36話 条件。
「ししし、死ぬ……!? おおおお、俺たちが……!?」
『そうだよ? もしかして、やっぱりあなたたちって頭が悪いの? さっきから僕はそういってるじゃないか?』
「ひ、ひぃぃぃっ!?」
冒険者ギルドの受付の前。
ロココの【呪紋】の縛りですでに動けなくなった、僕たちに突っかかってきた4人パーティーの男たち。
そのリーダーの男をちょっと軽口を混ぜつつ相手の恐怖を煽り立てる特殊な話法でもう一度脅したところ、わかりやすいくらいに顔面を蒼白にしてくれた。
ギルド中に響く叫び声が上がる。
「ひ、ひ、人殺しぃっ!? そ、そんなことが許されると思ってんのか!? こ、この冒険者ギルドの中で!?」
「そ、そうだ! いくら冒険者が基本的に自由だっていっても、こ、こんな街の中じゃ、理由のねえ殺人まではおいそれと許されてねえぞ!?」
同じく顔面を蒼白にした男たちが助かろうと必死に理論武装していい募る。だが、僕はそのことごとくを一笑に伏した。
『はは。じゃあ理由があればいいんでしょ? ねえ、そう思わない? そこの腰の剣に手をかけているお兄さん?』
「う……あっ!?」
「お、お前っ!?」
「な、なんてことしやがんだっ!?」
「な、なんだっ!? どういうことだっ!?」
リーダーの男の後ろにいる3人の男たちの中、叫び声を上げるふたりの男たちの視線がいっせいに真ん中の男に向いた。
その真ん中の男は腰のベルトに着けた剣に手をかけている。そして、よほど頭に血が上っていたらしく、ようやく自分のしたことの意味に気がついたようで、ロココの【呪紋】で動けないままで、わなわなと体を震わせ始めた。
一方、3人の男たちよりも前にいるリーダーの男からは状況がいまいちつかめないでいるらしい。
だから、僕は親切にひと言でリーダーに状況を説明してあげることにした。
『わからない? つまり、これで僕たちは先に攻撃を受けた被害者ってことだよ。同等の正当な反撃が当然許される……ね?』
「う……うわああああぁぁっ!?」
ようやく察しの悪いリーダーも状況を理解してくれたようだ。自分たちが先に僕とロココを殺そうとしたとみなされ、殺されても文句がいえないこの状況に。
さっきまで以上の大きさの、この建物の外まで聞こえるんじゃないかと思うような声量でリーダーの男が断末魔にも似た叫び声を上げる。
それから、息苦しくでもなったのか、空気を求めるようにパクパクと何度も口を動かした。
……そろそろ、仕上げ時かな?
『じゃあ、もういいよね? 僕たちを殺そうとしたんだし、殺される覚悟くらいとっくにできてるでしょ? ああ、せっかくだから最後に殺され方くらいは選ばせてあげようか? こう見えて僕のクラスは暗殺者だからなんでもできるよ? 素手で首を折ってあげようか? やっぱり刃物で綺麗に真っ二つがいいかな? それとも変わったところで――』
「ままままま、待てっ!? いや待ってくださいっ!? たたた助けてくださいっ!? 謝りますっ!? 誠心誠意謝りますからっ!?」
嬉々とした愉しそうに見える顔で自分の殺し方を選びはじめた僕に、ついにリーダーの男の恐怖が限界に達したらしい。
動けないまま涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、僕に向かって懇願を始める。
「ななななんでもしますっ! 土下座でもっ! 靴でも舐めますっ! 金も払いますっ! だからどうか、どうか助けてぇぇぇぇぇっ!?」
『うん。いいよ。助けてあげる。僕がこれから言う条件を飲めばね』
「……ぶぇっ?」
まさかあっさりと僕が許すとは思わなかったのか、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしたリーダーの男がその強面に似合わない間の抜けた声を上げた。
心の中で僕はそっとほくそ笑む。
――ただし、あなたたちにとって、最悪の条件をね?
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