49話 相性。
ガルデラ山での次なるクエストは、ディシーのいる【最高に自由】が活動しているふもとから少し奥まったところにある泉のすぐそば。
そして対象は、さっき倒した殺人蟻と同じ討伐難易度B級の鳥魔物、風刃鳥。
読んで字のごとく、体に風の刃をまとって上空から高速突進してくる魔物で、かすっただけでも皮膚を突き破って肉がズタズタに引き裂かれ、直撃すれば文字どおり体に風穴を開けられる。しかも複数で行動する極めて危険な魔物。
「穿ち、抉れ」
ただはっきりいって、動きが直線的で見え見えだ。だから、こうなる。
『キュウウウウゥッ!?』
ぶわり、と魔力を含んだ風が巻き起こり、ロココのまとう【六花の白妖精】が六枚の純白の花弁を広げた。
そして、狙いすまして用意された鋭く先端を尖らせたロココの赤い呪紋めがけて風刃鳥たちは自ら高速で突き刺さっていく。
しかも勢いが止められずに突き刺さったままで圧し進み、伸ばした呪紋の半ばほどで止まる始末。
もはや羽をバタバタと無意味にもがかせる以外にできることはなく、もうまもなく絶命するだろう。
……うん。はっきりいって相性がよすぎるね? どう考えてもロココ以外にはできない戦法だし。
あんな強度のある先端が尖った細長い槍なんてどんな職人でもつくれっこないから。そもそも長すぎて支えられないし。
で、僕の場合はこうなる。
『キュウウウウゥッ!』
僕の体目がけて高速で飛来する風刃鳥を僕は避けずに待ち構える。待ち構え、待ち構え、待ち構え――
「【隠形】」
『キュウゥッ!?』
――衝突の間際、一瞬だけ僕の位置を【隠形】で風刃鳥に誤認させる。なにもないところへの体当たりをむなしく終え、完全に動きを止めたところを僕は冷静に黒刀で後ろから貫いた。
さて。こんなものかな。
僕はロココと手分けしてあらかじめ用意しておいた丈夫な布袋に風刃鳥の死体を次々と放りこんでいく。ちなみにロココは手を使わずに呪紋を器用に動かして袋に詰めていた。
さっき別の袋に殺人蟻の残骸をまとめて網状にした呪紋ですくい上げたときも思ったけど、本当にロココの呪紋って便利な能力だ。
普通の方法じゃないっていうけど、解毒や回復までできるっていうし。ひょっとして、できないことってないんじゃないだろうか?
もちろん僕たちが殺人蟻と風刃鳥の死体をわざわざかき集めているのは、あとで冒険者ギルドで討伐のあかしとして見せるため。それと素材確保のためだ。
本当は自分たちで解体したほうがより高い値段で売れるんだけど、正直手間がかりすぎるから、僕はいちいちやらない。
それよりは同じ時間で数を狩ったほうが効率がいいし。まあ金で時間を買ったと思えば、安いものだろう。
『きゃっ!? わわわっ!?』
『おっとっと! 悪い、ディシーちゃん! 一匹そっちにやっちまったよ! 危ねえ危ねえ! 大事な体に怪我させちまうところだった!』
『ふーん。ディシーちゃんって、やっぱり近接戦はあんまり得意じゃなさそうだね? 魔法使いだし、あたりまえかー』
『まあ、そのぶんオレたちがしっかり守れば心配ないって! な?』
『う、うん! ありがとう!』
……さっきからずっと最大に魔力強化した【耳】で聞いてたけど、【最高に自由】側でも、まだこれといっておかしなことは起こってない。
強いていうなら、彼らの討伐対象であるC級魔物の拳闘兎程度に、なかなかバタバタした戦闘を強いられているくらいだけど、まあディシー以外はあきらかに練度低そうだしね。
「ノエル……?」
「ああ、ごめん。ロココ。ちょっといま聞いててさ。いまのところ向こうも心配ないよ。じゃあ僕たちは行こうか。次で最後だし」
とりあえず、いまはこっちに専念して問題なさそうだ。次は少しだけ気をひきしめて挑まないといけないしね。
最後の相手は、今回のクエスト唯一のA級魔物。
……ここできっと、僕とロココの地力とこの【輝く月】の課題が試される。
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