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沈黙の黒騎士→ただ話すのが苦手なだけ  作者: @novel
第五章 白き祝福と青き深海→いよいよ【色付き】が揃いつつある
45/100

*45 黒と白そして灰

閲覧ありがとうございます!


今話で色々と伏線を張り巡らしていきますのでお楽しみに

「で?こいつらが君たちを襲ったと」

「ああ、そうだ。あのまま放置しても良いんだが、こいつらについて何か情報を得られねぇかな……と思って連れてきたんだが……」


 黒装束の連中を拘束したジン達はヒュドールの待つ宿に向かい、事の顛末を話した。


「……ホントにここにいるのがボクで良かったね……いいよボクが何とかするから」

「何とかって……どうすんだよ」

「見ればわかる」


 そう言うとヒュドールはリーダー格の人物の頭に手を乗せた。


「《青の潜伏》」

「ガァッ……」


 リーダー格の男が虚ろな表情になると、ヒュドールは男の頭に手をのせ、目を瞑ったまましばらく動かなくなった。


 暫くして目を覚ましたヒュドールは、男から手をどかして再び男を気絶させた。


「今のは……」

「まぁ、簡単に言うと今、ボクはこいつの脳内に入り込んだんだ」

「記憶を読み取る力……ねぇ……」

(普通にすごいスキルだな)


 一行はヒュドールの力の一端を目の当たりにした後、黒装束の連中が何者なのかをヒュドールから知らされた。


「それで、こいつらなんだけどね」

「……見た感じ暗殺者でしょうか……?」


 アイリが彼らについての予想を立てる。フラムやジンも同じ意見だった。


「あながち間違いではないね。……正解は、ただのカルト集団だよ。それも質の悪い『魔王崇拝』の連中さ」

「魔王……崇拝……?」

「そ。セーラス国だけじゃなくて他の国々にも厄介ごとを運んでくる疫病神のような奴らさ」

「けっ!魔王なんか崇拝して何になるってんだ!」


 フラムが吐き捨てるように言い放った。それはヒュドールも同じだったようで、彼も思わずため息をついたのだった。


 その間もヒュドールは他の黒装束のメンバーに《青の潜伏》を掛けており、一通り終えると近くの椅子に座り込み頭に手を当てながら更にもう一度深いため息をついた。


「……全く、厄介ごとしか持ち込まないねこいつらは」

「なんかあったのか?」

「……簡潔にいうとね。こいつらの重要拠点がここ、ルリジオンにあるんだよ……」

「「「!?」」」

(はぁ~……確かにそれは面倒だな……)


 ヒュドールは連中の記憶を読み取る内に『商業都市ルリジオン』に重要な拠点があることに気づいた。このまま放置すれば、また刺客を送り込んでくる……そうなる前にその拠点を潰しておかなければならないことに面倒くささとその重要性に気づいて思わず、上を向いた。


「で、どうするよ。俺としてはそいつらは潰すに限るんだが……」

「……ボクも後々の事を考えて潰すことを選ぶんだけど……あまり時間は掛けられないのが現実……時間を掛ければ掛けるほど第二王子の安否が不味いことになるかもしれない」

「……そうなると」

「……今奴らは僕たちの情報を殆ど知らない。だから……」

「今、ぶっ潰しに行くわけか」

「そういうこと」


 それから一行は一先ず縛り上げた魔王崇拝の狂信者をグレイの《強制睡眠》で眠らせた後、ルリジオンの東端に存在する拠点に向かった。


(うーん……やっぱりこいつら見覚えがあるんだよなぁ……)



◆◆◆


「おい、そろそろ戻ってくる頃合いじゃないか?」

「あぁ。だが案外手古摺っているかもしれん」

「……ガキは余裕だろうが、あとの奴らが厄介そうだな」


 ルリジオンの東端に位置する酒屋の地下に彼らの拠点は備わっていた。彼らは普段は酒屋としてルリジオンに潜伏しており、時折生贄となる存在を攫っては地下で魔王に贄を捧げていたのだった。


「赤髪の大男に、黒騎士の奴か」

「だが、ボスが直々に向かって行ったんだ。時間はかかるだろうが生贄を連れて直に帰ってくるだろうよ」

「それもそうか……あの灰髪のガキと青髪のガキはかなりの魔力を持っているそうじゃないか」

「魔王様もお喜びになるだろうよ」


 はっはっはっ……と高らかに笑う二人だったがふと、上の酒場の所が静まり返っていることに気づいた。

 先程までの喧騒がピタリと止んでいた。


「……おい」

「あぁ……何か急に静まり返ったな……ボスが来たのか?」

「馬鹿言え、だとしたら今頃上の奴らが騒ぎ散らかしているだろうさ」

「それもそうか……おい」

「どうした?」

「お前、この入り口開けっ放しにしたか?」

「は?俺がそんなヘマするかよ」


 そういって男の1人が上の階に続く入り口の方に視線を向けると確かにその入り口からわずかに光が差し込んでおり、普段は棚で隠されている入り口が丸見えの状態になっていたのだった。


「……あいつらが閉め忘れたのか……?」

「それこそ有り得ないだろ。ボスがいたんだぞ?ボスがそんなことを見逃すか?」

「……だとしたr……ウッ」


 バタン!


「おい!?どうした!?」

「《水牢》」

「な……なんだ?!」


 1人が突然崩れ落ちたかと思うと、聞き覚えがない声がしたかと思うと男の周りに水で構成された牢獄が形成され、男は水の牢獄に閉じ込められたのだった。


「な、なんだて「《暗転》」め……え………」

「見事な手際だね」

「えへへへ……」

「上の奴らもこれで全員だぜ」


 ドサッとフラムが落としたのは酒場にいた『魔王崇拝』の残党だった。


 ジン達がとった策は至って単純だった。


 記憶を読み取って拠点の場所まで付いた一行はグレイの《透明化》を掛けてもらったフラムとアイリが酒場にいた残党を制圧した。


 その後《沈黙》のスキルによりあらゆる行動で無音になるという性質を活かしてジンが下に残っているメンバーに悟られないように隠し扉を開けて1人を気絶そして残りをグレイとヒュドールが確実に制圧する……という物だった


「じゃあ、念の為こいつらの記憶を読み取るから椅子か何かに拘束しといてくれないか」

「うん!《鎖の連鎖(チェーンスパイラル)》」


 グレイがメンバーを残らず柱に縛り付け、ヒュドールが《青の潜伏》で記憶を読み取っていった。


 一方フラムは


 ペラ……ペラ

「……ちっ、なんて胸糞わりぃんだ」


 フラムはふと目についた本を読んでいた。本の表紙は……『魔王様への生贄』と書かれていた。

 そこには既に犠牲になったであろう人達の似顔絵とその人物に関する情報が淡々と載せられていた。


「くそっ……読むんじゃなかったな……うん?この先のページだけ何か書かれてるな……」


 フラムは狂信者たちの犠牲になってしまった人達に安らかな眠りを……と祈りを捧げながら『魔王崇拝』の連中に対する怒りを滾らせていた。


 しかしページを捲っているとフラムはあるページに目が行った。そこには前置きのように【最重要人物】と書かれていた。


「【最重要人物】……?なんだこりゃ」


 フラムはどこか怪しそうなその項目のページを捲るとそこには衝撃の人物たちに似顔絵と身体的特徴が記されていた。


「こいつは……!カルメンの姐さん!?それにこっちはヴィティ?!まさか奴らに狙われてるのか!?」


 其処にはカルメンとヴィティに関する情報が記されていた。


「『カルメン……魔王様に仇名す愚か者として速やかに捕らえ魔王様の糧にさせるべし』だと……?それにヴィティは『ヴィティ……シニアーク王国の女王であるがその身に宿す膨大な魔力は魔王様の極上の餌となるだろう』……!!ふざけてんのか!!こいつらは!!」


 思わず本を叩き落としたフラムだった。まさか自分と同じ【色付き】の人物と自分が命に代えても守りたいと思っている妹を品定めするような記述が彼を苛立たせた。


 そしてフラムに叩きつけられた本がとあるページを開いた。


「あん?なんd……これは!?まさか?!」


 フラムはバッと振り返りとある人物を見つめた。その視線の先にいるのは……


『灰髪の奴隷……彼女に秘められたその類稀な程膨大な魔力、そしてあの【奴隷王】の子孫であることを踏まえ早急に確保し、奴隷としたのち速やかに贄とするべし』


「……灰髪……膨大な魔力……そして……【奴隷王】の子孫だと?!」


 視線の先には……アイリと談笑しているグレイがいた。


「……この似顔絵、そして元奴隷の身分……それにこの記述……間違いない、これはグレイ嬢ちゃんか!」

「これは……伝えるべきなのか……?!」


 フラムは『魔王崇拝』の組織の闇を目の当たりにした。人を人とも思ってないような輩が闊歩しているだけかと思っていたが、まさかこれ程までに厄介な連中だとは思いもしなかったのだ。


(よくよく見てみれば、ここに載っている人の中に俺も知っているような奴らがいるじゃねぇか……この少女も、この男も……)

(しかし……まさかグレイの嬢ちゃんが……【奴隷王】の子孫だとは……)


【奴隷王】……かつて奴隷という身分でありながら【黒色の武装】と共に旅をし、後に奴隷の身分にあった人をかき集めて独裁国家に革命を起こした英雄


 フラムは自身の持っている知識を必死で掘り起こし、【奴隷王】について考えていた。


(確か【奴隷王】の象徴である灰髪……あれを生まれつき持っているのは彼の一族だけっていう話は聞いたことがあったな……)

(そもそも生まれつきその魔力やその質によって目の色や髪の色等が決まるとされるが、()()()()そして()()はかなり……いや殆どいない)


 この世界の住民は魔力の質や量、或いは素質によって目の色や髪の色が変わる。

 例えば、髪の色が赤であった場合は高確率で炎の扱いにたけている場合が殆どである。そういった知識があるからこそ、多くの兵士は兜などで己の色を知られないようにしているのだ。


 しかしそうした適性がある中での例外として灰色と白色そして黒色が挙げられる。


 近似色として挙げられる茶色やそれに近しい色の持ち主は所謂万能、悪く言えば器用貧乏だ。この世界の殆どを占めているのだ

 しかし金色や銀色の場合は卓越した身体能力或いは膨大な魔力を持つ。アイリは金髪であり卓越した身体能力を持つのも頷ける。


 ――ではこれらに当てはまらない灰色と白色、黒色は何か


 結論から言うと……灰も白も黒も先天的に持って生まれることはあり得ないとされるのが常識だった。


 生まれる前の赤子の体内では栄養と共に親の魔力を吸収するのだ。それによって髪の色や目の色が作られる。その際赤色と青色の夫婦からは赤、青、そして紫が生まれることはある。色が混ざるのは何ら不思議なことではない。


 だが、灰色と白色、黒色となると話は別


 いずれの色もそれこそ2つの色が混ざって生まれる確率はかなり低い、白に関しては極稀に色が抜け落ちて生まれることはある。だが、灰と黒に至ってはどうあがいても普通は発現しないのだ。


――子供は3人以上では出来ない

 黒は2つの色だけでは出来ない

 白は色が抜け落ちて出来る

 灰は黒と白が混ざって出来る


(……そういやジンも黒髪だったな)


――黒は全ての色を混ぜることで作られる

 白は全ての色が抜けだすことで発現する

 灰はそれらが混ざると作り出される


 どこかで見たことのある文章を思い出しながらフラムは本を閉じた


(……まさかな……ジンとグレイの間に家族的な繋がりは流石に無いか……年も離れているし……正直あまり似てないし)

(魔王封印を成し遂げた【黒色の武装】……彼も黒髪だったが……もしや彼の前、つまり【奴隷王】の親も黒髪だったのか……?)

(……あとでヒュドールに頼んで【奴隷王】についての書物を見せてもらうか)


 フラムは、考えることを一旦止めて本を置き、丁度記憶を読み終わったヒュドール達の下へ歩き出した

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