*13 悪夢の中の激戦
「この度は誠に申し訳ありませんでした!!!」
ギルドに着くなり職員の方がジン達に頭を下げてきた。その内容はジン達が受けた依頼は本来は、ギルドで受けれる任務の中で最高レベルの依頼だったらしい。
それを聞いたジンの感想は
(だろうな!! たしかに何か出てくる魔物がやけに強くて、それこそ最初はアイリちゃんとグレイちゃんでは傷一つ付けられなかったから俺が頑張って何とかできたからいいけど……!)
実際には魔物の肉を合間合間に食べてからアイリとグレイが少しずつ強くなっていって、最終的に倒せるようになれたのが要因である。
そしてギルドの職員から最難関の護衛任務を見事達成できた功績からジン達の昇級が決まったとのこと。
これはギルドの特例措置であり、更にその任務を見事達成して見せたジン達に対する評価も相まってこのような措置がとられることになったとジンは説明された。
「やりましたね!ジン様!!」
「これで、もっと強くなれる?」
現段階でのジン達の級は一番下の【銅級】だが、今回で【金級】まで昇格することになったとのことである。
(異世界無双がとうとう始まったか……うん? つまりここから今日みたいな依頼がこれからバンバンくると? やめてください(心が)死んでしまいます……マジで……)
その後ギルドから昇級手続きを終えて晴れて【金級】まで昇格したジン達は、更にギルドからのお詫びとして1000ポイントを貰った。今の手持ちは全部合わせて9000に到達した。
だけど今後の自分たちの生活を考えると全部一気に払うことは出来ないと判断し、一先ず8000ポイントを支払うことにした。
(【契約】の項目の数値が(8000/9000)になっている。ヨシ!)
「ジン様、一先ず帰りますか?」
「もう……私……眠い……」
(……そうするかな)
それからジンは眠たげにしているグレイを背負って帰宅することにした。ジンが背中に背負った瞬間から既に寝息が聞こえる。相当疲れていたようだ。
「スー……スー……」
(……鎧が邪魔じゃないかな?)
「では、行きましょうジン様」
屋敷に戻った一行は一先ずグレイを寝室に寝かせてから、夕飯を軽く済ませて眠ることにした。
(今日はいい夢を見れそうだ……)
◆◆◆
――翌朝
「おはようございます!ジン様!……どうなさいました!?」
「……」
食卓に料理を並べていたアイリが起きてきたジンの表情を見ると驚愕した。何せ冑を被っていないことで露になったその表情はザ寝不足と言わんばかりの疲れ果てた表情だったからだ。
「そ、そうですか……?アイリの気の所為でしたか……」
(誰だよいい夢見れそうとか言ったやつ……俺 だ よ !!……全く最悪な夢を見た……やたら現実味があって割と不愉快だった。昨日フラグ立てなきゃ良かったか……お蔭であまり眠れなかった)
――ジンが見た悪夢の内容とはこれだ
「貴様が此度の【黒色の武装】の継承者か」
(何だお前)
突然謎の空間にほっぽり出されたかと思うと目の前に異形の骸骨を被った存在がいた。ジンは訳が分からずただポカーンとしていた。
「先代の【黒色の武装】の使い手には苦労させられた。故に……」
黒色の……何? 目の前の異形がそう言ったかと思うと
「あの力を付けられる前に先に貴様を殺すことにした」
(は?)
唐突にジンを殺す意思を示した。ジンは一から十まで全て理解できずただただ困惑していた。
「悪く思うな、貴様の存在が『魔王様』の脅威になり得るからな」
(魔王?……どこかで聞き覚えが……)
そう考える暇も無く目の前の奴が武器を構えた。ジンは半ばやけくそ気味に武器を構えた。
「死んでもらう」
(上等じゃああああ!!!俺は今!!疲れてんだよ!!!)
ジンは開幕から《超感覚》と《沈黙の霧》を発動して体勢を一瞬で整えた。《超感覚》が齎した力で思考は澄み渡り、そしてジンの手から放たれた霧――《沈黙の霧》で魔法を封じた
「ッ!?なぜ魔法が使えん!?」
(オラァ!!)
《沈黙の霧》の効果が通じたらしく、異形が心底困惑していた。それを見たジンは《黒騎士の武具》から黒い大剣を取り出して袈裟肩に斬った。
「クッ!!?その力……やはり!!」
ジンは追撃を加えるように《黒き剣》を発動してさらに斬り掛った。
ズバババババッ!!!
《黒き剣》により幾つもの黒い閃光が異形を襲った。それらを防ごうと武器を構えたが
「ぐっ…ウォオオオオオオ!!!」
防ぐ暇を無く体中が斬られ、異形の右手が斬り飛ばされたのを見てダメ押しに《回復阻害》を発動した。
「くそっ!?なぜ腕が!?おのれええええぇええ!!!」
冷静さを失い闇雲に襲い掛かってきた異形を見ながらジンは横薙ぎの一閃を繰り出した。
そして体勢を崩した異形を見計らって《展開》で予め作っておいた黒騎士の武具と今まで作ってきた骨のナイフや依頼の道中で手に入れた武器を発射していった。
異形の体に次々と武器が突き刺さる。
「ガハァアアアアア!!」
……既に異形からは最初の余裕が消えていた。既に全身に武具が刺さっている上に《回復阻害》によりつけられた傷が治らなくなっていた。
それからジンは止めを刺すように《縮地》で奴の懐に近づき――黒い閃光が大剣を迸った。
「なっ!?」
(《黒き剣》)
黒い閃光を伴った斬撃が異形の両腕と首を襲った。首がはじけ飛び、地面に転がり落ちた。
「ま……まさか……これほど……とは……魔王……様に……報告……せねば……」
(魔王……思い出した!屋敷の裏にいた奴らも『魔王』って言ってたな!)
ジンが魔王という存在について思い出している最中に消えた。
(なんだったんだろうか……)
そして夢から醒めたらもう朝になっていてジンは疲れが取れないままになっていたのだ。結果としてジンは一睡することもできず、ただただあの異形に苛ついていた。
(あの野郎……!覚えてけよ!!)
◆◆◆
「ガハァ!!!!!」
とある場所にてジンを殺そうとした異形の存在が血を吐きながら悶え苦しんでいた。その体に夢でつけられた傷はないものの魔法の反動だろうか……かなり弱っていた
「くっ……まさか……あれ程とは……!」
静かに呼吸を整えながらその異形の存在……他人の精神に干渉することが出来る悪魔『ユーム』は夢での戦いを振り返っていた
魔王を崇拝し、定期的に魔力を捧げていた奴らが消えたことにユームは興味を抱き、魔法陣の周辺に残った魔力を確かめていたら、まさかの【黒色の武装】の魔力が残っていたのだ
【黒色の武装】の継承者たちはかつて幾度となく魔王の覇道を邪魔する存在として他の【色付き】共と戦ってきたがいずれも魔王の封印だけで倒せてはいなかったのだ……
数ある【色付き】の中で【黒色の武装】の戦闘能力は際立っていた。というのも魔王に重傷を負わせたのは他ならぬ【黒色の武装】の継承者たちだったのだ。
故にユームは、まだ力が弱いうちに【黒色の武装】を倒すことを決め、魔力を辿り夢に侵入したのだ。……相手が想像以上の力を持っていたことを知らずに
「奴のあの力……!あの武器……それは良い!まだ想定の範囲内だ。だが!」
「奴が展開したあの霧はなんだ!?これまでの【黒色の武装】の継承者はあんなスキルを持っていなかった筈だ!!」
「夢の中だからまだ良かった……もし、奴と直接相まみえることになったら……!」
ユームは震えながら改めて己の体に異常が無いか確かめながら魔王に報告しに行った。
――しかし彼が生きて戻ることは無かったという
一方そのころジンは
「ジン様、本当に大丈夫ですか?」
「ジン……大丈夫?」
(大丈夫じゃないです……あの野郎……マジで許さん……)
未だユームに対して殺意を漲らせていた。その様子を見てギルドにいた連中は、震えあがっていた。




