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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第六章 最後の【色】と顕現する悪意→凄まじく面倒になるのは確か
71/100

*71 竜に至り、人を捨てた裏切り者

 ――雷霆国上空にて


「くくく……あと少しだ……あと少しでこの防壁は崩れ去り、地獄が顕現する!」


 ドラークは徐々にひび割れていく『竜の鱗』を見ながら口の端をにィとあげ、これから竜達の手によって作り出されるであろう光景を想像しながら高らかに宣言していた。その表情は冑に遮られているが、中身は満面の笑みであることは想像に難くなかった。


 彼が乗っているファブニールは只黙ったままで自分の手綱を握る主人の指示を待っていた。最もその主人は、今も高笑いしておりすぐに指示が飛んでくるとは思えなかった。


――しかし


「ははは……遂に来たか……!【黄色の雷鳴】ィ!!」


 ドラークの視線の先には雷神城から飛び出してきた雷電の姿があった。そして雷電より遅れてきたジン達がいたが、彼はそれを見向きもしなかった。ドラークの目には憎悪とも執着ともいえる色が現れていた。手綱を握る手はすっかり震え、気迫迫る表情をしていた。



 一方そのころ地上では、大鎌を組み立てた雷電が目にもとまらぬ速さで城を抜け出し、『竜の鱗』の真下にあたる場所に向かっていた。そしてジン達は、雷電に遅れる形ではあるが、騒然とした町中を駆け抜け雷電の下に向かって行た。


 空には未だに竜達が放つブレスによってまるで花火のように爆裂していた。そして肝心の『竜の鱗』には亀裂が入っており、防壁が壊されるのは時間の問題……否、目前まで迫っていた。それを理解した民衆は各地で悲鳴を上げ、更に事態の混乱を招いた。


「うわぁあああああ!『竜の鱗』が!!」

「とにかく避難所に駆けこめ!逃げろ!!」

「助けてくれぇえええええ!!」


 パキリ


 周囲の混乱が極まった時……遂に『竜の鱗』がまるで割れ物が割れたような音と共に崩壊し始め、竜達が流れ込み始めた。その光景を目の当たりにした民衆は一瞬静寂に包まれ、そして竜達の咆哮があたりに響き渡った。


「「「ギャォオオオオオオオオオ!!」」」


 しかしその時だった。空にいる竜達に向けて一筋の黄色い光が竜達のさらに上からまるで雷のように戦場に飛来してきた。その人物の隣には竜の物と思わしき首が複数転がっていた。


「お……おぉ!あれは……!」

「龍誠様だ!!」


 その人物の正体こそ雷電であった。雷電は『竜の鱗』が崩壊したと同時に竜が知覚するよりも早く跳び、首を刈り取ったのだった。雷電の姿を見た民衆は希望を取り戻したかのような顔色になった。しかしそんな雷電に向かって再び無数の竜が喰らわんとして顎を開けて突撃してきた。雷電はそんな竜に背を向けており、民衆は一転して青ざめ雷電に声を掛ける者もいた。


 だが、この場にいるのは雷電だけではなかった。


 ズドドドドド!!


「「「ギャアアアアアアアア!!」」」

「な……何だあの黒い武器は!?」

「竜の身体に突き刺さっている!?あれは龍誠様の攻撃ではないのか!?」

「……感謝するジン殿」


 雷電が視線を向けた先には、空中に幾つもの武器が顔を出し、大剣を空に掲げて、いつでも発射合図ができる態勢にあるジンの姿だった。そしてジンが再び手を下ろすと再び、《黒騎士の武具》を含めた数々の武具が次々と発射された。空中にいた竜達はそれらの回避を試みるが、それぞれが当たる寸前で向きを変えたりジグザグに動く為回避は困難を極め、悉くが討ち取られていく。


(無双ゲーって、こんな気分なんだな……よっと!)


 そんなことを考えながらまるで指揮者の指揮棒ように大剣を振り下ろすと、それに合わせて更に射出の範囲が広がり、雷霆国全体にまでその射程範囲を広げたのだった。


 一方アイリやグレイもジンの攻撃に便乗するように次々と空中に向かってアイリが斬撃を飛ばしたり、グレイがレーザーのような魔法を飛ばして蹂躙していった。雷霆国の空はたった三人によって混沌に包まれたのだった。


「なるほど……!負けていられないな!」


 そう言って雷電は深く腰を落として全身に雷を漲らせ……跳躍した。


 その瞬間稲妻が落ちたかのような音と共に空中に向かって雷龍が吼えた。少なくとも周りの人物にはそう感じられた。


「いざ……竜共……参らん!刮目せよ!我が最高速を!!《黄の閃光》」


 雷電は自分を捉えてブレスを撃とうとした竜の傍に一瞬で接近して竜の四肢及びその首を切り刻んだ。そして、まだ空中にある竜の死体を踏み、近くの竜に向かって切り刻むことがほんの一瞬の間に10回以上行われ、空中に竜が存在するだけ繰り返された。あれだけいた竜の数は激減し、ついには残る数体のみとなった。


「ギャアアアアアア!」

「いざ……これで幕引き……!《黄の斬撃》」


 最後にいた竜が切り刻まれた。


「そうだ、これで幕引きだ」

「なッ!?」


 雷電がその声の主の方を見た瞬間、雷電は漆黒の影に激突された。雷電は即座に退避するべく【黄色の雷鳴】の力を行使しようとしたが、その声の主……ドラークの姿、その甲冑に刻まれた意匠を見て判断が遅れてしまった。


「その意匠は……!」

「墜ちろ」


 そして漆黒の影の正体、ファブニールが雷電を口にくわえたまま地面に激突した。その時の衝撃で周囲に土粉塵が飛び散った。


「雷電様!」

(やべぇ!!)


「グッ……貴様……どこでそれを!?その竜と雷の意匠がある甲冑など付けられる人物は限られている筈だ!」

「おわっ!?雷電!?いつの間に」

(ファッ!?)


 雷電は地面に叩きつけられたその瞬間にジン達の下に移動していた。しかし、その表情は何か信じられない物を見たかのようだった。そして雷電はドラークの甲冑に指を指してドラークに問いかけた。


「どういうことですか……?!」

「……あの甲冑に刻まれた意匠は、嘗てこの国に存在していた頭首直属の部隊『雷鳴』にしかつけることを許されなかった意匠だ。そして、雷に加えて竜が刻まれた意匠をつけることを許された者なぞさらに限られる……!貴様!それをどこで……!?」


「これは、()()()。私が()()()()()()()()からだ」

「まさか……!貴様は……」


 そう言ってドラークは冑を取った。そしてその素顔に一同は驚愕に包まれた。


「う……嘘!?雷電様に……そっくり……?!」

(どういうことだ……?)

「なるほど……やはり貴様か……雷霆国第四代頭首の側近にして、その兄であった裏切り者……『龍雷』!!」

「ご名答、そして……お前には死んでもらう」


 冑の下からは、雷電を少し老けさせたような顔立ちが現れた。しかしその片眼は竜の眼が埋め込まれており、それがますます不気味さを醸し出していた。そして驚愕している一行に龍雷……ドラークは、傍のファブニールに指示をしてブレスを発射させた。業火が広がりたちまちジン達を包み込んだ。

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