*52 腐敗の大喰らいと白の教皇
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「オオォオオ……」
「チイッ!何だこいつ!?俺の《赤の弾丸》を喰いやがっただと?!」
「ボクの《青の切断》まで……!?」
「皆気を付けて!そいつの体の口が何でも食べるから!!」
イーツに向けて炎の弾丸と圧縮された水の強力な放射を受けたと思いきやそれらを全て食い尽くしたイーツに驚愕するフラムとヒュドール。
グレイの言葉を聞いて相手の厄介さを思い知った一同だった。
「……君たちよくあれ倒せたね」
「で、どうすんのよ。あれ貴方達あれどうやって倒したのよ」
「えっと……ですね……」
アイリは自分たちがイーツを倒した時の事を話した。イーツは首元が弱点であること、その為に全身の口を一斉に塞ぐために怒涛の攻撃を加えたことを
「……思ったよりも物理的な解決手段だな……簡単で良いじゃねぇか!!オラアッ!《赤の爆発》ォ!!」
イーツの体を大爆発が包み込んだ。だが、煙が晴れるとやはり火傷1つすら負っていなかったが、その口の殆どは爆発を喰う為に閉じていた。続けざまにアイリが
「《乱れ桜 月読の舞》」
かつてイーツに放ったような縦横無尽に飛び交う斬撃の嵐がイーツの全身を斬り刻むがやはり喰われた。
だが成長したアイリの剣術は以前よりも多くの斬撃を生み出すことに成功し、イーツは初めて喰いきれず全身を斬り刻まれた。そしてその隙を見逃さずビアンカが白く輝く光を纏った剣《白の光剣》ですかさずイーツの首に一閃を入れた。そしてイーツの首が床に落ちた。
これでイーツは消滅する……そう思っていた一行だが
「果タシテソウカナ?」
「何……?」
「私ガナンノ対策モシテナイト思ッタカナ?」
「こ……これは!?」
(……嘘だろ!?)
――ジン達は床に転げ落ちた頭を体大剣を持ってない方の手で抱えるように持ちながら再び立ち上がったイーツの姿を見て戦慄した。
「ヒトツ言イ忘レテイタコトガアッタ。私ノ《死霊術》は少々特殊デネ」
「こんな……こんなことが許されていいのか?!」
「私ガ使役シテイル兵隊ハ、私ノ思ウガママニ改造スルコトガデキルノダヨ。素晴ラシイトハ思ワナイカネ?生前ノ弱点ヲ完璧ニ克服デキルヨウニナルノダカラ!」
「こんの……下種があぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
何処か愉快そうに、誇らしげに、そしてこの悍ましい所業を誇るように語るテラに怒り心頭になるビアンカ。すぐさま斬り掛るが、やはりイーツによってその刃を防がれてしまう。しかし再び斬り込みに向かおうとしたときジンはあることを思い出した。
(やべぇ……!あの大剣は確か!!)
ジンはイーツの持っていた異形の大剣の恐ろしさをよく知っていたため、即座にビアンカとイーツの間に割り込み、ビアンカを引き離そうとした。しかし今度はジンの目の前で大剣の口がジンを喰らおうと開いたためジンは《黒騎士の武具》を大剣の口の中に突っ込み塞いだが、イーツが自分の頭をハンマーのようにしてジンに振るってきた。
「……グハッ」
「ジン様!!」
「ジン!!」
間一髪《黒騎士の蒼盾》で防いだジンだが、その衝撃までは完全には殺しきれず、宮殿の壁に激突してしまった。兜があるとはいえ、もろに頭にダメージが入ったのか、うまく立ち上がれないジンだった。
(く……クソ……!い、意識が……)
そしてジンの意識は暗転した。
――筈だった
(……はっ!?ここは!?)
瞬きをした瞬間突然先程までいた筈の宮殿の天井ではなく、無数の星が輝いている夜空が見える謎の場所に飛ばされていることに気づいた。
ジンは目の前の光景に驚きながらも、ふと星空を見上げた。星々は輝きながら時折流れていった。そんな光景にジンは見ほれていた。
(……綺麗だな)
「……あの輝きは生命の輝き、そして流れていく星は生まれ変わりを意味する……」
「!?」
ジンは咄嗟に背後を振り向くとそこには高潔さと潔白さを兼ね備えたような司祭のような服を纏った壮年の男性がジンと同じく星空を眺めていた。そして、ジンの視線が男性に向けられてからその男性はジンの方を向きなおした
「初めまして当代の【黒色の武装】。私はアステール、嘗て【色付き】と共に立ち上がった英雄の1人【教皇 アステール】と呼ばれていたとも」
(あ……あんたが……?)
アステール
嘗て彼は民を先導し、魔物に立ち向かう者に加護を与え、民を守った英雄の1人だった。そのことを思い出したジンは更に困惑した。
そんなジンの困惑した様子にアステールがはにかみながら少し笑うと、ジンにここに連れてきた目的を話した。
「私は待っていた。嘗て、渡すことができなかったこの力を……“白”の力を君に渡すために私は君をここに呼んだんだ」
「……俺に……?」
「そうだとも……本当はもっと話をしたかったけど、あまり時間が無いから君にこの力を授けるとしよう。さぁ!受け取ってくれ!」
ジンはアステールの手のひらに生成された白い輝きに包まれたオーブをゆっくりと受け取った。すると《黒色の武装》の片手剣の柄の部分の窪みの部分に白いオーブが縮小しながら嵌り、やがて変化が起きた。
これまで何の装飾や意匠も無かった黒い片手剣にははめ込まれたオーブから根を張るようにして剣全体に白いオーラを満たすと、これまでの黒を基調とした剣に白の十字架のような意匠と剣の面に生成された文字が混ざり、一際白く輝いた。
――また、剣の面に書かれていた文字は現地の言葉でこう書いてあった。
『勇気と正義をその手に』
そして、光がジンを包み込むとその空間にはアステールが取り残された。ジンが向こうに戻った後、アステールは再び星空を見つめて呟いた。
「……コウキ、君の息子は大丈夫だとも。後は彼が何とかしてくれるさ」
こうしてジンは“白”の力を継承した《黒騎士の白剣》を得た。その光はあらゆる不浄を退け、持ち主に勇気と正義を授ける在りし日のアステールの聖光そのものであった。




