*53 腐り墜ちた紋章と白の継承
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ジンが宮殿の壁を突き破る程の勢いで吹き飛ばされるのをビアンカを含めた全員が目の当たりにした。ジンが自分をかばった事実に気づかされたビアンカは怒りに支配されていた脳内が急激に冷えていくのを感じた。
そしてその様子を見ていたテラは心底面白そうな声をしながら再び骨を震わせて笑い始めた。
「カッカッカッカッ……マズハ1人……ッ?!ナンダ!?」
「ジン様!?」
「この光は……まさか!」
高笑いをしていたテラだが、煙の中を突き破るように現れた白く輝く光が見え思わず動揺したのだった。それは、アイリ達も同じであり、中でもビアンカにはその光がどういう物なのかが分かっていた為猶更驚かされたのである。
「(あの光は……間違いない!私が【白色の祝福】を継承した時に見えた……アステール様の!!)」
ビアンカはかつて自分が【白色の祝福】を継承した際の記憶を思い出していた。
――【白色の祝福】を継承した時、ビアンカの視界を埋め尽くしたのは満天の星空だった。そしてビアンカは、そこに佇む白い輝きに包まれた存在……アステールと邂逅したのだった。
そしてそこでビアンカはアステールより【白色の祝福】の継承が為されたことを告げられた後、ビアンカはその身に白い輝きを……白色の祝福を宿すことになったのである。
だからこそビアンカはその光に見覚えがあったが故にアイリ達よりも驚愕したのだった。
「(一体……何が……!?)」
そして崩れた壁の向こう側から光輝く剣が幾つもテラに向かって行った。
それを見たテラはすかさずイーツを盾にした。イーツがその輝剣を喰らおうと口を大きく開け待ち構え輝剣を飲み込んだ。
――しかし
「オォオオオオオオ……!?」
「ナ……ナンダトォ!?」
剣を飲み込んだ瞬間、イーツの体から幾つもの光柱が飛び出し、イーツの体を徐々に浄化させていったのだ。それを見て焦ったテラはすぐさま闇の瘴気でイーツの体を覆い光柱を取り除き始め、再生しようと試みたが
「ナゼ再生シナイ!?奴ニハアノ小娘ノヨウナスキルハ無カッタ筈ダ!!」
イーツの体はビアンカの聖なる力による攻撃を受けた時のように再生が遅くなっていたのだった。しかし、ジンの攻撃には更に《再生阻害》が付与されていたため更に再生が追い付かない程までのダメージを負っていたのだった。
やがて、壁の向こうから背後に幾つもの輝剣――《黒騎士の白剣》を展開したジンが歩いてきた。
それを見たテラがすぐさまアンデットをジンの足元付近に出現させたが、ジンが剣を天に掲げて振り下ろす動作をした瞬間《黒騎士の白剣》がアンデット達を切り裂き、全滅させたのである。
「なるほどね……それがヒュドールの言ってた《色の融合》か」
「となるとジンは、【白色の祝福】の力を手に入れたのか」
「えっ!?どういうことよ!?」
「えっと……ですね……」
アイリは、周りに群れ始めたアンデットを相手取りながらビアンカに《色の融合》の事について説明し始めた。
「え……?それ本当?」
「はい……!他にもジン様は【青色の深海】の力をも手に入れております!」
「……流石は【黒色の武装】といった所かしらね……!ちょっと羨ましくなったじゃない!!」
そうこうしている内にアンデットがフラム達の健闘やビアンカの《白の聖光》で一掃されたタイミングでジンも合流し、着実にテラを追い詰めていった。
「仕方ナイ。コイツモ使ウトスルカネ」
「また新たなアンデットを召喚する気か!」
「《白の聖槍》!」「《元素爆発》!」
(《黒騎士の白剣》展開……射出!)
新たなアンデットを召喚しようとしたテラを妨害するべくビアンカが白く輝く聖槍を、グレイが複数の属性を組み合わせた光線を、ジンが無数に出現させた《黒騎士の白剣》を一斉に射出させた。
だが、それらはジンにもアイリにも、またフラムにも見覚えのある触手に阻まれた。
「へぇ?そいつは確か……」
「【紋章卿エレ】……まさか彼女までアンデットに……!」
(四天王のオンパレードだな……)
テラの傍に召喚されたのは右半身が複数の魔物が融合したような存在……【紋章卿エレ】がその触手を持ってジン達の攻撃を防御したのだ。
「カッカッカッカッ……コレデ貴様ラヲ殺シテ、穢シテクレヨウ!」
「やれるもんなら……やって見なさいよ!!」
◆◆◆
「ナゼダ!?ナゼ私ノ兵隊ガ押サレテイルノダ?!生前ノ弱点ハ全テ克服シタ筈!?」
エレを召喚し、イーツと共にジン達を殺しにかかったテラだが、ジン達が押されるどころか自分たちが追い詰められていることに心底驚愕していた。
……イーツは両腕が浄化され、体中の口は全て塞がれていた。完全に浄化されるまであと少しと言った所だろう。
エレに関しても、始めはテラに改造された異形の身体から繰り出される予測困難な動きに翻弄されていたジン達だが、ヒュドールの《浄化の涙》が張られた空間で動きが鈍った瞬間をつかれて既にボロボロになっていた。
「オノレェ……!」
「さぁ、さっさと懺悔しなさい!」
「懺悔ダト!?マダ勝ッタツモリカ!!《死霊術》!」
「まだ何か召喚するのかよ!?」
「……違う、これは……!」
テラが杖を掲げると、周囲に飛び散ったイーツやエレ、そして残りのアンデットがテラの下に集まっていった。そしてやがて完全にテラを飲み込むと1つの黒い繭のようなものが形成された。
――そしてその繭から現れたのはジン達がこれまで見たことが無い程に悍ましく、醜く、歪な存在だった。
それは正に『生命への冒涜』という言葉が相応しかった
「な……何だこいつ……キッッッッッショ!!!!」
「これは酷い……!」
「うっぷ……気持ち悪い……」
「グレイちゃん……大丈夫ですか!?」
(うっわ……これは……ちょっと……)
「グオォォォォォォォォ!!」
繭から現れたのは、あらゆるアンデットがぐちゃぐちゃに混ざり合いながらも、まるで四足歩行のドラゴンの胴体から下の部位を構成してるという地獄絵図であった。その部位は複数のアンデットが歪に絡み合い、接合され、身体のあちこちから合体しきれなかった腕や足などの部位が飛び出している状態だった。
そしてその上半身には下半身を歪な胴体に埋めたテラの姿があった。その手にはテラが身に着けていた杖がある他、テラの腕のしたにイーツの腕がまるで無理やり合体させた玩具のように取り付けられていた。右の手にはイーツの大剣を、左手にはエレのレイピアが握られていた。
その様子に思わずフラムの顔がまるで黒く光るGを見たかのような表情になり、ヒュドールは汚物を見るかのような視線になり、その悍ましいテラを見て思わず吐き気を催してしまったグレイを落ち着かせるアイリ等、その凄惨たるテラの様子に全員がドン引きしていた。
「ハァ……ハァ……貴様ラハココデ私ガ殺シテクレル!!ソシテ貴様ラノ死体デ更ナル高ミヘト上リ詰メテクレル!!」
「そんなの、お断りよ!!」
(いいからはよくたばってくれ……)
もはや先程までの余裕を捨て去ったテラが腐臭をまき散らしながらジン達に襲い掛かった。
《黒騎士の白剣》……全体のビジュアルは、黒い騎士剣に白い宝玉が柄の部分に嵌り込み、刃全体が白く発光している。
能力はアンデット及びゴースト系に対する強力な特攻と、聖属性の付与、状態異常の無効及び耐性の付与を味方にも行える




