*90 王との闘い 前半戦
ズガン! ガキィイン! ドグォオオン!
「カァアアアアアアア!!」
「――シッ!」
《黒騎士の赤槌》とヴィクターの両手剣がぶつかり合った爆発音を皮切りに金属がぶつかり合う音が幾つも響いた。
雄たけびを上げながらジンに両手剣を乱雑に振るうヴィクター。それを《黒騎士の赤槌》と《黒騎士の黄鎌》を器用に扱い叩き落としていくジン。彼らはせわしなくフィールド内を駆け巡りながら必殺級の一撃を次々と繰り出していった。
その光景に観客は言葉を発せられなかった。
「ぬあぁああああああ!!」
「――ッ!」
「ぬぅ!」
反撃の余地も許さないヴィクターの猛攻にジンは一度武器を振りかぶり、投擲した。
ヴィクターは咄嗟に体を捻り、両手剣を横薙ぎに振るい投擲された武器をジンの背後の壁まで吹き飛ばした。
その間ジンは地面に突き刺さった《黒騎士の緑槍》と《黒騎士の白剣》を引き抜き、ヴィクターに走り迫った。
そして走りながら背後に白剣を展開し、槍を突きだした。ヴィクターはその余りある脚力でジンの左側面に入り込み、ジンの左肩に向けて両手剣を振るった。
ガキン!
「――ッ!!」
しかしヴィクターの攻撃は《黒騎士の蒼盾》によって妨げられ、白剣がヴィクターに向かって射出された。咄嗟に両手剣を盾代わりにして白剣の雨を防いだ。
一方ジンは走り出した勢いを止めずに地面に槍を突き刺した。そしてその槍の柄の部分を踏みつけ、ヴィクターに向けて飛び出し、白剣を振るった。
「なんのッ!!」
盾代わりにしていた両手剣を構えなおし、刃先を地面にこすり合わせ、掬い上げるように斬り上げた。それに対してジンは空中で身をよじり、回避する。僅かに甲冑を掠めたが、両手剣を振り上げたヴィクターの体勢は隙だらけであり、攻撃するなら今しかないと思わせた。
――もっともヴィクターはそれすら読んでいたのである
なぜならヴィクターは振り上げた両手剣を今度は力の限り脳天目掛けて振り下ろしていたからだ。当たれば無事では済まない。それは誰の目から見ても明らかだった。
しかしジンは脳天目掛けて振り下ろされている両手剣の側面を狙って無数の武器を射出した。その衝撃で両手剣はジンを逸れ、真横に叩きつけられた。その衝撃で訓練場の地面に隕石が直撃したかのようなクレーターが出来た。
そして好機を逃さないジンの白剣がヴィクターの鎧を縦に切り裂いた。
「何と……!」
「――もう一度」
感嘆するヴィクターを余所眼にジンは空いた左手に《黒騎士の赤槌》を出現させ、そのままヴィクターに叩きつけた。
小規模の爆発と共にヴィクターの身体が後退りする……ヴィクターの鎧は今にも砕けそうなほどになっていた。
対してジンは胴体を掠めはしたものの殆ど無傷であり、まだまだ余裕がありそうに見えた。今もヴィクターに向けて足を進めており、更に追撃を加えるつもりのようだった。
「くくく……全く、嫌になるな……老いというモノは……」
ザン!
ヴィクターは含み笑いをしたかと思うと両手剣を地面に突き立て、そして徐に右手をかざした。
すると、両手剣が突如変形をし始めた。
「お……おい……なんだよあれ……」
特別席にてフラムが徐々に変形していく両手剣に驚きを隠せないでいた。そして同じくその光景を目の当たりにしていたカルメンとヒュドールは冷や汗を流しながらヴィクターを見つめていた。
「あれは……まさか……」
「――ヴィクター様の本領発揮といった所だね。まさかここで見れるなんてね……」
「本領? ヴィクター殿はあの両手剣を扱うのではないのか?」
「いいや、ヴィクター様はね……武器を持つより素手の方が強いんだ」
やがて両手剣だったものが変形が終えるとそこには、金と銀のかぎ爪がついたグローブがヴィクターの両腕に収まっていた。それと同時にヴィクターの鎧がガランと大きな音を立て、地面に落ちた。
纏う闘気の質が変わったことに警戒を見せるジン。ヴィクターはゆっくりと立ち上がり、見つけたグローブの感触を確かめるかの如くしきりに手を開いたり閉じたりを繰り返していた。
「久方ぶりだな……これを使うのは。何年ぶりだ? だがそんなことはもはやどうでもいい。――やるぞ」
「!!」
ドゴォン!
ヴィクターが地面を陥没させる勢いでジンに飛び掛かった。その拳は固く握られており今にも殴りかかろうとしていた。ジンはそれを――敢えて受けた
「ぬぅ!?」
「――捕らえた」
なんとジンは自ら拳を受け、そしてお返しと言わんばかりにカウンターを決めた。顔面にカウンターを受けたヴィクターは怯みこそするものの、上半身を筋力だけで起き上がらせ、ジンに拳を振り抜いた。
しかし二回目は当たらず、ジンは後方に跳躍して回避した。
「行くぞォ!!」
後方に跳んだジンを捕まえるかの如くヴィクターが再びその爆発的な脚力で飛び掛かった。それを見たジンは迎撃と言わんばかりに地面に突き刺さった武具をヴィクターに向けて射出した。
四方八方から襲い来る数々の武具に対してヴィクターがとった策は至って単純だった。
「ゼヤァアアアアアア!!」
ドガ! バキ! ガキィン! バゴォン!
ヴィクターは拳を、足を、果ては体全体を駆使して迫りくる武具を残らず叩き落とし、ジンの下へその拳を届かさせようとしていた。
しかしヴィクターは得体の知れない感覚に襲われ、直ぐにジンの右前方に曲がった。
「これは……!」
「……回避されたか」
先程までヴィクターがいた場所には《黒騎士の緑槍》がまるで花のように咲き乱れていた。あの場から回避したのがあと少し遅れていたら串刺しになっていたのは間違いない。
ヴィクターは冷や汗を流しながらもジンを見据えた。するとジンは何かを取り出した。
「それは……!」
「《完全なる色彩の光剣》」
神々しい光と共にジンの手に握られたのは、ジンが手に入れた新たな力《完全なる色彩の光剣》であった。
その光景にヴィクターだけでなく観客や特別席にいるカルメン達も驚愕し、その光に見惚れていた。
「――食らえ」
「ふ、フハハハハハ!!」
――第二ラウンドが始まりを告げた




