*1 沈黙の黒騎士の始まり
初めまして@novelです。
ふと創作意欲が湧いてきたので書いてみました
文章に誤りや矛盾があるかもしれませんがよろしくお願いします
それではどうぞ
「きゃああああああぁ!!!」
女性の悲鳴が村中に響き渡る
「おらぁ!!てめえら!!!ありったけを奪え!!」
「「「「ヒャッハーッ!!!」」」」
ある町はずれの村に突如平穏とは無縁な出来事が起こった。村に盗賊団が襲撃してきたのだ。
ある限りを奪い取らんとする賊が次々と村人たちを捕縛していく中一人の少女が立ち向かう。
「させません!」
剣を持ち、盗賊団を次々と無力化していくが、盗賊団の一人が少女の前にニヤニヤとしながら立ちふさがり後方に指を指した。
「はい、ざぁ~んねぇ~ん! 大人しく剣を下ろしな?」
「クッ……! この……ッ!!」
盗賊団の頭領がそう告げ、少女が声のする方を見るとそこには捕縛された村人がおり、少しでも歯向かえば彼らの命は無いことを悟り降伏するのだった
「良いかぁあー!てめぇえらぁあああ!!今からこの村は俺たちが占領した!!」
盗賊団の頭領と思わしき男性が声高らかに宣言する
「今から俺たちの言うものを隠さずにもってこぉーい!!」
村の制圧が終わり、盗賊団はこれから好き勝手しようとしていたのだった
「まず!酒!食いもん!!そして、金ぇ!!それに、女ァ!!」
頭領は機嫌よく村人たちに到底受けいられないものを要求していく。それに対し村人の長らしき老人は当然反論する。
「お、お待ちください、今の時期この村には作物も少なく、私たちも貧困に喘いでいるのです!」
「あぁん!?」
頭領は老人の頭を掴み、殴りつけた。
バキィ!!
「グッ!?」
「村長!」
村長が地面に倒れる。その頬には痣ができており、かなりの力で殴られたことは容易に想像できた。それに対して村人は悲鳴を上げる。
そして男が村長に近づくと、
「なんていった? もう一度言ってみろ」
男はそう言って村長の頭を踏みつける。村長はそれに負けず訴えかける。
「で、ですからこの村には……」
「黙れぇ!」
そう言ってさらに踏みつける。
何度も何度も何度も、そうしているうちに老人は意識を失った。
「お頭!食料と酒、ありましたぜ!!」
「こっちには金も!!」
どうやら盗賊団の下っ端が村民たちの家に押し入り物色していたようだ。
「ほらやっぱりあるじゃねえか!!大ウソツキがぁ!!!」
男は村長を蹴り飛ばし、更に近くにいた青年も同様に蹴り飛ばす。
「よし!てめぇらまずは宴だ!!」
「「「「「「ヒャッハー!!!!!」」」」」」
こうして盗賊団は村の残り少ない備蓄を食い漁り好き勝手しようとするのである。
……しかし彼らは知らないだろう。もうじき彼らの命の灯が残らず消されることを。
「さぁ~て、景気づけに、じゃあお前!!」
「ッ!!」
男が示したのはこの村一番の美しさで、村一番の強さを誇る少女だった。先程剣を振るった少女の手には剣は無く、手を後ろ手に縛られていた。そして彼らがこれから行うことは彼らの下卑た表情が物語っており、その末路を想像した少女の顔色が悪くなる。
「い、嫌!!離して!!!」
「うるせぇ!」
男は少女の頬を叩き、少女の髪を乱暴に掴み無理やり引っ張りだした。引きずられていく少女の目には涙が見えた。
(だ、誰か)
少女は激しく抵抗しようとするも、少女の目線の先には自分と同じように拘束された村人たちがおり、今自分が抵抗したら彼らの命は危うくなることを悟り、どうしようも無い無力感に苛まれた。少女は心の中で助けを求め始めた。
(誰か…)
「さぁ~お楽しみの時間だ!!」
どうしようもない状況下において少女は諦めることなくせめてもの抵抗で男を睨むが、少女の衣服に手がかかると共に、少女の顔は青ざめ、自分が辿ることになる末路が目の前に迫っていることを嫌でも認識させられた。
「誰か助けてぇえええええ!!」
少女は大きくそう叫ぶ。しかしその声は虚しくこだまするばかりであった。
「助けなんてこねぇよ」
男はそう吐き捨てて事を致そうとするが、ふと気づく
「……なんだ?」
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていたのだ。さっきまで部下たちが酒を飲んで歌っていたはずだが、不気味なほどに静寂に包まれていた。男はふと疑問に思い、立ち上がる。
「お、お頭大変です!!」
「なんだ!」
部下の一人が慌てた表情で頭領に状況を報告する
「ほ、他の奴らが殺られました!!」
「は!?(ば、ばかな、奴らは確かに弱いが、それでも数は多い筈だ…なぜ気づかない!?)」
部下からの報告を聞いて少女を突き放し、身支度を整える。相手は何人か、それすらも分からないが、長年の経験に基づいて思案を巡らした。
(あいつらは二十人いたはずだぞ!? あいつらを俺の気づかない内に仕留めるに必要な人数は……一人ということはさすがに考えづらい。かといってこのまま複数を相手取るのは、正直きつい……だが!)
ここで男は縄で縛られた村人たちを見る。彼らを人質として肉壁として扱い、この場を切り抜けようと画策する。そんな視線を感じ取った村人たちは再び顔を青ざめた。そしてその表情を見てにやりと笑った男だった。
「お、おい! お前! 何ボーっとしてんだ! 早く人質を……」
その言葉は続かなかった。なぜなら後ろを振り返るとさっきまでいたはずの部下の1人が死んでいたからだ。
「う、嘘だろ!?音も出さずにあいつを!?」
「落ち着け! おい! おめぇら! 何か見たか!?」
突然死んでいた部下の異常さに気づき、生き残っている部下に尋ねようとするが、
「な、何だ…てめ……グハァアアア!!?」
唐突に目の前で部下の命が散った。部下は袈裟に斬られ、血が飛び散った。辺りに部下の断末魔とただ血なまぐさい鉄の匂いが広がった。そして男は部下を容易く屠ったであろう人物の身なりを見て驚愕した。
「……」
そこにたたずんでいたのは全身を黒で統一した軽装の甲冑を着こんだ騎士であった。
その甲冑からは歴戦の猛者であることを感じさせるような雰囲気さえも感じられる。その姿はあたかも自分の命を奪いにきた死神といっても過言ではないのだろう。
そしてその手には先程部下の命を奪ったであろう血の滴る黒い剣を携え、今にも頭領に襲い掛かろうとしていた。騎士は一切の音を立てず、男を両断しようとした。
「うぉおおおおああああ!!」
ガキィイン!!
頭領は咄嗟に愛用の剣を抜き、騎士の剣を受け止めた。しばらく鍔迫り合いになる。しかし徐々に押されていき男の顔に焦りが見え始める。
「……」
(こ、こいつッ! 只者じゃねぇ!? なんだこの力は!? 押しつぶされそうになる!)
剣を受け止めたは良いもののその力強さに圧倒されるばかりで、男はこのままいけば押し負けると判断し、
「~ッ! 糞がッ! 《疾風》!」
頭領はスキル《疾風》を発動し、騎士の間合いからすぐさま離れる。一瞬にして間合いから離れたが、男の息は上がっていた。
「はぁ……はぁ……(糞が……! 《疾風》を使わされたか…これは不意打ち用なのによ……!)
この頭領は今までこのスキルを駆使し、相手の間合いに一瞬に入り込み切り伏せるという戦い方でこれまで戦い抜いてきたのだ。
しかしこのスキルは相手との間合いを一瞬で詰めたり、間合いを開けることを得意とするが、その移動距離は狭く半径二mの範囲を一瞬にして移動するというスキルであり、これはいわば初見殺しであり、頭領にとってまさに切り札であったのだ。
この《疾風》を下手に披露することは、相手に自分の手の内をばらすことと同意味であり、頭領はこれを避けていたのである。
(どうする……?《疾風》は一度使っちまったら十秒おかなきゃ発動出来ねぇ……)
戦場において十秒何も出来ないとなるとそれは、死んだも同然であり、頭領は考えを巡らす。しかし目の前の騎士はそれを待たずして剣を構え、頭領の命を狙いに来た。剣先は迷いなく脳天に向かっていた。
「……!」
「~ッ! 畜生めが!!」
黒い騎士の剣が振るわれる。頭領は疲れた体に鞭を打ち、必死に迫りくる黒い死から逃れようとした。金属と金属がぶつかり合う音が響く。そして遂に限界が来たのか、男の剣は騎士の剣によって弾かれ、体勢を崩した。
無論それを見過ごすわけもない騎士の刃は、その左腕に吸い込まれていった。
「ぐぁあああああ!!?」
黒い残光を描きながら、騎士の剣が頭領の左腕を切り落とした。その腕からは絶え間なく血が噴き出し、男は苦痛に満ちた表情を浮かべながら、絶叫する。返り血を帯びた黒い兜がその凄惨さを物語っており、村人たちも騎士の卓越した剣技に魅了されていた。
騎士は今も剣についた血を振り払いながら着実に迫っていた。
「あ、ああ……」
一方で男は完全に戦意を喪失していた。
既にこの斬り合いの中で目の前の騎士と自分の戦力差を思い知らされたからだ。自分では勝てない、自分ではどうすることもできない、と漆黒の騎士を前にして後退りしていた。
男は、必死に後ずさりをする。
(こんなはずでは……こんなはずでは……!)
男は自分の思い描いていた理想が現実になることはないという絶望を味わっていた。しかし男は気づいた……いや気づいてしまった。まだ手は残されている、と。
「ヒッ!」
そこにいたのは先程の少女だった。男はすぐさま少女を盾として騎士に告げた。
「おいッ!!動くな!!こいつがどうなってもいいのか!?」
男は少女を捕まえ、騎士にそう告げるが騎士は止まらない。それどころか騎士は剣を構えたまま、男の方に進んでいる。沈黙に包まれているその騎士の言い様の知れない圧に男は僅かに圧倒される。
「お、おいっ!? 聞こえなかったのか?!」
騎士は変わらずこちらに近づいてくる。黒光りする剣の光が男にこれでもかというプレッシャーを与える。男は僅かに少女を盾にしたまま後ずさりする。
「なんだよ…なんなんだよ!!お前は!?」
男の顔が完全に恐怖に染まり、耐え切れず少女を手放し後方の森へと逃げ去っていった。その姿はとても情けなく、先ほどまでの様子とは大違いであった。
一方で騎士も音もなく静かに、しかし迅速に男を追って森の中に入った。それを見た少女は悟る。
(こ、この人どれだけ強いの?!)
そう思うのも無理はなかった。なぜならその騎士の一挙手一投足には無駄が無く、洗練されていたからである。
加えて何よりも異質だと思ったのは、
(なんでこの人の動きから殆ど音が聞こえないの?!)
普通甲冑を着こんだ騎士ならば歩くだけでも金属特有の音がするはずだが、目の前の騎士からはそれを感じ取れなかったのだ。
そのことから分かることはこの騎士が洗練された騎士であるか或いは、魔法、スキルのいずれかであると少女は考えていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
一方で敗走していた男はというと、村はずれの崖にたどり着いていた。その風貌からは、さっきまでの勢いを感じさせないほど落ちぶれており、完全に萎縮しきっていた。
「ここまでくれば……あ、あとは…………あ……れ……?」
男は自分の視界が、地面に落ちていることに気づいた。そして僅か一秒に満たない時間で、自分を見下ろす首のない体が視界に映った。男の首は断頭され、そして死んだのだった。頭部を失った身体の背後には、漆黒の騎士がいた。
「……」
黒騎士は、剣についた血をふき取りその場を後にした。そして村の中心に行き、拘束された村人たちを解放したのだった。
◆◆◆
「あ、ありがとうございます!」
「騎士様!本当にありがとうございます!」
「ありがとう、ありがとう!」
村人たちが口々に礼を述べる。そして村長が黒騎士に対して
「本当にありがとうございました……! 貴方様が来てくださらなかったら皆は……!」
村長が涙ながらにそう告げる。と、ここで先程の少女が黒騎士に近寄った。
「あ、あの……ありがとうございました!」
「……」
黒騎士はそれらに対して何も言わなかった。
「であれば……村全体でおもてなしを……」
そう言おうとした村長であったが黒騎士は村の外へ向かっていったのである。それはまるで村のためを思って施しを受けないという意思の表れであろうと村長はおろか多くの村人は感じ取った。それと同時に騎士の高潔さに胸を打たれた。
「おぉ……! 何という高潔なお方だ……!」
「お待ちを騎士様!」
皆が胸を打たれていた時、先の少女が黒騎士に待ったをかけたのだった。
「……」
黒騎士の足が止まった。
「あの……っ!」
「アイリ?! 何を……?!」
少女、アイリが何かを告げようとする。
「私を、私を旅のお供にしてくださいッ!!」
「アイリ……!それは!!」
それは黒騎士の旅への同行の願い届であった。しかしそれに対して村長は、
「アイリ、なぜだ?」
「おじいちゃん…言ったでしょ?私はいつか冒険の旅に出るって!」
「しかし……アイリ……」
「私は……あの人についていきたいの! あの人なら…って!」
アイリは小さい時から冒険の旅に出たがっていた。アイリはそのために自身を鍛えており、村の間では周知の事実であったのだ。
「ううむ……しかしアイリよ……」
「私はもう十五歳よ!確かにさっきは無様に負けたけども……!」
「……アイリ」
「お願いよ……おじいちゃん……」
村長と村人は悩みに悩んだ末
「……分かった、お前の旅立ちを許可しよう……」
「本当ッ……!?「ただし」!」
「必ず帰ってくること、いいな?」
「……!うん!!」
「……」
黒騎士は後姿のまま立っていた。その姿はまるで静かに歓迎しているようだった。村長は黒騎士に、
「すみませぬ……騎士様、迷惑でしたでしょうか……?」
と問うが黒騎士はというと
「……」
変わらず無言であったもののどこか気にしていないようであった。村長はこれを肯定と捉え
「孫を…アイリをよろしくお願いします……」
「……」
黒騎士は終始無言であったが、その姿はとても頼もしかった。
◆◆◆
「おじいちゃん!みんな!行ってくるね!!」
「いってらっしゃーい!気を付けてね!!」
「アイリー!!元気でなー!!!」
「……」
「騎士様!これからよろしくお願いします!!」
「……」
騎士は変わらず無言だった、だがそれでもアイリの表情は曇らない、その目に大きな希望を宿してこれからの旅路に望もうとしているのだ。
◆◆◆
ここで彼の心をのぞいてみよう
(やべぇえええええ!!!めっちゃ可愛い子が俺を慕ってくるんですけどぉおおおおお!?)
……どうやら彼の中身は割と残念のようだ。
主人公の付けている甲冑……分かりやすいイメージだとダー○ソ○ルの竜血騎士。細かい点で言えば主人公が身に着けているのは完全に真っ黒という違いがあります。
もしよろしければいいねと評価をお願いします!