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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第七章 終焉の先に待ち受けるモノ→いよいよ……最終決戦!
85/100

*85 集結する力

「ん~なるほど~遂にジンも全ての力を継承し終えたんだ~」


 ヘファイトスにこれまでの経緯を話したアイリ。それに対してヘファイトスは相変わらず間延びした口調で返した。

 そしてヘファイトスがふと立ち上がると、空間の奥へと向かって行った。向かった先には積みあがった岩がまるで何かを封印しているかのように存在していた。


「ちょっと、待っててね~……ふん!」

「え!?」「これは……!?」


 ヘファイトスが巨体を活かしてその岩をどかすと、そこにはぽっかりと開いた人が通れるくらいの大きさの穴があった。そしてその穴が露になった瞬間、ジンを度々襲っていたあの感覚が、これまでよりも強大に襲いかかった。


「ぐっ……なんだ……今までとは違う!?」

「ジン様!」「ジン!」

「……さて、この先はジンだけで行くんだな。この先にジンが求める力がある。それを手に入れて、【黒色の武装】――否、【色付き】は完成を迎える」


 これまでのとは訳が違うその感覚に苦しみ、うなり声をあげるジン。

 そして普段とは違う荘厳な雰囲気を纏いながら話し始めたヘファイトスに一行が動揺しつつもジンは、導かれるがままに暗い穴の中に消えていった。





「なんだ……ここ……真っ暗だけど……完全な暗闇じゃない……? どうなってんだ?」


 一人暗闇の中に入り込んだジンは困惑していた。一寸先は闇と言わんばかりに真っ暗な空間の筈だが、どういう訳か明確に自分の手足を視認することが出来たのだ。


 そして暫く進んでいるとそれは突然訪れた。


「――ッ! なんだ!?」


 突如ジンの身体が虹色に光り始めたかと思うと、ジンの身体から赤、青、緑、黄、白色の光球が抜け出し、ジンの前方にそれぞれ立ち並んだかと思うと、やがて実体が構成された。


 そしてその複数の実体は、それぞれの色に対応した武器を持ち――ジンに襲い掛かってきた。



「試練という訳か……! ならば押し通らせてもらう!!」


 ジンが何時ものように武器を射出しようとしたが、出てくるのは黒い武器だけだった。何時もジンが使っていた白い力も緑の力も、青の力も出てこなかった。それどころか出せるのは唯一色の力を保持していない大剣のみであった。


「――ッ!? 何故【色付き】の武器が出ない!? それに武器が大剣だけ!?」


 混乱するジンに先手を打ったのは赤色の霊体だった。その手には真っ赤な大槌が握られておりジンに向かって飛び掛かり、振り下ろした。


「――やばッ!!」


 間一髪。ジンは大剣を取り出し、真上からの衝撃を大剣を斜めにすることで受け流した。足を踏み込み質量の塊を赤色の霊体に横薙ぎの一閃を振り払った。


ガキン


 しかしその攻撃は赤い霊体に当たる寸前で何かに防がれた。


「青の力……!」


 大剣は青色の霊体の持つ盾に弾かれた。そしてジンが盾に気を取られている隙を突き、緑色の霊体がジンの左から槍を突き刺しにきた。前方からは白色の剣がジンに迫っていた。それに対してジンは大剣から左手を離し、体を左に捻らせそのままの勢いで左手に大剣を持ち緑色の霊体諸共薙ぎ払った。

 しかし大剣が当たる寸前緑色の霊体はその場から後ろに跳躍し、回避した。


「オリャアアア!」


 今度は右手に握り放しだった大剣を、緑色の霊体に向かって投擲した。投擲された大剣が緑色の霊体に当たる寸前黄色い閃光が緑色の霊体と大剣の間に割り込み、大剣を撃ち落とした。その手には大鎌が握られていた。黄色の力である。

 そして周りを見渡すと気づけばジンは霊体に囲まれていたことに気づいた。しかしジンの冑の下の表情は絶望では無く、にやりと獰猛的な笑みを浮かべた。


「今の俺を……舐めるなよ。これぐらいどうにか出来なきゃ……魔王は倒せねぇんだからな!」


 そしてジンはまず左手の大剣を左後方にいる緑色の霊体にぶん投げた。緑色の霊体は咄嗟の攻撃に身を屈め回避するも《縮地》で迫ったジンが緑色の霊体の顔面を蹴り上げた。宙に投げ出された霊体の顔を左手で掴んだジンは右手に持った大剣を胴体に突き刺した。


 するとシュンという音と共に霊体は消滅し、大剣に一瞬緑の光が灯った。


「次は……お前だ!」

「――ッ!」


 背を見せていたジンに襲い掛かった赤色の霊体だが、霊体が大槌を振り下ろす前よりも早くジンが大剣を両手で持ちフルスイングで振り抜いた。胴体が両断された赤色の霊体もやがて緑色の霊体と同様に消滅すると大剣に赤の光が灯った。


 直後ジンに向かって白い剣が無数に降り注いだ。ジンは幾つか被弾するものの進化した甲冑の前には殆ど傷がつかず多少よろける程度だった。それからゆらりと幽鬼のように振り向くと、地面を踏み抜き白色の霊体の下へその圧倒的且つ爆発的な推進力で飛び掛かった。


 しかしその進路を妨害するかのように黄色の霊体が立ちふさがった。


「おっとここでお前か」


 弾丸のように迫るジンに対して大鎌を構え、迎撃姿勢を取る黄色の霊体。


 両者が最接近する――その瞬間、黄色の霊体は鎌諸共、胴体を斬られていた。


「久しぶりに使ったな……《静寂の剣(サイレンスブレード)》」 


 予備動作も一切なく放たれた不可避の斬撃が黄色の霊体を切り裂いたのだ。そして黄の光が大剣に灯った。残るは二体のみである。

 この時のジンは気づいていなかったが、三つの光を灯した大剣は胎動し始めていたのだ。そうとは露知らずジンは残る白と青を仕留めるために再び地面を踏み抜いた。


「――フッ!」


 次々と降り注ぐ白色の剣を華麗な身のこなしと大剣で弾きながら徐々に迫っていた。そしてある程度近づいた時ジンは飛び上がった。ジンの大剣に黒い閃光が走り始めた。

 そして空中で体勢を整え、白色の霊体を守るように立ちふさがる青色の霊体に向かって大剣を振り下ろした。青色の霊体は盾で防御するが


「《黒い剣》」

「――ッ!!」


 盾に襲い掛かった衝撃と《黒い剣》による黒い斬撃が白色の霊体諸共切り刻んだ。ダウンしかけた霊体たちにジンが大剣を突き刺すとそれぞれの光が大剣に灯された。


――その時だった。


「……め、目が……眩しい……!」


 すべての霊体を倒し終えた直後暗闇を裂くような眩い光が辺りを照らし、ジンの眼を貫いた。ジンはたまらず片手で光を遮り、目を細めた。



 光が晴れると今度は、真っ白な空間に飛ばされた。


 先程までの暗闇ばかりの空間ではなく、辺り一面が真っ白という不思議な空間に飛ばされたことをジンは認識した。


「ここは……? あれ? 大剣は?」


 ジンは自分が握っていた大剣が手元にないことに気づき辺りを見渡した。そしてふと視線を上に向けると神々しい光を放ち、刃が金色の光に変化した大剣が宙に浮かんでいた。

 その幻想的な光景にジンは思わず見惚れていた。


「綺麗だ……」



「そうだな、ジン」

「――誰だッ!?」


 ジンの背後から壮年の男のような声が響いた。そこにいたのはジンと同じような黒い甲冑を身に纏った男のようだった。


 やがてジンの近くに歩いてきた男がおもむろに冑を両手で外した。


「あ……あんたは一体……」


――冑の下からはジンと同じ黒髪が、そして何処か自分に似ている顔立ちが露になった。その正体は


「顔を合わせるのも初めてか。ジン……俺の息子」

「と……父さん……?」


 かつての【黒色の武装】ことコウキだった。

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