*50 生を冒涜し、死を穢す者
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【ブレイブ墳墓】内に突入してから2時間が経過したころ、一行は下へ下へと向かい続けて一際薄暗い地下9階へと突入していた。【ブレイブ墳墓】の中は全体的に暗く、生暖かい空気が漂っており、静寂に包まれているのである。
周りの床や壁は長年の月日が流れていることを印象付けるように僅かに風化しており、そしてそれぞれの階層の中心に死者の鎮魂の為か十字架と剣を掲げた女神像が必ず設置されていたことが特徴として挙げられる
ここに来るまでにジン達は【ブレイブ墳墓】の中を彷徨うアンデットの魔物との戦闘があったり、明かりが殆ど機能していない中で暗闇の迷路を進んでいったのである。
……この時にたまたまアンデットと迷路で鉢合わせてしまったグレイとジンが恐怖と驚きのあまり迷路の壁もろともアンデットを跡形もなく粉砕するといったこともあったが、一行は最下層へと到達したのだった。最下層へは、《転移》の魔法陣で行くようだった。
魔法陣に入り、転移した一行を待ち受けていたのは衝撃的な光景だった
「ここが最下層!?」
「なんだここは!本当にここが【ブレイブ墳墓】の最下層なのか!?」
(なんだ……これ……?宮殿……?)
……これまでの階層は、薄暗い石造りの床や壁で構成された迷宮だったのに対し、ジン達が飛ばされた最下層はそれまでの印象とは180度異なっていた。
宮殿の中だろうか?ジン達を待ち受けていたのは大理石特有の美しい光沢のある壁や柱が特徴の宮殿の大広間であった。大理石の巨大な柱で支えられた天井には、セイクリッド王国の法王の間で見たのと同じ6つの球とその中心に据えられた魔王らしき存在が描かれた絵がそこにはあった。
「あの絵は……王国にもあったやつ!」
「どういうことだ……一体ここは……」
「ん?おお!ジン!それにヒュドール!来たのか!」
「ッ!?第二王子?!」
困惑していた一行の背後から聞きなれた声と共に現れたのは、失踪していた筈の第二王子とその部下達であった。
その様子は特に怪我をしている様子も無く至って健康そうだった。ディナルドだけでなくグレゴリーやその部下も特に問題ないといった表情をしていた。
ヒュドールがディナルドに駆け寄りその安否を確認した。
「第二王子!ご無事でしたか!」
「まぁな、これも全部あの嬢ちゃんのお蔭よ」
「嬢……ちゃん……?一体誰のことを……」
突然宮殿の奥から声が聞こえてきた。
「私のことよ【青色の深海】さん」
「「「ッ!?」」」
「おー、嬢ちゃ……んんッ!ビアンカ様じゃないすか!」
「『法王』を付けなさいよ!相も変わらず不敬!!」
突然聞こえてきたその声の主は、宮殿内の奥から歩いてきた。ディナルドの軽口に不敬と言いながら怒りを露にし、右手に銀色に輝く片手剣を持ちフードを外したその白色の短髪の少女は、自らを『法王』と名乗った。
このことからジン達は目の前の少女が『セイクリッド王国法王』にして【白色の祝福】であることを知り、驚愕した。
「あんたが……【白色の祝福】……!」
「そうよ!……というか皆揃って不敬なのよ!私は法王よ!?」
「……ところで王子、どうやってここに来たのですか?」
「おう!それはな……」
ディナルドはこれまでの経緯を話し始めた。
まず自分たちがアンデットの群れに苦戦していると、そこにビアンカが参戦し部下諸共この【ブレイブ墳墓】の最深部に飛ばされ、傷を癒してもらったことを話した。更にそこで初めてビアンカが【白色の祝福】であることを知り、そして今に至るという内容だった。
「……という訳で俺はここで待ってたわけよ」
「なるほど……ん?待つ……とは?」
「あぁ、それも話すとするか……良いだろ?ビアンカちゃん?」
「せめて“様”はつけなさいよ!!不敬よ!不敬!!」
「へいへい……実はな……」
そう言葉を続けようとしたディナルドだが、突然【ブレイブ墳墓】全体に響き渡るほどの大きな爆音が鳴り響いた。突然のことにジン達が驚愕するも、ただ1人ビアンカだけは、上階を睨んでいた。
「あ!?なんだ!!」
「不味いわね……!あいつが来た!!」
「あいつとは……!?一体……!」
「説明はあと!あんた達は《聖壁》の中へ避難しなさい!!」
「わ……分かりました!皆の者!直ちに避難せよ!!」
「な……何が来るのですか!?」
ビアンカとディナルド達の只ならぬ様子に騒然とするジン達に、ビアンカは告げた。
「奴が……魔王の四天王がこの結界を破ったのよ!直に来るわ!準備なさい!!」
「四天王……!」
(上から……何かが来る……!)
天井を見上げたジン達。やがてけたたましい地響きと轟音が鳴りやんだかと思うと、それは降ってきた
「あの黒いシミのような物は……一体!?」
「……来るわ」
「気色悪いな……随分と」
ぽたり
大理石の光沢に似合わない黒いシミのようなものから黒い雫が零れ落ちた。周囲に緊張と異様な匂いが広がっていった。思わずその匂いにジン達は顔を顰めた。
ぽたり ぽたり
――やがて大きな水たまりのような黒い液体の中から異形の存在が浮上してきた
「フム、成功ト言ッタ所カ。……待チワビタゾ【白色の祝福】ヨ。貴様ノ命ヲ貰イニ来タゾ」
「こっちから願い下げよ……!このバケモンめ!死者は大人しく眠ってなさいよ!!」
「こいつが四天王!!」
黒い水たまりの中から浮上してきたのは司祭のような外套を纏い、その頭蓋骨には歪な形をした王冠が被さっていた。その存在こそ【冒涜者 テラ】であった。辺りに死の瘴気が蔓延していく……
「何て醜い……!」
「な……何あれ……?」
「さながらアンデットの王って所か?……気色わりぃぜ……」
(こいつが元凶か……)
ジン達はテラの異形の姿を見るや否や隠しきれぬほどの嫌悪感をテラに抱いた。
「……一応聞いておくわバケモン……どうやってあの結界を破ったの?」
「何、簡単ナコトサ。膨大ナ魔力を持ッテアノ結界ヲ破ッタダケサ」
「……その魔力はどこから持ってきた。どうやって手に入れた」
「何、ソノ辺ノ人間タチヲ喰ッテ得タノサ」
「……この、屑が!!その為に……!どれだけの人たちが犠牲になったと思ってるんだ!!」
怒りに染まったビアンカに対してテラは告げた。
「君タチハ道端ノ蟻ヲ見テ何ト思ウ?……ソレト同ジダヨ」
「《赤の……業火》!!」
ボォオオオオ!!
邪悪な声色で犠牲になった人間を嘲笑うテラをフラムの業火が襲った。フラムの表情はこれ以上ない程の憤怒で染められていた。
「もういい……!てめぇはさっさと燃えろ!!そして地獄へ行きやがれ!!」
「……フム、中々ノ火力ジャナイカ」
「《白の聖剣》」
フラムの業火に身を焼かれながらもどこか余裕そうなテラに間髪入れずに白い光を纏った剣で斬り掛ったビアンカ
その表情はフラムに負けず劣らずの怒りの表情を見せていた。
「お前は骨片の一欠けらも残さん!!」
「ボクも苛ついたよ……お前に!!」
「……行きます」
「許さない……」
「来ルガイイ、私ノ兵隊ニシテクレル!!」
(こいつは……ここで殺す!)
こうして三人目の四天王……【冒涜者 テラ】との闘いの幕が上がった




