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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第1部 輝く月】3章 あたしの救世主さま。

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64話 冒険者になったのは。

「あ、あたしに……まかせてもらえないかな……!」


「え?」


 黒色粘体(ブラックスライム)たちの見境のない捕食で地獄のような光景となった倉庫の中。僕を見上げるディシーが震える声で続ける。


「ロ、ロココちゃんに聞いたの! あたしにかけられた【封魔(シール)】! 時間があれば、ロココちゃんの力で解除できるって! だから!」


「ノエル。解毒と仕組みは同じだから、時間があればできると、思う」


 ……たしかに広域殲滅を得意とする黒魔女(ダークウィッチ)の強力な魔法なら、相性の悪い僕やロココよりもよっぽど黒色粘体(ブラックスライム)に対して効果的な攻撃ができると思う。時間稼ぎくらいならなんとかなるくらいには。


 でも。


「……いいの? ディシー。あのひとたちはディシーをだまして、その心につけこんで、ひどいことをしようとしたのに。そんなあのひとたちのために、ディシーは体を張れるの?」


 僕のその問いに、ディシーは一度深く深くうつむいてから、やがて意を決したようにキッとまっすぐに僕の顔を見て、はっきりとこういった。


「うん! だって、おばあちゃんがいなくなって、あたしが旅に出たのは、冒険者になったのは……ひとの役に立ちたかったからだから! もちろん、あたしを受け入れてくれる場所が欲しかったのは本当だけど……でも! それ以上に、ただひきこもってばかりいるんじゃなくて! あたしの力でだれかを助けたかったからだから……! だから、いくらひどいひとたちでも、このまま見殺しになんてできないよ!」


 緑色の宝石のようなとても力強い瞳が僕を見つめていた。


 それは、あの夜のロココの青い月のような瞳を思わせるような自らの強い意志に満ちた、僕にとってとてもまぶしい輝きで――


「ディ、ディシーちゃああぁん……!」


 ――いつのまにかすぐ近くまで這ってきていた、まだ生きていたらしい【最高に自由(マックスフリー)】のリーダーの男が汗と涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、感極まったように歓喜の声を上げる。


 その声を聞いて、ディシーはキッとリーダーの男をにらみつけた。


「うるさい! 気安く呼ぶな! このえっちでスケベでクズで甲斐性なしでぺらっぺらの最低男! ぜんぜん許してなんてないんだから! あたしをだまそうとしたことや、ルアさんたちみたいな女のひとにいままでひどいことをした罪は、絶対に償ってもらうんだからねっ!」


 そのディシーの剣幕にリーダーの男を初めとする【はき違えた自由(ノーアウトフリー)】の男たちが這ったままで深く深くうなだれた。


 その中毒性から王国で禁止されている魔薬の密売に使用。監禁に人身売買まがいの所業。ほかにも多数の余罪がありそうだ。


 捕まったら、おそらく極刑はまぬがれないだろう。


 でも、それとは関係なく。いまは。


「わかった。ディシー、君にまかせるよ。ロココ、ディシーをお願い」


「うん、わかった。ノエル」


「それから、そのための時間は僕が稼ぐよ」


『ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!』


 散らばった数多の粘体(スライム)。そしてゲスリーを初めとする【はき違えた自由(ノーアウトフリー)】の半数あまりを吸収し、いまやすっかりともとの威容をとり戻した【超大(ヒュージ)黒色粘体(ブラックスライム)】――いや【超大(ヒュージ)暴食黒粘体(グラトニースライム)】が咆哮にも似た響きとともに、身を震わせた。


 僕は右手に黒刀を、そして左手にさっき拾っておいた、すでにあの暴食(グラトニー)に飲みこまれてしまったらしい僕が倒した暗殺者の男の使っていた緑刀をかまえる。


「だからさ、期待してるよ? ディシーの見せてくれる黒魔女(ダークウィッチ)のとっておきの魔法」


「うん! まかせて! ノエル! あ、でもひとつ訂正するね?」


 分の悪い戦いにのぞむ自分を奮い立たせるために少しだけ軽口をたたいた僕に、ディシーが両こぶしを胸の前で握ってグッとうなずいてから、小首を傾げた。


「あたしは黒魔女(ダークウィッチ)じゃなくて――その最上位クラスの【黒元の精霊魔女(ダークエレメンテス)】だよ? だからノエル! あんなすっごく大きいだけの粘体(スライム)なんて、あたしの魔法でばっちりやっつけてあげるんだから!」


 ――まるでなんでもないことのようにディシーはそう僕に言ってのけた。

お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価などいただきました方、深く感謝申し上げます。 


ブクマまだの方、更新してブクマ、評価が増えることが作者の唯一の燃料です。それがないと動けなくなります。どうかよろしくお願いいたします。


そのお礼として、作者は精いっぱい更新をがんばっていきます。


あたたかい感想もお待ちしています。



※次回、ノエルの奮闘です。

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