*69 英雄の帰還と再会
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「止まれ!なぜこの道を知っておる!この道は限られた者しか知らぬ通り道ぞ!お主らは何物だ!!」
雷電に案内されながら馬車を走らせること数分。遂にその場所にたどり着いた一行を待ち受けていたのは、鉄の笠と足軽のような鎧を身に着けた番兵だった。そして番兵の呼びかけに反応して即座に雷電が馬車から顔を出した。
「番兵殿!私だ!!」
「こ、これは龍誠様!?遂にお戻りになられたのですね!!」
雷電の顔を見るや否や番兵は恐れおののき、無礼を働いたことを謝罪した。そして雷電は間髪入れずに番兵に今の状況の説明を求めた。
「状況は!?」
「……あまり芳しくない状況です。ですが先の『竜の息』で魔物の軍勢は勢いを衰えています。しかし、それも時間の問題かと……そして龍誠様!『雷神城』にて頭首様がお待ちです!!」
「分かった!感謝する!!」
「お気をつけて!!」
ジン達は、改めて雷霆国における雷電の立場がどれほどのものかを実感した。雷神城に向かって馬車を走らせている際も雷電を見た民衆からは歓喜の声で雷電の帰還を称えていた。
「おぉ!あれは龍誠様だ!」
「遂にお戻りになったぞ!!」
「馬車の中にいる人たちは一体……?」
「【黄色の雷鳴】万歳!!」
彼らは皆雷電の帰還を待ち望んでおり、先ほどまで陰りを見せていた表情が一転して希望に満ち溢れた表情に早変わりした。それだけ雷電の存在は大きいのだ。そして雷電は馬車に乗りながら民衆に聞こえるように大声を上げた
「皆の者!直に私も戦線に加わる!それまで持ちこたえよ!希望を捨てるな!……生きることを諦めるな!!」
「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」
「す……すごい迫力……」
「カリスマを感じますね……!」
(凄いんだな……雷電は……)
雷電の高らかな掛け声に民衆は活気を取り戻し、各々が為すべきことを為すために動き始めた。そしてジン達は雷電が見せたカリスマに心を打たれていた。
そして暫くして一行は日本の城のような造りの雷神城に着くと、即座に城内に案内され、馬車を止めた後すぐ馬車の傍に雷電の部下を思わしき人物が駆け寄ってきた。
「龍誠様!良くぞお戻りで!!」
「龍我は!?」
「『鳴る神の間』にて龍誠様と【黒色の武装】殿をお待ちです!」
「良し……!行くぞ!ジン、アイリ、グレイ!」
そうしてジン達は雷神城の正門から中に入り、駆け足で最上階に位置する『鳴る神の間』へと目指した。しかし、その道中でジン達の前にいかにも時代劇に出てきそうな悪代官のような丸々と肥えた男が現れた。その男は雷電に対して侮蔑の籠った視線を向け、嫌味を口にし出した。
「これはこれは、龍誠様。漸くお戻りですか。雷霆国が大変な状況下にあるのにも関わらず遠出とは言い御身分ですなぁ」
「……そこをどいて貰おうか猩々殿。私と彼らはこれから頭首様に会わなければならない急ぎの用なのでな」
「ほう?すると、その黒いのが【黒色の武装】であるのでしょうか……そして……」
「ヒィッ!?」
(は?)
猩々と呼ばれた老人はジンの傍にいたアイリにギラギラとした視線を向ける。アイリは背筋がぞっとし、思わず悲鳴を漏らしてしまう。傍にいたジンは猩々の視線からアイリを守る様に立ちふさがった。しかし、ジンをまるで汚らわしい物を見つめるかのような視線で睨むと後ろにいるアイリに向けて
「そこの女子、どうだ?儂の側室の1人にならぬか?素晴らしき美貌だ……存分に可愛がってくれようぞ……グフフフ……そしてそちらの幼子も、成長すればより美しくなろう。その時は儂の側室の一人に加えてやろうぞ……」
(なんだコイツ……ぶっ殺してやろうか!?)
「……猩々殿。それ以上はお控えください。彼女達はジン殿の仲間です」
「ふむ?果たして女子が戦えるのでしょうか?それに、その【黒色の武装】の力量が計り知れるという物……余程の臆病者でありましょう。女子を盾にでもしているのですかな?」
ニヤニヤしながらあることないことをペラペラと口にする猩々に雷電とジンの怒りが限界を迎えた時、アイリが力強い眼で猩々を睨み、一言いった。
「臆病なのは、貴方ではないですか?」
「……なんだと?」
「……雷霆国の城下の人々でさえ、魔物の軍勢に立ち向かう勇気を示して立ち上がったのにも関わらず、1人安全な城の中で雷電様に嫌味を言い、あまつさえ私たちの主であるジン様を馬鹿にしていて……それで私やグレイちゃんをその薄汚い欲望の思うがままにしようとする……貴方こそ臆病者ではありませんか?」
「……小娘が……!儂を誰だと思っておる!儂は雷霆国の重役であるぞ!小娘の1人や2人の人生を終わらせること等容易いことで「黙れ腐れ外道が」……!!」
自分に歯向かってきたアイリに対して自分の立場を利用して脅しを掛けてくる猩々に対してジンは遂にその口を開いた。兜で遮られているが、彼の表情は憤怒に染まっており、この場に雷電やアイリ達が居なかったら即座に《黒騎士の武装》で串刺しにしている所まで憤っていた。
「だ、誰が腐れg「それ以上口を開くな空気が穢れる」……貴様ァ!!」
「そこまでだ猩々殿。貴様がジン達の弱みを握るというのなら貴様をその立場から引きはがしてもらうように進言しても良いのだぞ」
「クッ……!貴様ら……覚えておれよ……!!」
ジンと雷電が殺気を込めながら猩々を睨みつけるとすぐさま退散するかのように猩々が城内の部屋に消えていった。辺りには重苦しい空気が漂っていた。
「済まぬ……皆……あ奴は後で解雇する。客人に向かってとんでもない無い無礼を働いたのだ。解雇だけでは当然済まさぬ」
「……」
「ふ、2人ともありがとうございます……」
「私、あのおっさん嫌い……!」
「まことに済まぬ……不快な思いにさせてしまった……」
「い、いえ!雷電様には何も悪くはありませんよ!」
「そうだよ!雷電は悪くないじゃん!」
(あー……全く面倒な奴が現れたもんだ……多分どっかで襲ってくるなこれ……)
それからジン達は再び急ぎ足で城内を登っていき、天から降り注ぐ雷と共に舞い降りる竜が描かれた襖がある一際大きな一室……『鳴神の間』に到着したのだった。
雷電が襖を開けると、そこには、雷電と非常に酷似した容姿でどこか虚弱そうな優男が上座に座っていた。
「兄上!」
「龍我!」




