表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第六章 最後の【色】と顕現する悪意→凄まじく面倒になるのは確か
73/100

*73 『兄』と『兄』

ガキン!


「……力は、そっちが上」

「技もこちらが上だ」


 雷電はドラークと鍔迫り合いになっていた。互いの武器から火花が飛び散り、互いを押し返した。彼らの間に再び緊張が走る。


――次の先手を打ったのはドラークだった。


「……フッ!」


 ドラークが槍を構え、姿勢を低くして自らの身体をまるで槍に見立て雷電に突撃した。雷電は体を少しねじり、その勢いのまま大鎌を振りかぶった。


――このままいけばドラークは両断される


 しかし、ドラークは刃が自分を切り裂くその刹那、更に姿勢を落とし込み、雷電の大鎌の刃を避けた。姿勢を落としたことでさらに速くなり、あっという間に雷電の懐に潜り込んだ。


「――ッ!!」


 雷電は既に鎌を振り終えた直後の為、槍を弾くことが出来ない。しかし咄嗟に《黄の閃光》による高速移動を行った。だがそれを想定していたドラークは驚く手段に出た。


 雷電がドラークの頭上に移動した瞬間だった。ドラークはにやりとして、軸足を思い切り捻りそのまま大鎌の攻撃を回避した。更に槍の刃先を雷電の胴体目掛けて薙ぎ払った。これも《黄の閃光》で回避した雷電だが、袴には彼の血が付着していた。胴体に横薙ぎの一閃が掠ったのだった。


「これは……!」

「【黄色の雷鳴】の戦い方は良く知っている。故に負けん」


 不敵な笑みを浮かべるドラークに雷電は背筋がゾッとする感覚を覚えた。続けざまに槍を構え、地面を蹴った。自分に匹敵するレベルの速度と技量に冷や汗が止まらない雷電だった。そして今度はジグザグに動き、雷電を翻弄した。


 そして雷電の背後に回った瞬間、ドラークは槍を投げた。槍は雷電の方に向かって空気を裂いていった。雷電は大鎌で軽く切り払った。だが、小回りが利かない大鎌では如何に歴戦の雷電であっても隙が生じる。それを見計らってドラークは雷電の距離を詰め、その大鎌に向かって槍を突き立てた。


 がらんと音を立てて大鎌が雷電の手の中を外れた。


「仕舞いだ……!」

「――ッ!!」


 槍が雷電の胸に突き刺さるその瞬間、雷電は左手でドラークの槍を掴んだ。刃先を強く握った手からは血が流れ、苦痛に耐えるような表情を浮かべた。そして槍を掴んだまま雷電は後ろに倒れ、ドラークを巴投げの要領で背後に投げ飛ばした。


 瓦礫に衝突した音がする中、雷電は血が出ている左手に応急処置をする為自分の袴の腕の部分を引きちぎった。そしてテーピングのように巻き付け、大鎌を拾い上げた。ドラークが激突した瓦礫が、豪快な音を立てて弾き飛ばされた。


 徐々に蓄積していくダメージに雷電が追い詰められていた。ドラークは今の衝撃でも何ともないのか甲冑の埃を払いのけるような動作をしながら雷電に向けて槍を向けた。そして雷電はもう一本の刀を左手に持ち構え方を変えた。


「次で決める」

「なぜ、これほどの力を持ちながら……雷霆国を裏切った」

「その答えは、あの世にいる歴代【黄色の雷鳴】に聞いてくるんだな!」


 会話は不要と言わんばかりに大きく跳躍し、槍を雷電目掛けて突き立ててきた。雷電は左手の刀を頭上にいるドラーク目掛けて突き上げた。金属が衝突する音と共にドラークは槍を足場にして近くに飛び降りた。雷電は血がにじんできた左手と胸の痛みをこらえながらドラークに追撃をしに時折フェイントを入れながら高速移動をして近づいた。


 ドラークの周囲には雷電の移動した時に発生した黄色の残光が取り囲んでいた。ドラークは失笑したかと思うと臆せず槍を持ちながらただ佇んでいた。常人は疎か達人でさえ目で追えない程の速さにもかかわらず、ドラークは目を閉じていた。残光が辺りを囲み、雷電が上空から斬り掛ろうとしたその瞬間


「そこだ」

「ガハッ!!」


 大鎌の一撃をわずかに足をずらすだけで回避したドラーク。そしてその槍は雷電の胴体を貫通していた。雷電の口から大量の血が吐血した。大鎌は地面に亀裂を発生させる程に埋め込まれており、ドラークはその大鎌に足を乗せて完全に固定していた。


「勝った……遂に勝った……見たか!我が愚弟よ!貴様の残そうとした物は私が、いや俺が!!全て壊してやったぞ!!」


 既にこの世にいない弟に向けて高らかに嗤いかけたドラーク。そして雷電から槍を引き抜いた。槍は血にまみれ、支えを失った雷電の身体は地面に叩きつけられた。


「クハハハハハハハハ!!」



 周囲にドラークの狂気の高笑いが響き渡る。ふとドラークは足元の雷電を見た。その時、ドラークはあることに気づいた。


「……貴様……もう一振りはどうしグハッ!!」


 ドラークの背中を雷電のもう一振りの刀が上空から貫いた。完全に勝利に酔いしれていたドラークはこれを避けれなかった。冑の下で雷電と同じくらいの血を吐き、よろめいた。そして膝をつき、息を荒くし、仰天した。


「い……何時の間に……?!」

「――先の移動のときだ」

「ッ!?」


 項垂れていた顔を上げるとそこには、血まみれで倒れていた筈の雷電が立っていた。表情は後光に照らされて真っ黒に染まっていた。そしてその袴の下には何かで焼かれたような痕が着いていた。


「き……貴様……ッ!?自分の傷口を焼いて塞いだのか!!……だが、この刀はどうやって……!?」

「――私も短い間だったが、ジン達から色々と学ばせてもらった。ただ武器を振るのではなく、武器を弾丸として、発射することを」

「ま……まさか!」

「……あの移動の瞬間、貴様が慢心して目を閉じていてくれたことには感謝でしかない。そうでなければ、私が上空に向かって刀を打ち上げられなかったからな……貴様の慢心が、敗北を導いたのだ」


――雷電が《黄の閃光》でドラークを取り囲んでいた頃。雷電は刀を一度空中に向かって投げた。そしてこれから発生する轟音を誤魔化すために敢えて、過剰なまでに移動を繰り返した。その尋常ではない速度と瓦礫を吹き飛ばす音も相まって雷電が、刀をオーバーヘッドの要領でさらに上に向けて吹き飛ばした際に発生した音を消すことに成功した。


 しかしドラークほどの人物がこの光景を見て、避けれない筈が無い。だが視界を断ち切っていたドラークはこれを見ることが出来ず、見事串刺しになったのだ。


 雷電の言う通り、これはドラークが慢心しなければ良かっただけの話である。そして己の不甲斐なさに憤慨しているドラークを尻目に雷電は、例えドラークが【黄色の雷鳴】の継承者だったとしても、弱いままだろうという確信に近い物を感じていた。


「こ……この、俺が……!、【黄色の雷鳴】だった愚弟を殺せた……俺が!!何故、何故負ける!?」

「……貴様は自分の肉親を斬った時点で、既に負けていたのだ。この力は人が継承する力、貴様のように魂が堕ちて魔に変成した存在が、扱えるはずがないだろう」


 そしてクラっと態勢を崩した雷電は、落ちかけていた己の意識を目覚めさせた。まだやるべきことは残っているからだ。その脚は立てかけられた大鎌の方に向かっていた。そして、ゆっくりと引き抜き、ドラークの下へ一歩、また一歩と近づいていった。


 そして、ドラークの横に立った雷電は、ゆっくりと大鎌を振りかぶる態勢に移行した。それはまるで死神が罪人の魂を刈り取るようで、最期を宣告するのだった。


「……せめてもの情けだ。苦しまずにあの世に送り届けてやる」

「か……カハッ!クソ……この刀さえ抜ければ……!!俺はまだ死なん!俺を否定したこの国を……!俺を見下した奴らも!何もかも滅ぼすまではぁ!!」


 スカッ


 生きぎたないドラークだったが、目にもとまらぬ速さで振り下ろされた刃で、その命を刈り取られたのだった。


「……あの世で弟に詫びを入れるがいい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ