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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第六章 最後の【色】と顕現する悪意→凄まじく面倒になるのは確か
68/100

*68 雷鳴のごとき竜の住まう国

 ジンが新たに《黒騎士の赤槌(ナイトオブレッド)》を手にして数分後、ジン達は【グローリー火山】の地点に転送された。辺りは闘技場に連れてこられた時と殆ど変わっておらず、まだ昼前であった。


 そして、ジンは馬車の中で《黒騎士の赤槌(ナイトオブレッド)》を取り出してじっくりと観察していた。全てが漆黒で構成されていた大槌の全体には、まるで地面の中を流れるマグマのような赤い線が張り巡らされており、槌の叩きつける部分には赤く発光する宝玉が埋め込まれるようにして融合しており、持ち手を握るとわずかに暖かく胎動しているのが分かる。


 アイリは馬車を再び走らせた後、早めの昼休憩として馬車に備え付けられた簡易的なキッチンで料理をしていた。この際ジンは《収納》から幾つか食料を取り出しており、頭の中でレオと戦う際のシュミレーションを行っていた雷電がジンが《収納》から野菜やら穀物やらを取り出すのを見ながら


『食材の質を落とさずに半永久的に保存できるのか……便利だな』


 と呟き再び目を瞑った。またグレイは重傷を負ったジンを必死で回復魔法をかけた為、馬車の座席の部分で毛布にくるまれて眠りについている。その献身のお蔭でジンは後遺症も無く見事に回復したのである。


「出来ましたよ~!」

「む、昼食か」

「すぅ……うぅん……ごはん……?」

(いい匂いだぁ……)


 アイリが運んできた鍋の中には、新鮮な野菜と肉がぐつぐつと煮込まれたスープとパンだった。匂いに釣られてグレイが目を覚まし、雷電が目を開け、ジンが《黒騎士の赤槌(ナイトオブレッド)》を仕舞うとテーブルの方に体の向きを変えた。既にテーブルにはスプーンや皿などの食器が並べられており、じきに皿にスープが盛り付けられた。


「「「「いただきます!」」」」


◆◆◆


――雷霆国


「兄上……」


 雷霆国の頭首であり、ジン達の下にいる雷電と似た容姿の弟である龍我・R・雷電は、雷霆国にそびえたつ巨大な和風な城『雷神城』の一室で、兄の帰還を待っていた。当の本人は、龍我がセーラス国に救援を申し込んでからつい先日【黒色の武装】であるジンの強さを確かめる為に彼の元に向かっている最中であった。


「頭首様!関門前周辺に再び魔王軍の侵攻が!!」

「『対魔物用殲滅兵器 竜の息』の使用を許可する!何としても持ちこたえるのだ!」

「了解!」


「兄上……!【黒色の武装】殿……!どうかお急ぎを……!いつまで持ちこたえれるか分かりませぬ……!」


 苦しい表情を浮かべながら必死に国を守るために策を講じる龍我であった。彼を含めた多くの人々は雷霆国最強を冠する雷電を今か今かと待ちわびていた。……雷霆国の民が犠牲になったという情報はあまりないが、それでも増えてきてしまっているのが現状であり、兄と違って身体が強くない弟は、己が戦場に立てないことに苛立ちと焦りを醸しながら必死に足掻いていた。


◆◆◆


「ここが雷霆国……!?」

「不味い!ここまで侵攻が激しいとは!!」


 一行は雷霆国に向かおうとしていた魔物を蹴散らしながら、雷霆国まで目前という所まで迫っていた。しかし、たどり着いた雷霆国の関門前は魔物の死体や壊れた兵器が散乱していた。それに加えて城壁には何やら傍目から見ても山と同じくらいの大きさはある巨大な大砲が今にも発射されようとしていた。


「あのでかいモノは何!?」

「まさか……『竜の息』を!?」

「『竜の息』とは!?」

「……雷霆国が誇る強力な兵器の1つ……途轍もない爆発と質量によって広範囲を焼き払うことが可能であり、その爆発の威力とそれによって生じる熱波から『竜の息』と名付けられた大砲だ……!まさかあれを使わざるを得ない段階まで追い込まれているとは……!!」

(で、でけぇ……!でもあんなの撃っちまったら!!)


 馬車は最高速で雷電の案内で限られた人物しか知り得ない秘密の道を通っていた。木々に覆われている通路だが、木々の中からわずかに見えるそのあまりにも異質すぎる巨大な大砲はジン達に事の重大さを知らしめるのは十分だった。雷電は、その光景を見て冷や汗を流した。


 そして、一際大きな爆音が大砲から発せられたと共に大砲から紅い雷を纏った大砲の弾丸が発射されたのだった。その瞬間


「伏せろ!!」

「うわわわわわ!!」

(危ない!!)

「きゃあ!?」


 かなり遠くの場所にいたジン達にさえ届く程の轟音とまばゆいばかりの閃光が同時に襲った。『竜の息』が放たれた場所には大規模な爆炎が天に上っており、その付近にいたであろう魔物にかなりのダメージを与えたことは想像に難くなかった。


 雷電は馬車をいったん止めさせ、ジンが馬車と2人を守るために《黒騎士の蒼盾(ナイトオブブルー)》を障壁のようにして多重に展開した。《黒騎士の蒼盾(ナイトオブブルー)》から発せられた青白いベールがジン達を包み込み、彼らを轟音とそれに付随してやってくる衝撃波から守ったのだった。


「何とか凌いだか……!だが、急がねば……!!」


 そう言って雷電は馬車を走らせた。

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