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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第六章 最後の【色】と顕現する悪意→凄まじく面倒になるのは確か
60/100

*60 雷の試練と国の現状

 ライフとの戦闘の疲れが抜けきってない内に行われた第二回戦にジンは疲労困憊気味だった。それに拍車をかけるかの如く電光石火の速さで斬り掛ってくる雷電の猛攻が着実にジンの体力を奪い、先ほどまでライフとの戦闘で見せていたその精密ささえも奪っていった。


「……ふッ!」

「……ぬぅ……!」


 思わずジンの口から苦悶に満ちた声が出てくるほどにジンは消耗していた。しかし、今守りを途切れさせてしまうと確実にその刀の刃が己を切り裂くことになると実感していたジンは半ば意地の領域で再び《超感覚》と《縮地》を行使して的確に斬撃を回避する。


 しかし《超感覚》を行使し続けた代償として脳の回路が焼き切れるような痛みをジンは味わっていた。《適応》があるとは言え、それに慣れるまでには少なからず時間を有するため《適応》による《超感覚》の酷使によるダメージ慣れは少なくともこの戦闘では期待できないとジンは踏んでいた。


「だいぶ消耗しているな」

「はぁ……はぁ……」

(き……きちぃ……!)

「「「ジン様/ジン!!」」」


 ジンは致命傷になるような攻撃を全て回避していたが、その鎧に着いた幾つもの傷が完全には防ぎきれていないことを物語っていた。


 しかしジンもただやられっぱなしではなかった。《黒騎士の白剣(ナイトオブホワイト)》による射撃攻撃を放つもいずれも雷電が切り落とし、《黒い剣》を伴ったジンの攻撃もその持ち前の速度で射程範囲外に逃れた後にジンにお返しと言わんばかりに瞬間的に詰め寄り、斬撃を放つのだ。


「……次の一撃でその首を刈り取る」

(……はぁ?)


 ジンは驚愕と言うよりただ単に雷電に苛ついていた。勝手に来て、突然試練だの何だのと言って襲い掛かってくる雷電に対して腹立たしく思えてきたのだった。


 何もかもが上から目線な雷電に対してジンは次第に苛立ちを感じ、本人でも無自覚な程に殺意があふれ出していた。その光景を目の当たりにしたアイリ達はジンの変貌に驚愕していた。


(……寝ぼけている場合じゃねぇだろ俺)


 そしてジンは先程手に入れた新たな力《黒騎士の緑槍ナイトオブグリーン》を両手でしっかりと握りしめた。

 ジンはおのずと《黒騎士の緑槍ナイトオブグリーン》の使い方がわかるようになり、姿勢を深く落とし槍を構えた。その槍からはまるで突き刺すようでどこか広大なオーラが溢れ出しており、それに伴ってジンの目つきもより鋭くなっていった。


「……来るか」

(……このまま……構えて……地面に!!)


 ジンが槍を地面に突き刺すと


ゴゴゴゴゴゴゴ!


「……これは!」

『ほう……』


 突然雷電の周囲から針山のように無数の《黒騎士の緑槍ナイトオブグリーン》が飛び出し、雷電を貫かんとしていた。


 咄嗟に雷電はその場から跳びあがり、壁に刀を突き立てて足場にしていた。しかし更にジンが槍を突き立てると徐々に雷電の方に向かって生き物のように《黒騎士の緑槍ナイトオブグリーン》が地面から飛び出してきたのだった。次第に壁からも槍が生え始め、雷電は壁を蹴りその勢いのままジンの方へ飛んできたのだった。


「……これで」

(それはこっちの台詞だ!!)


 雷電が雷を纏った刀を、ジンが自分の背後から生えた螺旋状に絡まった複数の樹々と槍を雷電に突き刺そうとした。もう少しでどちらかに自分の刃が届こうとしたその時


『止めよ』

「「!!」」

「ジン様!大丈夫ですか!!」

「ジン大丈夫!」


――ライフがジンと雷電の両名を大木で拘束した。あと一瞬遅ければジンか雷電のどちらかの命が散っていた可能性があったのだ。


 そしてアイリとグレイがジンを心配してジンの傍に寄り添い《回復魔法》を掛けてジンを治療したのだった。そしてジンの体調が良くなってくるに従って徐々にジンの魔力を吸収して鎧の傷も修復していったのである。


『【黄色の雷鳴】雷電よ、汝の目的は【黒色の武装】を試すことだった筈。あのまま行けばどちらかは死んでいた』

「……頭に血が上りすぎてしまった。本当に申し訳ない……」


 そう言って雷電は刀を収め、地に足を付けて深々と頭を下げる。その動作にジンは見覚えがあった。それは、嘗ての故郷の日本で最上級の誠意を示す体勢……所謂土下座をして雷電は、ジンに謝ったのだった。


(ま……まさかの……土下座!?)


 それを見たジンは先程までの威圧感が消え、体力の回復もしたことで少しばかり頭が冷えて落ち着いたジンはその光景を目の当たりにして愕然としていたのだった。

 そして、流石にそのままにするわけにはいかないと判断し、(久しぶりに)声を出すことにしたのだった。


「……顔を……上げてくれ……」

「……その慈悲に感謝を」


 途切れ途切れではあったが己の意思を伝えられた(と本人は思っている)ジンはふと考えた。


(……正直苛立ちもあったけど……万全な状態でいつも戦えるとは限らないし、これはこれでいい経験になったからいいか)


 ――ジンは今回の事を単純に己の修行の一環として受け入れ、すっかり水に流すことにした。そして両者から緊張が解け、アイリ達もほっとしたような表情をした。


『では……何故【黒色の武装】を試す真似をしたのだ【黄色の雷鳴】よ』

「実は……」


 雷電は語る。


 自分は【雷霆国】の頭首の兄であり、ある日魔物が【雷霆国】に押し寄せてきたことを皮切りに雷霆国周辺に生息していた竜種が謎の暴走を起こし、雷霆国を襲ったという。


 そして当然【色付き】の自分も参戦することになった。しかし幾ら自分でも全方位から絶え間なく迫ってくる魔物を相手にするのは骨が折れ、更に雷霆国周辺に魔王軍の四天王の存在が確認されたことで事態は急変した。


 そこで弟で雷霆国現頭首の『龍我・R・雷電』は四天王を3体討伐した実績を持つ【黒色の武装】とその一行を抱えているセーラス国に助けを求めたという。


「え?私達セーラス国のお抱えだったの!?」

「ん?そうだが?」

(……正直知らんかった……)


 ……ともあれジン達に助けを求めたはいいものの果たしてその実力が本物かどうか疑っている家臣が多く、それならばと兄であり雷霆国最強の自分が実力を確かめるという条件を出したという


「……奴らは頭の固い老人のようでな……結局は自分の保身にしか目の行かぬ愚か者ばかりで弟も困り果てている……」

「……そんなことが雷霆国で起こっているのかよ……ていうか今魔王軍が襲来している状況で内で揉めてたら駄目だろ」

「……貴公のような考えを持つ者が増えてくれてたら大いに助かるのだがな……」


 はぁとため息をつくその姿にジンは心の中で合掌したのだった。

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