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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第五章 白き祝福と青き深海→いよいよ【色付き】が揃いつつある
48/100

*48 法王代理と【冒涜者 テラ】

閲覧ありがとうございます!


次回から本格的に【ブレイブ墳墓】の探索に入ります

――数分後


 落ち着きを取り戻したのか、もう一度部屋から退出させられたジン達だったが、再び部屋に入るとそこにはぱっと見冷静なイメージを思わせるような眼鏡をかけた女性が玉座に座っていた。


 魔法を使ったのだろうか、先ほどまで部屋中にあふれていた書類が消えていた。やがて眼鏡をかけなおすとキリっとした表情で何事も無かったかのようにジン達に語り掛けてきたのだった。


「……お見苦しい所をお見せいたしました。私はセイクリッド王国法王代理のリヒト・ディヴァインと申します」

「「「「……」」」」

「あの……出来たら先程の光景は忘れていただけませんか……?」

「あっ……はい……」

(無理)


 アイリが申し訳なさそうに返事をするが、フラム達に至っては目を逸らし気まずそうにしていた。それは暗にさっきまでの出来事を忘れることは出来ないと告げているようなものだった。


 ジンの心の声がすべてを物語っていた。


「……コホン、貴方達の言いたいことは分かります……なぜ代理なのかということですね」

(……そういうことにしといてやるか)


「……現在セイクリッド王国にはこれまでにない程の危機が訪れています。それは貴方方も体験してきたでしょう」

「……アンデットの異常発生」

「そうです。本来アンデットというのは、生前に強烈な無念や恨みを抱えた人物が死んだときにこの世界に漂う負の力と同調し、その結果死体が起き上がる……これがアンデットです。最もネクロマンサー等の死者を操ることに長けている連中はその限りではないのですが……」

「なるほどね……で、それと法王様がいないことに何の関係が?」


 フラムがリヒトに法王が不在の理由を聞いた。


「……簡潔に言います。現セイクリッド王国法王であるビアンカ・セイクリッド様は、今回の事態を治めるために【ブレイブ墳墓】に……」

「「「!!」」」

(確か……ディナルドが最後に消息を絶ったのも【ブレイブ墳墓】……!)


「それでっ!!今連絡は取れるのか!?」

「いいえ……法王様はたった御一人で突然【ブレイブ墳墓】へ行ってしまわれたのです……それで法王様の代理として補佐官の私が勤めているのです」

「連絡は取れない……か」


 ヒュドールの顔に一抹の不安が過った。そしてアイリがリヒトにあることを尋ねた。


「あの、もしかしてそのビアンカ様ってもしかして……」

「そうです……ビアンカ様こそ現セイクリッド王国法王にして【白の祝福】の継承者であるのです!」

「なっ……!?」

「まさかこの国の法王が……?!」

「マジかよ……」

(……え?この国のトップが【白の祝福】で……1人で【ブレイブ墳墓】へ?……それヤバくね?)


 ジン達はリヒトによってもたらされた衝撃の真実に驚愕した。これまではカルメンやヒュドールのように王に仕えている者が【色付き】であったり、フラムのように女王の兄であったりなど何かしらの形で王に関わっている者ばかりであったが、ここにきてまさかの法王が【色付き】であることに驚いたのである。


「……ビアンカ法王は無事なのか?」


 ヒュドールが尋ねる


「えぇ……この国を覆う《聖壁》は、法王様のスキルによって維持されています……この《聖壁》がある間こそ法王様がまだ生きていることの証なのです。しかし……」

「ビアンカ法王様がこの国を離れているから……弱まっていると」

「そういうことです……情けないことに、私も《聖壁》の維持を行っているのですが……このザマで……」


 悔し気な表情を浮かべながら目を伏せるリヒトだった。リヒトは続けて語る

 《聖壁》を維持するにはそれこそ莫大な魔力が必要であり、法王に選ばれるにはそれを担う莫大な魔力とその資質を要求されるのである。だからこそ本来は国の長たる法王が国から離れれば《聖壁》も消されてしまうはずだが……


「ビアンカ様は、【白の祝福】のスキルである《白の衛兵》と《祝福の結界》の2つのスキルを駆使して国から離れていても《聖壁》を維持できているのです……」


 リヒトは自身の傍に仕えている真っ白な天使を思わせる鎧とフードを身につけた衛兵に目を向けた。その背にはわずかに青い光で構成された羽のような物があった。その衛兵こそ《白の衛兵》であった。


 リヒトによると《白の衛兵》は同時に13体まで存在することが出来、現在のセイクリッド王国にはその内の12体を王国内に散らばせているという。また《白の衛兵》には、セイクリッド王国の守りをより強固にする役割も持っているらしい。


「じゃあ……あの《聖壁》の上に重なっている白い光の膜が……《白の祝福》だね」


 ヒュドールは窓の外から見える《聖壁》に重なっているように見える物の正体についてリヒトに聞き、またリヒトはそれに答えるかのように頷いた。


「《聖壁》に関しては……多分大丈夫なはずだが、そうなると……アンデット大量発生の原因はやっぱり……」

「……四天王だろうね」

「やっぱりか……」


 ヒュドールは、この国に起きているアンデットの襲撃の犯人が四天王であることを確信した。


「とすると……ビアンカ様が【ブレイブ墳墓】に向かった理由も……!」

「……四天王の撃破、或いは【ブレイブ墳墓】の保護だろうね」

「3体目の四天王!」

(……ネクロマンサーかアンデットの四天王なんだろうな……)


 ジンの考えは図らずも当たっていた。


 それからジン達はリヒトが手配した宿に泊まり明日に備えたのだった。


◆◆◆


「ヤレ!『紋章魔法』!」


ドグゥオオオン!!

「フム……簡単ニハイカヌカ」


【ブレイブ墳墓】の付近にて【冒涜者 テラ】は自身の傀儡となり果てた『紋章卿エレ』を使い、【ブレイブ墳墓】に貼られた結界を打ち破ろうとしていた。


「マァイイ、ダッタラ後カラデモ間ニ合ウ。全員揃ッテカラ私ノ兵士ニシテヤロウ。カッカッカッカッカ……」


 人気のない墓所に骨がこすり合わさったような笑い声と腐敗臭が広がっていった。


――その姿は正に死を冒涜する死者という矛盾した言葉が似合うのであった

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