63話 逃げられない。
※この話の内容にあわせて55話のゲスリーの台詞を初稿より一部追加しました。ご了承ください。
「全員! 死にたくなかったら、いますぐに折れた手足で這ってでも入口へ逃げろ!」
「「「ひっ!? ひぃぃぃっ!?」」」
『『『ピィィィィィッ!』』』
完全に見境のない暴食者と化した麻薬中毒の黒色粘体たちがくり広げる捕食で地獄のような光景となった倉庫の中。
犯罪組織【はき違えた自由】のリーダーにして【闇】属性の魔物使いゲスリーが自らの下僕たちに飲みこまれる瞬間、僕は思わず叫んでいた。
いまや半数ほどまでに数を減らした【はき違えた自由】の男たちがほうほうのていで脇目も振らずに、汗と涙と鼻水を垂らしながら入口へ向かって這いずりだす。
同時に僕自身もロココたちの待つ後方へと向かって大きく跳躍した。その着地までのわずかなあいだにも、必死に考えをめぐらせる。
……どうする? どうすればいい? 逃げるか?
いや、この倉庫の中にもまだ魔薬中毒の【はき違えた自由】の生き残りの男たちが数十人。
それも僕とロココで手足を折ってロクに動けないようなありさまで、もし放置すれば食われるのは時間の問題だ。
そうすれば、あの黒色粘体】が【超大】以上の化け物になるのは確実……!
……それに、ゲスリーはいっていた。魔薬漬けにした数百人の女、と。そのひとたちはいま、あのディシーをだましたルアとかいう女性みたいにこの【リライゼン】の街の中にいるんじゃないのか?
それもたぶん娼館といったお店のある裏町を初めとして、散らばってあちこちに。
なら、もしこの魔薬漬けになった粘体たちがそのひとたちの魔薬成分を求めてこの倉庫の外へと出たなら……!?
『ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!』
脳裏に浮かぶのは、超大すらもはるかに超え、際限なく膨れ上がった暴食者と化した粘体がこの【リライゼン】の街そのものすらも飲みこまんとする姿。
建物も、ひとも。フェアさんも、サーシィさんやリスティさん、ロココに服をくれたお姉さんたちも――。
……だめだ! 逃げられない! いま、この場でどうにかしないと! 最低でも時間稼ぎがいる! この街中で起きた異常な魔力反応を察知して、冒険者や衛兵の応援が来てくれるまでの! でも、どうやって――
「あ、あのっ!」
――いつのまにかロココたちのすぐそばに着地していた僕を思考の渦から引き戻したのは、必死に腕を引き、呼びかけるディシーの声だった。
震える声でディシーは続ける。
「あ、あたしに……まかせてもらえないかな……! ノエル……!」
僕を見上げるその緑色の瞳には、はっきりとした強い意志の光が宿っていた。
……それは、あの夜僕がロココに見た、あの【光】の勇者よりもまぶしい輝きと同じ光。
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※次回、戦いに転機が。





