*44 商業都市の観光とその裏で暗躍する影
あれから一行は一際大きな宿である『宿屋レスト』に行き、部屋を借りた後各々の自由行動をすることになった。
「じゃあボクは、ここで本読んでいるから」
「俺は、ここの美味いもんでも食ってくるとするかね」
「私達も何か食べてから観光しようと思いますが……」
「おっ、じゃあ俺も一緒に美味いもんを探すとしますかね」
ヒュドールは宿の一室で何処からともなく取り出した本を読み、フラムはこの地の料理を堪能することにしてジン達と一時的に行動を共にすることにしたのだった。
ルリジオンには多くの人が出入りするだけあって各地の郷土料理や地方独自の食材や料理を出す店が立ち並んでいた。
「おっ、あれは確か俺の国に有ったフローズンフルーツじゃねぇか」
「フローズンフルーツ?」
「おうよ、俺がガキの頃よく齧ってた果物でな、中身までキンキンに冷えているからアイスみてぇな感触と味わいが楽しめるんだなこれが」
「美味しそうだね!」
「ジン達も食うか?」
「では、私も……」(シャーベットみたいなものか……)
フラムが目を付けたのはシニアーク王国の冷気で冷やされた果物である『フローズンフルーツ』であった。懐かしさに惹かれたフラムと興味を持ったジン達は早速買うことにした
フラムは店の奥で荷物の整理をしていたであろう店主に声を掛けた。
「おう、おっちゃん!これ幾らだ?」
「ん?……あぁ!お客さんかい!」
「仕事の邪魔したか?」
「いいや、大丈夫じゃよ。で、フローズンフルーツだったね」
「これを、4人分欲しいんだが」
「そしたら、一個150だから600ポイントね」
そしてフラムが奢りとして600ポイントを出した後、ジン達はフローズンフルーツを堪能した。
「あ~……懐かしいぜ……こんな味だったな」
「シャキシャキして美味しい!」
「冷たくて美味しい……」
(……まんまシャーベットだな……でも美味しい……)
それから、フローズンフルーツを食べ終わった一行は、その後もあちこちに移動して目を付けた料理や食べ物を口にしていったのである。
――気付けば夕焼けが差し込む時間帯になっており、一行は食事だけで相当の時間を消費した事実を突きつけられたのだった。
「……あれ?もうこんな時間……?」
「結局……食べ歩きだけで終わっちゃいましたね……グレイちゃんは、満足しました……?」
「うん!とても美味しかった!」
(……もう夜真っ盛りじゃねぇか……)
ヒュドールが待機している宿まで離れた場所の店まで来ていたので宿に着くまで少し時間がかかること
になった。
暫く歩いているとフラムが立ち止まった。
「……なんかよ……」
「なんでしょう?フラム様?」
「やけに静かすぎねぇか?」
「……!そう言われてみれば……確かに……」
……フラムの言う通り、確かに昼の賑わいと違って夜は昼よりも静かになるのは至極当然。しかし夜には夜なりの賑わいがある筈だが、フラムはそれすらないことにいち早く気づき立ち止まったのである。
「それに……」
フラムが周囲を見渡した。
「なんかの気配を感じるんだよなぁ……」
周囲は人が住んでいる筈の建物に囲まれており、その街道のあちらこちらには新聞紙等のちょっとしたゴミがまばらに落ちているのである。はっきり言って不気味な光景であるが、それに拍車をかけるように辺りが静寂に包まれていたのだった。
そしてフラムは先程から何かしらの気配を感じており、少し顔を顰めながら辺りを見渡した。
「うーん……グレイちゃん《鑑定》を使ってみてくれませんか?」
「うん、分かった《鑑定》」
不審に思ったアイリがグレイに《鑑定》を使う旨を促し、グレイが《鑑定》を使い周囲を見渡した。
(……何か、いる気がするんだよな……)
同じくジンも何か得体の知れない存在の気配を感じておりその手は既に腰に付けられた剣に向かっていた。
「……私達、結界の中に閉じ込められたみたい……!」
「「「!?」」」
グレイが《鑑定》を終えその結果を報告すると、ジン達に緊張が走った。アイリは既に剣を抜いており、ジンやグレイも戦闘準備を済ませていた。
「……おい、さっさと出てきな。気色悪ぃんだよ!」
フラムが一際大きな声でイラついたかのように声を上げた。するとジン達の目の前に複数の黒い影が降り立った。
そしてその連中の中のリーダー格の存在がジン達に話し始めた
「お前たちが【色付き】の継承者だな」
「あ?なんだてめぇら?」
「魔王様の邪魔になる存在……ここで死んでもらう」
リーダー格の男らしき者が手で合図をすると、ジン達に向かって黒装束の男たちが飛び掛かってきたのだった。
「死n「おらぁ!!」グハッ!?」
……フラムに襲い掛かってきた一体は顔面に当たる部位を炎を纏った拳でフラムに思いっ切り殴りつけられた。
「死ね!」
(……殺さずに捕らえるか……)
ブン!
「ガハッ!?」
ジンも襲い掛かってきた一味を《黒騎士の武具》で作った大槌で横から叩きつけた。吹き飛ばされた黒装束の人物は結界に凄まじい勢いのまま衝突し、気絶した。
「グレイちゃん!」
「うん!《鎖の連鎖》」
アイリが素早い動きと剣術で翻弄している隙を突き、グレイが鎖を出現させ複数人を捕らえた。そして続けざまにグレイは《暗転》で確実に意識を奪い無力化をしていったのである。
「おら?どうした?俺たちを殺すんだろ?」
「くッ……」
「《拘束》!《暗転》!」
「お……おのれ……」
「これでいい?」
「おお!ばっちりだ!……おっ辺りが少し賑やかになったな」
「この人たちは……一体……」
それからジン達は一先ず拘束した一味をヒュドールの下に連れていく事にしたのである
(……それにしてもこいつらの装束……どこかで見たことがあるような……?)
ジンはどこか見覚えがあるその装束に首を傾げながらも一味を運んだのだった




