58話 格。
【自由】と名のつくパーティーたちのおぞましい正体。
犯罪組織【はき違えた自由】の本拠地の魔力照明でまぶしいくらいに照らされた倉庫の中で、僕はやせぎすの暗殺者の男と斬り結ぶ。
「きひっ! きひひひひっ! こここ、このオレが木っ端だとぉ! こ、この三流、いや五流暗殺者の分際でぇ!」
ディシーを後ろに下がらせたことで初めて攻勢にでた僕。その攻撃をすんでのところで右手の緑刀で受け止めたやせぎすの男が空の左手を僕に伸ばす。いや――
キィィンッ!
――空と思っていた左手から刃が飛び出てきた。どうやら袖の中に隠していたらしい。
「き、きひひひっ! も、もう許さねえ! ほ、ほほ、本気で殺すっ! おお、オレを木っ端だなんて言 いいやがったこと、死んで後悔しやがれっ! この五流野郎! そらそらそらそらそらぁっ!」
キキキキキキキキィンッ!
断続的な金属のぶつかり合う音が辺りに響いた。
僕に木っ端と呼ばれたことがよっぽど腹にすえかねたらしい。男が鬼気迫る表情で鼻息も荒く、間断なく両手の刃で僕に攻撃を仕掛けてくる。
これで決めようとしていることが見え見えの、あとの体力配分を考えない猛攻だ。……だから木っ端だっていってるのに。
「へえ? この二刀での力押しがあなたの本気? なんだ、やっぱり芸がないね? 暗殺者なら、もっと相手の虚を突いたらどうなの?」
「き、きひひひっ! へ、減らず口をたたきやがってぇ! 馬鹿か、お前ぇ! こ、こんな正面戦闘で、芸も暗殺も虚を突くもクソもあるかよぉ!」
「ううん。そうでもないよ? ――【隠形】」
暗殺者の男の猛攻をさらりと受け流す中、頃合いを見て僕は目の前でふっと気配を完全に消した。
「きひっ!?」
それだけで攻守が一瞬で入れ替わる。僕が死角からくりだした黒刀を緑刀でからくも受けきる暗殺者の男。
キキキキキキキキィンッ!
「きひっ!? きひっ!? きひひひひっ!?」
あとはそれのくり返し。男が立ち直る前に一瞬の虚を突き、常に死角から黒刀で攻撃を加え続ける。
ただ、この戦法はそう長くは使えない。こうも立て続けに【隠形】を目の前で使えば、相手はどうしても慣れて効果が薄くなってしまう。
だから、それまでの短期決戦が勝負だ。
「きひぃっ!?」
そして、そのときは訪れた。僕の死角からの攻撃を受け止めきれず、男は左手の仕込み刀を飛ばされる。その勢いのままに突き出した僕の黒刀が男の背中を目がけ――
「きひぃぃっ!」
――ぐるりと体を半回転させた男。僕の黒刀がむなしく空を切る。
「ややや、やっぱりお前が五流だぁっ!」
男が回転の勢いのままに緑刀を突きだす。ピッ、と僕の頬にひとすじ赤い線が走った。
「きひひひぃぃっ!」
ついに本命の緑刀の攻撃をあてた、と僕を毒に染めた暗殺者の男の顔が喜色満面にゆがむ。
「きひ……ひっ……?」
「レイス流暗殺術。影手」
そして、そのまま前のめりに昏倒した。
僕が突きだしたままだった右手の黒刀の柄頭。そこから完全に無防備な後頭部へとくりだされた一撃は、攻防を制し勝利を確信してゆるみきった男の意識をいともたやすく刈りとった。
「わかった? これが、虚を突くってことだよ? 五流以下の木端暗殺者さん?」
口から泡を吹き、ピクピクと体を痙攣させて倒れる男に、もう僕の声は聞こえていないようだった。
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※ちなみに本来は同じ手に刃物や針を隠し持って、後頭部に突き刺す技です。暗殺術なので。
次回、切り札。ノエルが受けた毒についても次回。





