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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第1部 輝く月】2章 初めての仲間と。 

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38話 強いひと。

「ふう。ロココ、何とか無事に登録できたね。あのギルドでよかったよ。受付嬢のフェアさんっていいひとにも会えたし」


「フェア、ちょっと泣いてた。ノエル、もうフェアに頭上がらない?」


「そ、それはいわないでほしいなあ……」


 あの【大妖樹ギガントトレント】の核をめぐる4人組冒険者たちとのひと騒動のあと、無事に換金を終えた僕とロココは、一路次の目的地へ向けて【リライゼン】の街の中を歩いていた。


 その道中の雑談の中でロココが痛いところをついてくる。


 それというのは、あのあとギルドでこんなやりとりがあったからだ。



◇◇◇



「ごめん、お待たせ。じゃあフェアさん、【大妖樹ギガントトレント】の核の売却を……って、フェアさん!?」


 突っかかってきた馬鹿な4人組を含めギルドにいる冒険者たちへの【輝く月(ルミナス)】へ手を出すことへの警告を終えた僕は、次の用事を果たすべく受付に向けてくるりと振り返った。


「ひっぐ……! うっ、うん……! わ、わかった……! ひっぐ、ば、売却だね……!」


「フェア、泣いてる……」


 だが、そこで見たのは受付嬢のフェアさんがぼろぼろと涙をこぼしている姿。ついさっきまであんなに笑顔の絶えなかったひとが。


 でも、考えてみれば無理もない。さっきの僕の暗殺者としての行動は、結果的にこのギルド中を震え上がらせるほどだったのだから。


 常日頃戦いに身を置く冒険者ですら恐怖するほどの暗殺者としての僕の姿。


 それに耐えられるはずがなかったのだ。ただの心優しいギルドの受付嬢であるフェアさんが。


 ……本当にごめんなさい、フェアさん。


 こんないいひとを自分が傷つけたなんて、その衝撃は思った以上に大きかった。


 だから僕は、フェアさんの顔を見ようとはせずに置いていた【大妖樹ギガントトレント】の核を回収しようと受付のカウンターの上へと手を伸ばした。


「ひうっ!?」


 その拍子に互いの指が少しだけ触れた瞬間、フェアさんが甲高い悲鳴を上げる。いまどんな表情をしているか見たくなくて、僕はうつむいたまま口を開いた。


「怖がらせて本当にごめんなさい、フェアさん。僕とロココの登録ありがとうございました。この【大妖樹ギガントトレント】の核の売却はまた日をあらためて来ます。それじゃあ――」


「だ、だめっ!」


「――え?」


 僕がカウンターの上から【大妖樹ギガントトレント】の核を回収しようとつかみかけた瞬間、フェアさんがガバッと両腕で覆い、それを阻止する。


 それから、涙目のままで僕を見上げて震える唇で言葉を紡ぎはじめた。


「さ、さっきのノエルくんが……! こ、怖かったのは本当だよ……! でも、それもノエルくんなんだよね……! だったら、私は慣れて――ううん、受け入れてみせるよ……!」


 すっと背筋を伸ばして、指で涙をぬぐったフェアさんがにっこりと微笑む。

  

「だって私、ふたりよりお姉さんだからね! もうノエルくんとロココちゃんを――これから増えるお仲間さんも含めて、【輝く月(ルミナス)】を私が見守るって決めちゃったし!」


 きっと勇気をふりしぼってつくったのだろう。目尻に涙を溜めたままのその笑顔は、僕には直視できないくらいにまぶしかった。


「そ、それに、さっきつい上げちゃった悲鳴は、ノエルくんが怖かったからじゃ、ないし……」


 ただ頬を赤らめながら、最後にぼそぼそと付け加えられた言葉の意味は、僕にはよくわからなかったけれど。



◇◇◇



「……本当にいいひとで、強いひとだよね。これからも僕たち【輝く月(ルミナス)】を専属で見てくれるっていうし、ロココのいうとおり、これじゃ本当に頭が上がらないかもね」


「うん。ロココもフェア、好き。……ノエルも、好き」


「ありがとう。僕も好きだよ、ロココ。って、あ。ここじゃないかな? フェアさんに教えてもらったお店。さあ行こう、ロココ」


「うん、ノエル」


 差しだされた小さな手をぎゅっと握る。心なしかロココの頬がほんのりと赤くなってた気がしたけど、やっぱりちょっと寒いんだろうか? 前に体に刻まれた【呪紋】である程度は体温調節ができるから平気とはいってたけど。



 ……今回の冒険者ギルドでは、絡んできた相手がありえないほどに弱くて、どうにかなった。


 けど、着ている服を破かないように速さや数をおさえて袖口といった隙間から出すそんな手加減した【呪紋】では到底実戦では使いものにならないこともよくわかった。


 そうなると、やっぱり戦うときのロココには、いま着ているみたいな普通の服を着せることはできない。


 なら、せめて。


「いらっしゃいませ」


 せめて体を隠すために上に羽織るマントくらいはいいものを、ロココが気にいったものを着てほしい。


 そう決意を新たに、ロココの手を引いて僕は服飾店へと足を踏み入れた……女性冒険者御用達の。

お読みいただきありがとうございます。

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