25話 高級食事処。※
※今回は別視点でお送りします。
「まったく! あのいまいましい【闇】の小僧どもめぇ! この我輩にぃ! あのような狼藉をぉ! 絶対に許さんからなぁっ!」
叫びながら葡萄酒をあおり、大きめに切り分けたステーキ肉をバクンと口に運ぶ。
【妖樹の森】でさんざんな目に遭ったあと、ほうほうのていといった有様でやっとのことでつい先ごろ街に帰りついた。
それから、【猟友会】の無能な部下どもを解散させ、気分を変えようと一度屋敷にて着替え、ひとり訪れた我輩いきつけの高級食事処。
芳醇な香りの葡萄酒に、肉汁たっぷりのぶ厚い牛魔物肉のステーキ。
いつもなら我輩を満足させてくれるはずの大好物。だが、いくら口にしても気が晴れることはなかった。むしろこうしている間にも、激しい怒りはますます募るばかりだ。
「うるせーな……。あのオッサン、さっきからひとりでギャアギャアとよ……」
「本当よ……。せっかくの美味しい食事がだいなしじゃない……」
んんん? なにか文句でもあるのか!? 凡愚ども!
「ブオッフォォォォンッ!」
かすかに聞こえてきたひそひそとした耳ざわりな声。だが我輩が軽く咳ばらいをひとつしただけで、それもあっさりと聞こえなくなる。
ブッフォッフォ! お前たちのような凡愚がこの高貴なる血を引くブッフォンさまに意見しようなど、10年早いのだよ! 10年――!?
我輩の咳払いひとつで吹き飛ばされた凡愚どもの憐れな醜態を見ようと店内を丹念に眺めまわすと、我輩の目に信じられないものが飛びこんできた。
「ブフォッ!?」
それは、思わず口の中に含んでいたステーキ肉を吹き出してしまうほどの衝撃。
い、いまこの高級食事処に入ってきた娘……!? 生意気にも髪や肌を清め、身なりも整えているがまちがいない……! あの銀の髪。褐色の肌。そしてあのわずかにのぞくおぞましい赤い紋様……!
我輩の目が怒りでこれでもかというほどに激しく見開かれる。
なぜあの犬ッコロが――いや! 我輩を裏切った犬にも劣るメス豚がこの高級食事処にいる!? いったいいつから、この店は豚にエサを恵んでやるようになったのだっ!?
あまりの怒りと驚きに声を出すこともできないまま、我輩はガタン! と激しく音を鳴らして席を立ち上がった。
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