70話 勧誘。
「え……? そ、それはうれしい……けど、でも、あたし……」
一歩まちがえば大災害にもなりかねなかった【超大暴食黒粘体】の事件を未然に防いだ功績で、冒険者ギルドが用意した高級食事処の最高級個室での席。
僕が予想していたとおり、ディシーは【輝く月】への勧誘にすぐに「うん」とうなずくことはなかった。
それはたぶん、すでに一度冒険者ギルドで僕たちじゃなく、あの【最高に自由】を選んでしまったことに対する引け目のようなもの。
……いや、下手すればもう僕たちを【選べない】くらいに考えているのかもしれない。きっと、それくらいにまっすぐな女の子だから。
でも、それは困る。だから、ここからは僕とロココで全力をつくさなければならない。
このロココと同じくらいに強い意志の輝きを秘めた緑の宝石のような瞳を持った女の子に【輝く月】に入ってもらうために。
「突然ごめんね? でも、その前に聞いてくれるかな? 僕とロココがこの【輝く月】を結成する前の話について」
「え……。いい、けど……?」
「ありがとう。ディシー。僕はね、以前あの【光】の勇者ブレンが率いる、そう。勇者パーティーにいたんだ」
「え!? 【光】の勇者って、あの……この王国に伝わる伝説の【光】の聖剣に選ばれたっていう……!? そ、そのパーティーにノエルが……!? や、【闇】属性なのに……!?」
そして、驚くディシーに僕は語った。
自分が勇者パーティーにおいて【光】属性の真の仲間が見つかるまでのただの数合わせでしかなく、いつでも切れる都合のいい駒でしかなかったこと。欠片すらも仲間とは思われていなかったことを。
「そんな……! ひどい……! そんな心の腐ったやつ、勇者でもなんでもないよ……!」
「怒ってくれて、ありがとう。ディシー。でもね。僕はまだいいほうだった。ロココなんて――」
両こぶしを固く握り、激しい憤りを見せるディシーに対し、ロココのうなずきを目で確認してから、その置かれていた境遇を話す。
あの【妖樹の森】で僕が見た、【猟友会】に犬のようにあつかわれる様子を。
「ロココちゃん! つらかったね……! ごめんね……! まさか、そんなひどいめに遭ってる子がいるなんて……! ロココちゃんに比べたら、今回あたしが遭っためなんて、ぜんぜん……!」
「ディシー。ちょっと、苦しい……」
ぎゅうっと力いっぱいにロココを抱きしめながら、緑色の瞳からポロポロと涙をこぼすディシー。
「いや、同じだよ。ディシー」
「え……?」
そんなディシーに対し、僕はゆっくりと首を振った。
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※すみません。長くなるのでここで切ります。次で事件の締めです。
次回、「人々の希望に」





