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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第1部 輝く月】3章 あたしの救世主さま。

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56話 あたしの救世主さま。※

※引き続き別視点。今回で最後です。





 信じられなかった。目の前で起きた現実が。


 さっきまでもうだめだと思っていたのに。あたしをいびつな欲望の目で見てせせら笑う最低の男たちにとり囲まれて、絶望しかなかったのに。


「……遅くなってごめん。ディシー。これ」


「あ……」


 なのに、いまあたしを見つめるのはやさしいまなざしで、聞こえるのはいたわるような穏やかな声で。


 そっとあたしの体を隠すように自分のコートをかけてくれる、そんな妄想の中から現れた救世主さまのような男の子がすぐそばであたしを守るようにたたずんでいた。


 ……まだ名前も知らない男の子が。



「な、なんだぁ!? お前はぁ!? いったい、いつ!? どこから入ったぁ!? 表には見張りもいたはずだぞぉ!」


「ひっ!?」


 さっき男の子に吹き飛ばされた、あたしが生理的嫌悪感を覚える蛙魔物のような顔をした男が壁際でガラガラと木箱をくずしながら立ち上がった。


「……大丈夫。安心して、ディシー」


 思わず悲鳴を上げるあたしに、黒いシャツ一枚になった男の子があたしに安心させるような声をくれた。それから、挑戦的に光る黒曜石のような瞳でキッと蛙魔物のような男をまっすぐに見すえる。


「はじめまして。あなたは……ゲスリーだっけ? 僕はノエル。ノエル・レイス。【闇】属性で暗殺者だよ」


 ……ノエル。ノエル・レイス。


 わかってる。いまはまだたくさんの男たちに囲まれた危ない状況のままで、そんな場合じゃないって。


 ……でも、あたしは胸の中にそっと刻みつけた。あたしを助けてくれた救世主さま、その男の子の大切な名前を。


「それで、どこからっていうと、普通に入口だよ? いつからかっていうと、最初っから。具体的にいうと、ディシーが入ってきたのと同時だね」


「……え!?」


「な、なにぃっ!? 最初からだとぉ!?」


「うん。気配を殺して隠れるのは得意なんだ。そう。こんなふうに……ね?」


「うごおおおおおっ! オデの! オデの顔! よぐも! 殺ず! 殺ずぅ!」


「ひっ!?」


 え!? あ、あたしと同時ってどういうこと!? って聞こうとしたあたしを現実は待ってはくれなかった。


 さっき黒い髪の男の子――ノエルに思いっきり顔面を蹴り飛ばされた大男がドスドスと重そうに床を踏みしめながら、こっちへと向かってきていた。


 顔を覆っていた袋がわずかに破けていて、そこからは焼けただれた皮膚がのぞいていた。


「ひっ!? く、来るよ! ど、どうしよう!? ノエ――!?」


 迫る大男の恐怖に思わずあたしがすがろうとしたときには、すでにノエルはそこにいなかった。かわりに。


「レイス流暗殺術。四死点・改」


「うごごぼべっ!? ご、ごろ……ず……ぶぅ……!?」


 鼻、あご、喉、みぞおち、おまけに両足。


 黒髪をなびかせて大男の前に音もなく現れると、急所を素手で一瞬で何か所も突いてから、最後に足を払って転ばして、大男をあっさりと床の上に沈めてしまった。



「こ、このゲスリーさまの直属がこんなにあっさりだとぉ!? ええい! さっきから50人もいて、なにをしているぅ!? お前らぁ! ぼさっとつったってないで、さっさとこのガキをなんとかしろぉ!」


 ノエルのあざやかな手際に見惚れていたあたしは、そのゲスリーの言葉にハッと我に返る。


 ……そうだ。まだぜんぜん状況は好転してないんだ。いくらノエルが強くっても、これだけの人数相手じゃ、とても……!


「ああ。それって、あの壁際のひとたちのことだよね? なら、もう僕たち【輝く月(ルミナス)】が制圧したけど?」


「え!?」


 けど、そのあたしが抱いた焦燥感には意外にもすぐ近くから答えが返ってきた。


 少し目を離したすきに、いつのまにかまたあたしのそばにに戻ってきていたノエルから。


「ロココ」



「うん。ノエル」


「「「な、なんだこの赤いの!? いつのまに!?」」」


「「「あ、足にか、絡みついて……!? や、やめっ!?」」」


 そして、制圧したというその言葉の意味があたしに示される。


 ぶわりと入口の方から濃厚な魔力を含んだ風が巻き起こった。


 さっきまでだれもいなかったはずの場所に、褐色の肌で銀色の髪のとても綺麗な女の子がたたずみ、六枚の白い花びらのようなマントを広げている。


 その露わになった肌からは、倉庫床の上を網の目のように張り巡らされた無数の赤い線が伸びている。それは、ひとりの例外もなく男たちの片足に絡みついていた。


(くび)り、(ねじ)れ。(ことごと)く」


「「「う、うぎぎぃやああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」


 無数の鈍い音ともに、男たちの絶叫が響く。褐色の肌の女の子のつぶやきとともに、男たちの片足はまるで人形の足を折るように、いとも簡単にへし折られた。



「さあ。ゲスリー。これであなたを守るのは――」



「きひひっ! ひっ!」


「え!? きゃあっ!?」


 突然あたしの目の前に気味の悪い笑い声とともに現れたやせぎすの男。すぐそばで甲高い金属音が鳴り響く。


「――あとは、あなたひとりだね。僕と同じ【闇】属性の暗殺者さん?」


 すぐ目の前で守るように斬り結びながら、ノエルはそうつぶやいた。


 ……あたしの救世主さまが。

 お読みいただきありがとうございます。すでにブクマ、評価などいただきました方、深く感謝申し上げます。


 正直に言えば、もう一度なんとか日刊ランキングに戻れたらと思っています。ジャンル別の最下位付近でもいるといないでは雲泥の差であることがこの数日でわかりました。上がれそうなら複数投稿も考えていますので、応援していただける方、ぜひブクマ、評価をよろしくお願いいたします……!



※前書きで書いたとおり、次回から主人公視点に戻ります。3章はここからが本番です。

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