55話 それは、妄想の中の。※
※引き続き別視点でお送りします。
「ゲハハハハハァッ!」
「ぶふー! ぶふー!」
「きひひひひっ!」
「ひぅっ!?」
上半身裸になった50人もの男たちに囲まれたまぶしいくらいに照らされた倉庫の中の中央の巨大ベッドの上。
もしあの子たちを選べていたらとありえない妄想にすがるあたしに、現実はさらなる過酷さを連れてくる。
見ているだけで生理的嫌悪感を覚える蛙魔物のような顔をした男が、頭から袋をかぶった大男と、やせぎすのギョロギョロと異様な目つきをした頬のこけた男を連れて現れたのだ。
『おーっと! さっそく恒例の悲鳴が上がりました! いやー無理もありません! さっきまではまがりなりにも見てくれだけはそこそこの男たちに囲まれて、ある意味逆ハー状態だったわけですが、いま現れたのは目を覆いたくなるようなブ男ぞろい! 悲鳴を上げるのは当然といえましょう! ちなみに我らがリーダー、ゲスリーさんはそんな嫌がる女の子の泣きじゃくり絶望に暮れる顔を見るのが大好きということです! え? 私ですか? いやだなあ? 大好きに決まってるじゃないですかぁ!』
拡声魔力器を片手に陽気に語る男の発言にドッ! と倉庫の中をとり囲む50人もの男たちが湧いた。
「あ、あ……!?」
あたしはといえば、もうありえない妄想にすがる気力すらもなくし、ただじりじりと迫る3人の醜悪な男たちの姿を見つめながら、歯をかちかちと鳴らすしかできることがなかった。
ギシ……。
きしむベッドの上に3人の男たちが乗り、囲まれる。
もう手を伸ばせばあたしに触れられる距離まで接近したとき、すぐ目の前で生理的嫌悪感を覚える蛙魔物のような顔の男が口を開いた。
「怖いかぁ! 女ぁ! なぁに、心配するなぁ! これだけの人数の相手を素面でしたら、確実にぶっ壊れちまうからなぁ? そのためにちゃぁんとコイツを用意してある……!」
男がゴツゴツとささくれ立った手で真っ白な液体が入った瓶のふたを開ける。
途端に、むせかえるような甘ったるいにおいがあたりに立ちこめた。
その特徴は知っていた。その液体の正体に気づいたあたしの顔から一気に血の気が引く。
「ま、まさか……それ、ま、魔薬……!? い、いや……!? そ、そんなの使われたら……!?」
そのあたしの反応に、目の前の男はざらざらとかすれたような声で心底愉しそうに笑いだした。
「ゲハハハハハァ! そうだ、女ぁ! これからのお前の人生は、この真っ白な魔薬に支配されたものになり下がる! この魔薬を服用して狂ったように乱れ! 手に入れるためにおのれのすべてを売り渡し! いままで数百人と魔薬漬けにしてきた女たちと同じように! その元締めである我々の、どんな命令でも従順に受け入れる人形になぁ!」
「い、いや……!? いやぁぁぁぁっ!?」
「ゲハハハハハァ! そうだ! その顔ぉ! その悲鳴だぁ! さあ! この最初のひと口とともに噛みしめろぉ! おのれの愚かさと、みじめさと、その絶望感をなぁぁぁっ!」
「い、いや……!? いやぁぁぁぁっ!? だれか、だれかぁっ!? 助けてぇぇぇぇっ!?」
『……うん。助けるよ。いますぐに』
「……え?」
『レイス流暗殺術。衝牙・三連』
「ゲバァッ!?」
「ぶぐふっ!?」
「きひっ!?」
狂ったように泣きじゃくり首を振るあたしの耳に聞こえてきた『声』。
その直後、一陣の風と立て続けに起きた衝撃音ともに、ベッドの上であたしをとり囲んでいた3人の男が瞬く間にいなくなった。
かわりに、すぐそばにたたずむのは、たったひとり。
「……遅くなってごめん、ディシー」
名前も知らない、あのときの【闇】属性の男の子。
……妄想の中であたしが待ち望んでいた救世主さまだけだった。
お読みいただきありがとうございます。続きを読んでいただける方、ぜひブックマークをお願いします。でないと作者からは読者さまの姿が見えませんので。
また、面白いと思っていただけたら高評価をいただけるとうれしいです。
作者はそれを更新頻度にも影響するくらい、モチベーションにして執筆していますので。
あたたかい感想などもいただけたらとてもうれしいです。
すでにいただいた皆様には感謝してもしきれません。
※お待たせしました。ここから逆襲ターンに入ります。あと1回だけ別視点。3章タイトル発表回になります。





