79話 魔物大行軍(スタンピード)。
『【魔物大行軍】だ。それも死霊系の。つまり、このすぐ近くまで……【死霊魔王】が来ている』
細身の黒い全身鎧をまとった長身の女性冒険者ニーベリージュが数百体ぶんの死霊系魔物の残骸とともにもたらした凶報。
それは一瞬にして冒険者ギルド内を静まり返らせ、そして、湧き立たせた。
「すぐにギルドマスターに連絡! この時間なら衛兵局との連絡会議中のはずです! 急げばあわせて衛兵局に連絡できる一石二鳥! すぐに使いを!」
「ただいまより、通常クエストをいったんすべて停止します! ギルドマスターおよび王都にある冒険者本部の許可を得次第、最優先最重要クエストとして【魔物大行軍】への対応を設定します! 【リライゼン】滞在中の冒険者は必ずご参加ください! もちろん事後申請でもかまいません! ただし、先日の【獣魔王】のときと同様に、一定期間に一定以上の戦果が認められない場合は、冒険者資格を無期限停止しますので、そのつもりで!」
ギルド職員はおのれの職務を果たさんと、てきぱきと行動し始める。
「う、嘘だろ……!? 立て続けにまた【魔物大行軍】……!? ま、魔王のやつら、本格的に侵攻でも開始しやがったってのか……!?」
「ちくしょう……! せっかく前の【獣魔王】の【魔物大行軍】からは、どうにか生き残ったってのによ……!」
「よっし! またとない名を上げるチャンスだ……! 前の【魔物大行軍】は【リライゼン】に来た時には終わってたからな! おい、お前ら! すぐに装備と道具の見直しだ! やるぞ!」
「おう! オレたちの伝説はここから始まるってなぁ!」
冒険者の反応は二分していた。慄き、恐れ、うろたえるのはベテラン勢。
対して僕がいうのもなんだけど、まだ経験の浅そうな年若い冒険者は血気盛んといった様子でやる気をみなぎらせていた。
「ちくしょう……! ええい! こうなったらヤケだ! これからもこの【リライゼン】で美味い酒を飲むために、クソったれ死霊系どもに目にもの見せてやる……!」
だがやがて自らを奮い立たせ、ベテラン勢も立ち上がる。迫りくる魔物を倒し、街と人々を助け、自らが生き残るために。
まさに冒険者という職業を選びとった人間のすべてがそこにあらわれていた。
『……どうやら信じてくれたようだな。ならば、ここにはもう用はない。私は疾くガルデラ山へ、戦場へ戻るとしよう。ではな、フェア。おそらくもう会うこともあるまいが、どうかこれからも息災で』
「え……!? ニ、ニーベリージュさん……!?」
ガシャ。
独特の金属音を響かせて、黒い全身鎧に身をつつんだニーべリージュがフェアさんに背を向ける。
『……なにか用か? 少年』
「はじめまして。僕はノエル・レイス。【闇】属性で暗殺者。突然ごめん。でも、いまいわないともうまにあわない気がしたからさ。単刀直入にいうね。ニーベリージュ。あなたに僕のパーティー【輝く月】に入ってほしい」
濃厚な死の気配を漂わせる黒い全身鎧の冒険者。その前に僕はしっかと立ちはだかった。
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※他のギルド職員や冒険者もちゃんとやるひとたちなんですよ、という話でした。そして、ついにノエルがニーベリージュと相対です。
次回、「だれもとなりに立てはしない」章タイトル回収です。





