60話 超大(ヒュージ)。
一度目を閉じ、頭の中に軌跡を描く。
「うおおおおおっ!」
もう一度目を開けると、僕は魔力照明でまぶしいくらいに照らされた倉庫の外周へと向けて一心に走りだした。
「あ、あ……! ど、どこまで大きくなるの……!? も、もうこの倉庫に入りきらないよ……!?」
「おお……! おおお……! なんと立派で巨大な、いや超大な姿……! すばらしいぞ! 下僕たちよ! これならばこのゲスリーさまを邪魔するものを必ずやひねりつぶすことができる……!」
ディシーの上げる驚がくと恐怖の声と、ゲスリーの上げる歓喜の声を耳に拾いながら、僕は駆ける。
手には鞘に納めたままの黒刀。それを突進しながら外周に這いつくばる犯罪組織【はき違えた自由】の男たちの腕や足へ向かって――
「がぁぁっ!? ぐべっ!? ごぎゃっ!? げううっ!? うががぁっ!?」
――地を這うような軌道の斬撃で次々に部位破壊いていく。
「ひ、ひぃぃっ!?」
その途中で拡声魔力器を手に持った男にぶちあたった。
この男は、その司会進行でディシーを苦しめ、唯一の家族のおばあさんとの思い出さえも土足で踏みにじった男。
……なら、あなたの場合はここだね!
「ぶぐべぐがばっ!?」
真下から跳ね上げた斬撃で僕は男の顎を思いきり割り砕いた。
「がっ!? ぐっ!? ごっ!? べっ!? ぶっ!? げっ!? ばっ!?」
そしてそれをくり返し、僕は外周をまわる楕円の軌跡を描きながら【はき違えた自由】の男たちの部位破壊をすべて終え、50人分の魔力をその鞘に蓄える。
ロココに呪紋で片足を、僕に鞘でもう一本腕や足を折られていまや阿鼻叫喚といったありさまだけど、この男たちはそれだけの罪を犯してきたんだ。正直一片たりとも同情する気にはなれない。
そして、なんにせよこれで……!
「い、いや……! な、なにあれ……!? お、大きすぎる……! 大きすぎるよぉ……!」
「ゲハハハハハァッ! 最高だ! 最高だぞ! わが下僕たちよ……! やはり所詮クズで役立たずで信用のおけない人間どもなぞに頼ったのがまちがいだったのだ……! お前たちさえいれば、このゲスリーさまの前に敵はない……! さあ、やれ! まずはあの小僧どもをたたき潰せえ!」
『ビィィィィィィィィッ!』
ちょうどそのときだった。この倉庫の天井近くまでふくれあがった超巨体――僕の危惧したとおりの【超大黒色粘体】がゼリー状の巨体を震わせ、特徴ある反響音を奏でるのは。
……こうなってしまった以上は倒すのは至難。ただし、この合体直後なら別だ。いまならまだその肉体も意志も完全には結合しきっていない。だから、ここが勝機!
「ロココ!」
黒刀を抜き放ち、鞘を放り投げながら、僕は叫ぶ。
「穿ち、抉れ! 尽く!」
そして、後ろから高速で迫りくる赤い呪紋とともに全力で魔力を足にこめて飛びだした。
「うおおおおおおおおっ!」
最後の軌跡は直線。外しようもない【超大黒色粘体】の、その鞘と重なる一点へと向けて僕は矢のごとき速さで飛翔する。
『ビィィィィィィィィッ!』
防衛本能からか、そんな僕へと向けて【超大黒色粘体】がおびただしい数の細い触手をくりだしてきた。
……だが、それも想定済み!
「穿ち、抉れ! 尽く!」
僕と同時に飛びだしていたロココの赤い呪紋。それが僕へと襲い来る触手を文字どおり尽く穿ち、抉り、刺し貫いていく。
パキィィィンッ!
そして、僕は黒刀の切っ先で鞘を割り砕き。
「レイス流暗殺術奥義ノ弐! 円環・昇華連鎖爆撃!」
『ビィィィィィィィィィィィィッ!?』
黒刀で貫くと同時、【超大黒色粘体】の内部で一気に蓄えた50人分の魔力を爆発させた。
お読みいただきありがとうございます。すでにブクマ、評価などいただきました方、深く感謝申し上げます。おかげさまでふたたび日刊ランキングに2日連続でのることができました!
新しくお読みの方、ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします!
そのお礼として、作者は精いっぱい更新をがんばっていきますので!
※次回、異変。
ちなみに奥義ノ弐・昇華連鎖爆撃の前は、十三や円環などその時々で変動します。





