結婚したいと申しているのです!」

「え……? 普通、逆では……?」

「はい。ですがもう我慢できません! この溢れんばかりの感情を抑えることが出来ないのです!」

「」


 ジンは濁流のように押し寄せてくる〝愛〟の暴力に圧倒され、言葉を失っていた。

 そんなジンの方へ愛しさを込めた笑みを浮かべながらゆっくりと、ゆっくりと近づいてくるアイリ。


 ジンは今だぼーっとしているが、気が付いた時にはアイリに顔を掴まれ、やがてアイリの綺麗な湖のように透き通った色の眼とジンの黒い眼が近づき……


 ――ジンの口に柔らかな触感が触れた。


「……はぇ?」

「ふふふ……漸く、本当に、ありのままに好意を伝えることが出来ました……もう、ジン様は逃がしません」

「……へ?」

「夕食を食べ終え、お風呂を出た後……アイリの部屋に……」

「????」


 あっけにとられ過ぎて硬直するジンだが、やがて自分がキスされたことを知ると顔を真っ赤にした。そんなジンを見つめるアイリの目には多量の愛と独占の色が混じりあっていた。


 そして、夕食を食べ終えたジンは、無垢な少女と思っていた少女に骨の髄まで貪られ、ジンは一皮むけたのだった。

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