*61 【黒い工房】の進化
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――翌日
「またお越しください!」
宿屋の管理人に見送られながらジン達はシニアーク王国を目指して馬車を走らせた。尚その馬車に新たな人物が加わったのだった。そう雷電だった。
「では、これよりよろしく頼む」
「おうよ!……ところで……どうやってあんたはここに来たんだ?外に馬車は無かったし……」
「走ってきたのだ」
「走ったぁ!?」
遺跡にいたころはギクシャクしていた雷電とフラムだったが、フラムがふと道中の行動を観察していた所雷電が見た目にそぐわない面白い人物であることを知ったのだ。
そんな雷電に対してフラムが抱いた印象は『ずぼら』これに尽きるのであった。
というのもフラムが見てきた雷電の一挙手一投足がその印象を付けるのには十分な程だったのだ。例えば遺跡から帰還する際に先日の雨の影響でできた水たまりが出来たままの道をを歩いている際に
『……』パシャパシャ
『……おい、あんた』
『……?』
『……足元濡れてんぞ』
『あぁ……後で乾くから問題ない』
『(……そういう問題か?)』
結局この後放っておけなかったフラムがきれいに乾かしたのだった。しかし、宿についた後の雷電の行動がフラムが彼を『ずぼら』だと認定した理由の一つでもあったのだ。
それは既にジンとアイリ、グレイが宿の風呂を出てフラムが最後に入ろうとして廊下に出た時ふと廊下に毛むくじゃらの何かがいたことが始まりだった。
『わぁああああああ!?誰だお前!?』
『私だ』
『お前かよ!?……ってまだ完全に乾ききってねぇじゃねぇか!?』
『いつもは御付の従者に任せきりだったことを忘れていた……』
『……はぁー……俺の部屋に来い。乾かしてやる……』
『かたじけない』
一旦廊下からフラムの部屋に雷電を移動させて、髪を乾かし、そして廊下の水滴を拭いたフラムが部屋に戻ると未だに服を着替えず腰にタオルを付けたままベッドの上に腰かけていた雷電の姿を見てフラムは愕然とした。
『……まさかとは思うが……あの袴の着方が分からない、じゃないよな……?』
『そのまさかだ』
『……勘弁してくれよ……』
こいつビンタしてやろうかという気持ちを押さえたフラムは、自分だけではどうにもできないと判断し、宿の人に助けを求めた所たまたま袴の着方を知っていた管理人のお婆さんがいたため乗り切ることが出来たのだった。
『そういえば、雷電様はあの袴以外の服を持っていないのですか?』
『持ち物はこの袴と私の刀、そしてステータスプレートのみ』
『……へ?』
雷電の持ち物の少なさに驚愕したジン達だが、続けざまにアイリはあることを質問した。
『で……では、宿に来る前は何を食べたのですか?』
『近くにいた魔物を狩ってその肉を雷で焼いたものを食べた』
『』(絶句)
『せ、生活能力が破綻してやがる……ッ!!』
(こ……これが、本物のダメ人間……!!)
最低限の服と持ち物だけで国を出てきたことと、食べられれば何でもいいという雷電に驚きを隠せないフラムとジンであった。アイリは衝撃の事実に固まり、そこに居合わせたお婆さんも顎が外れる勢いで口をポカンと開けていた。
以上のことからフラム及びジン達は雷電を『ずぼら』と認識したのだった。フラムは旅の先行きが不安になり胃が痛んだ。
――それから暫くの間は馬車に揺られながら各々の時間を過ごしていた。
ジンは昨日の激闘で失った《黒騎士の武具》を次々に《収納》して武器を装填したり、フラムの要望に合わせて《黒騎士の武具》とはまた別の大槌を改造していた。これまでの旅の中でジンが成長したことで進化した《黒い工房》によりジンは《黒騎士の武具》を除いた武具の改造を行えるようになったのである。
更に《黒騎士の緑槍》の性能をもう一度確かめるべく、試しにたまたま馬車に襲い掛かってきた魔物に向けて射出してみた所
ドスッ!ブシャアアアアア!!
「グァアアア!!?」
「うわぁ……これは……」
「……えげつなさすぎる」
(こんな殺傷能力高かったっけ?!)
たまたま襲い掛かってきたのは、一際大きく血に濡れたような赤い毛皮が特徴の熊である『ブラッドベアー』であった。しかし《黒騎士の緑槍》が突き刺さると体内から幾つもの《黒騎士の緑槍》が飛び出してきたのだ。
その光景にアイリは勿論グレイやフラムもドン引きして、ジン自身もその殺傷能力の高さに驚愕していた。尚これをジンに打ち込まれかけていた当の本人である雷電は馬車の中で寝ていた。
アイリは、自分の祖父に向けて手紙を書いていた。その内容は、旅が順調であること道中で出会った人達との出会い、そして暫くしたら村に立ち寄ることをしたためたものだった。
グレイは雷電と同じく馬車の奥で眠っており、その寝顔は穏やかな物だった。
そしてフラムはジンに自分様に改造した大槌を丹精を込めて磨いていた。どうやらお気に召したらしく満足げな表情を浮かべながら大槌を見るその姿はまるで思春期の子供のようだった。
ちなみにフラムの武器に対する要望は『決定打』であった。他にもグリップの細かな調整であったり、重さの調整もあったが特に要望が強かったのがやはり『決定打』であった。確かに大槌自身の破壊力はフラムの筋力と【赤色の業火】のスキルでかなりの物になっているが、それはあくまでフラム自身のものであるため武器自身にも何か決定打となる要素が必要になると考えたのだ。
ジンはその要望に応えるべく、自分が旅の途中で収取していた素材を《収納》から取り出して吟味し、試行錯誤を繰り返していた。
そうして完成したのが『アイファーフランメ』である。『熱狂する火』の意味を持つこの大槌の特徴は打撃と同時に爆発を起こせる仕掛けが施されている点である。
仕掛けを簡単に説明するとまずフラムが『アイファーフランメ』に魔力を注ぎ込むと大槌自体が赤く発光し、叩きつける部分に取り付けられた特殊な鉱石『マグマタイト』がその真価を発揮し、打撃と同時に小規模の爆発を生み出すのだ。
この『マグマタイト』は魔力を注ぎ込むと赤く発光し熱を生み出す効果があるのだが、この熱は『マグマタイト』と親和性が高い程向上し、強化されるのだ。……詰まる所【赤色の業火】であるフラムが『マグマタイト』に魔力を注ぎ込むとたちまちより赤く発光して尋常ではない熱を生み出したのだった。これに目を付けたジンはその『マグマタイト』を大槌に組み込み、『アイファーフランメ』を制作したのだった。
そして馬車を一旦降りて近くの岩に目掛けてフラムが魔力を込めた『アイファーフランメ』を振りかぶると、小規模の爆発と共に大きな岩は木っ端みじんになったのだった。
「こいつは気に入ったぁあああああああ!!ありがとうよ!ジン!!」
(……いい仕事したぜ)
それからジンはたまりにたまった素材を使って《黒騎士の武具》を強化しようとしたが出来ず、代わりにアイリ達の武器を改造することにしたのだった。




