61話 異変。
たくさんの魔力照明でまぶしいくらいに照らされた犯罪組織【はき違えた自由】の本拠地の倉庫の中。
『『『ピィィィィィッ!?』』』
僕が爆発させた50人分の魔力の前に結合を維持できず、ふたたびバラバラになった100体以上の黒色粘体たちが倉庫の中のあちこちへと雨となって降りそそいでいく。
……よし!
「さあ! これで切り札も破った! ゲスリー! 今度こそあなたは終わりだ! もうおとなしくしなよ!」
床の上に着地すると同時、鞘を失った抜き身の黒刀を僕は二度めの降伏勧告とともにゲスリーへとまっすぐに突きつける。
だが、ゲスリーはその蛙魔物のような顔をニイイッと醜悪にゆがませるだけだった。
「ゲハハハハハァッ! 破ったぁ? お前こそいったいなんのことをいっている!」
……え?
『ピィッ!』 『ピピィッ!』 『ピィッ! ピィッ!』
ゲスリーに問い返す前に、その異変にはすぐに気づいた。
バラバラになった黒色粘体たちがふたたびいっせいに結びつき始めたのだ。それも近くの個体だけではなく、遠く離れた個体まで地面を這って。
あ、ありえない……!? 確かに粘体系の魔物は近くの個体を吸収して際限なく大きくなる性質を持つ……!
でも、一度バラバラにされて、あれだけ遠くに離れた個体同士が結びつくなんて、絶対にありえない……!
もし粘体がそんな性質を持っているなら、この世界は【巨大】や【超大】級の粘体であふれかえってしまっているはずだ……!
じゃあ、じゃあなんで……!?
そのとき。僕の脳裏に不意にゲスリーの言葉がよみがえった。
『さあ! 俺の可愛い下僕たちよ! 混ざれ! そして、溶かせぇ!』
……溶かす? なにを? 粘体たちの体内に最初からなにか入っていた? なにが? 個体? 液体――!?
液体。その答えにたどり着いたとき、僕は思わず叫んでいた。
「まさか!? まさか、魔薬!?」
「ゲハハハハハァッ! いまごろ気づいたかぁ! そのとおりよぉ! この俺の可愛い下僕たちはな! 【移動する保管庫】でもあったのだ! しょせん人間などクズ! 到底信用できんからなぁ! 大事な商売道具、こうして下僕たちの体内に入れて、いつでも持ちだせるようにしてあったのだぁ!」
……聞いたことがあった。犯罪組織や貴族の表ざたにできない裏の財産。
そういったものを入れる【移動する保管庫】として粘体が重宝されることがあると。その中でも中身の見えにくい黒色粘体が特に。
そして、そのためだけにゲスリーのような魔物使いを雇い入れることがあると……!
「そして! ほんの思いつきだったがなぁ! 見ろぉ! すっかりと魔薬漬けになった俺の可愛い下僕たちを! 失った体内の魔薬成分を求めて結びつくさまを! ゲハハハハハァッ! 想像以上の成果だぁ! 見ろ! これで俺の下僕たちは無敵に近い再生力を手に入れたのだぁ!」
……確かに驚くべき成果だった。そして、まずい……!
あのペースで結合すると、またすぐにさっきのような【超大】級の巨体に戻ってしまう。さっきの僕の一撃で完全に消滅した個体もあるけど、それでもいまだ十分な脅威となる数がそろっている。
そもそも僕やロココの戦闘スタイルとは粘体は相性が悪すぎる。
こういう魔物は、僕やロココのような点の攻撃じゃなくて、もっと広域を消滅させることのできる魔法使いのような――
「ぎゃあああああっ!?」
「や、やめろ!?」
「ゲ、ゲスリーさん!? た、助けっ!?」
『『『ピィィィィィッ!』』』
――さらなる異変が僕の思考をいやおうなしに中断する。
黒色粘体 たちの群れにいままさに飲みこまれようとする【はき違えた自由】の男たちの叫び声によって。
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