*15 【工房】との出会い
「な、なかなか最深部にたどり着けませんね……」
「ここ……どこ?」
(あれ?なんでこうなったんだっけ?)
今俺たちは依頼でとあるダンジョンの探索を行っているのだ。しかし現在のジン達はさ迷っていた。
――ことの始まりは数時間前のこと
(さて、どんな依頼を受けようかな……どれ受けても1000ポイントは稼げるし、どうせならダンジョン探索とかないのかな?)
【金級】の報酬金は基本的に1000ポイントと超えているものばかりだ。それこそ安いもので2000ポイントの【物資輸送任務】だが、これも特別報酬の可能性有とされている。
ジンはクエストボードを見渡していると思わずやってみたいと思える依頼が貼ってあった。
(【ダンジョン探索任務】……ダンジョンの内容が変わる時が来たため中のマッピングや魔物の討伐も含めて6000ポイント……いいじゃん!これにしよう!)
どうやらそのダンジョンは一定の期間が経つとダンジョンの中身がまるっきり変わるというもので地元の人たちはそこを生きている迷宮の意味で【アライブ迷宮】と呼んでいる。
何といってもその特徴は、中身が変わることに尽きる。この特性の所為で地図は碌に役にも立たず、ダンジョンの構造を覚えるだけ無駄になってしまうのである。
故に生半可な実力ではこのダンジョンに挑むことは危険とされておりそれこそ長年の経験が物を言うので幾らジンたちと言えど厳しいものになることは自明の理である。
(楽しみだなぁ……)
訂正。この男は何も考えていなかった。自分の欲望に従ってアイリとグレイにこの依頼を見せた後一行は即出発することになった。
こうして一行は【アライブ迷宮】の入り口にたどり着き各々の感想を口にする
「ここが……【アライブ迷宮】……」
「思ったよりも大きいね」
(地下にあるタイプのダンジョンか……何かこんなゲームやったことがあるような……)
【アライブ迷宮】の入り口は石造りの大きなものとなっており、その入り口には依頼者と思しき老人がいた。
「おぉ……よくぞ来てくださいました……ようこそ【アライブ迷宮】へ……」
「ここがあの生きているダンジョンですか?」
「そうじゃよ……ただ中身が変わるだけならいいんじゃが、如何せん何故か魔物も現れるから心配でしょうがないんじゃ……」
そういうと老人は更に話を続ける。
「なんでも……この迷宮の最深部に原因があるそうじゃが……誰もたどり着いたことは無いんじゃ……」
「そうなんですか……」
「最深部行ってみたい!」
(俺も行ってみたいな)
こうして話を終えた一行は早速ダンジョンに入り攻略していく事になった。道中この前遭遇した『キラープラント』や毒を持ち、硬い外殻を持ったサソリ型の魔物である『ポイズンスコーピオン』や斬られても分裂してくる通常種のスライムとは異なる体色をした『ブラックスライム』などと遭遇した。
「意外といけますね……これ」
「ちょっとピリピリするけど……普通に食べられるね」
(あっ、確かにこれは……中々の……)
彼らは途中の栄養補給のためにダンジョンで倒した魔物の肉を食うことにした。
結果としてスキルを習得出来たようで3人とも『耐毒耐性』と『柔軟化』、そして血を吸おうとしてきた『ヴァンパイアバット』からは『暗視』を入手した。
「さて……食べ終えたことですし引き続き探索しましょう!」
「おー」
(おー)
先に結論を言えば彼らは迷った。彼らが30階層を突破した辺りから急にダンジョンの配置が複雑なものになったのである。
そして出てくる魔物があからさまに強くなっていたり、魔物と遭遇する頻度が明らかに増えたのである。
例えば全身が硬い鉱石に覆われたカニの『クリスタルクラブ』が集団で群れを成して襲ってきたり(中身は美味だった模様)凄まじい怪力を持った『アームコング』であったり天敵と遭遇すると自爆して仲間を守る習性を持った『ボムスパイダー』等序盤に出てきた魔物とは明らかに違う魔物が出てくるなどして気付いたら一行は迷っていたのだ
そして冒頭に戻る
(最深部は……どこ……ここ……?)
ジンは一旦足を止めて近くの壁に寄り掛かった。
(よっこいしょ……おおおおお!!?)
突然ジンが寄り掛かった壁が崩れ、通路が出てきたのである。なんと運が良いのだろうか……
「ジン様!?……これは!?」
「なんか続いてる?」
(もう……何なんすか……?)
そこはとても真っ暗な空間になっているようで3人は『暗視』を発動して中に入っていった。
暫く進むと下に続く階段が現れた。道中何故か魔物の姿が無くそれがより一層不気味さを醸し出していた。
「この先に何が……」
「……何か嫌な予感……」
(でも行くしかないんだろうなぁ……)
階段を下っていった先には何やら大きな空間に出た。そこはとても広くそして一際大きな石像がジンたちを迎えた。ジンはここで何か思うことがあるようだ。
(やたら広い空間……隠された部屋……あからさまな巨大な石像……あっ)
ゴゴゴゴゴゴゴ……
「――ッ!? 石像が動いて……」
(ボスかよぉおおおおおお!!)
壁と一体化していた石像が突然動き出し、ジンたちは警戒をする。だが
「ふぁ~良く寝たぁ~」
「え?」「……え」(へ?)
石像が大きくあくびをしながら喋った。その口調はどこかのんびりとしていて凡そ敵対するような存在でないことは何となく伝わってくる。
「久しぶりだなぁ~人間が来るのは~もう100年ぶりぐらいかな~?」
「う~ん?……あ~そうか~この感じ、【黒色の武装】の継承者がきたのか~、そうかそうか~」
「……ジン様?これは……一体?」
「何かすごいのんびりだね」
(色々と言いたいことはあるけど、【黒色の武装】がきたって言った……?)
巨人がそう漏らした言葉をジンは聞き逃さなかった。そして一行が巨人の様子を見ていると巨人の方から話しかけてきたのだ。
「ようこそ~オデの工房へ~、えー……ゴホン」
巨人が咳ばらいをして自らの名前を告げる。その名前にジン達は聞き覚えがあった。
「初めまして【黒色の武装】の継承者様、オデは【工房 ヘファイトス】と申します」
「【工房 ヘファイトス】!?あの……伝説の!?」
「アイリが言ってた奴だ……」
(マジかよ……)
巨人から告げられた名は彼らの想像をはるかに上回るものだった。まさか目の前の心優しそうな巨人がかの【工房 ヘファイトス】だとは夢にも思わないことだった。
そしてヘファイストスは告げる、自分はかつて【色付き】の武具を作り終えた後にそして眠りについたことを。そして時が来るその時まで封印されていたが今日この日感じた【黒色の武装】の気配に釣られて100年ぶりに目覚めたという。
「……そういう訳でオデは、目覚めたんだぁ」
「そうだったんですね……そしてジン様が【黒色の武装】の継承者……」
「そうだぁ、間違いない。その鎧はオデが作ったもの。作ったものはオデ、忘れないんだな」
「まぁ、納得したかも……」
(しかもこいつが製作者かよぉおおおお!!!)
アイリとグレイはジンが【黒色の武装】の継承者であることに驚きつつも納得した。
ジンは目の前の巨人がこの鎧の製作者だと知り驚きを隠せない様子
「むぅ~まぁ~言いたいことは山ほどあるけど~一先ず武器を見せて~」
(アッハイ)
ジンはヘファイトスに【黒騎士の武具】の武器を見せた。
「あぁ~やっぱりオデの最高傑作なだけはある~いつ見てもきれいだぁ」
「でもちゃんと手入れして欲しいんだなぁ」
(ワカリマシタ)
それからヘファイトスは武具の手入れを行うのを見ながらジンたちは魔物の肉を調理して食べていた。この間ずっとアイリとグレイの目はキラキラしていた。
「やっぱり、このアイリの目に狂いはありませんでした!!」
「ジンは名実共に英雄……」
(……最初のころを思い出すナー)
ジンはまたしても彼女たちが忠犬に見え始めてきたためまた撫でまくった。心なしかいつもよりとろけ切っていた……




