23話 男の子と女の子。
高級娼館の1階の談話スペース。
体を洗ってもらった3人のお姉さんに連れられて2階へと上がっていったロココを待つ間、ふたたび僕は女主人のリスティさんとソファーに並んで座りながらお茶を楽しんでいた。
「うふふ~。ごめんなさいね~? うちの子たちがすっかりはしゃいじゃって~。いまは見習いの子たちはみんな系列店のほうにいっちゃうから、久しぶりに妹分ができたみたいできっとあの子たちもうれしいのよ~。だからノエルくん、服のことは気にしないでね~? ……それとも、私たちみたいな娼婦が着てた服はやっぱり嫌かしら?」
「い、いえっ! そんなふうには全然思ってません! ただロココは事情があって、ああいう服はあんまり着れないから、もらっても……」
「そうね~? ロココちゃんって変わったクラスの多い【闇】属性の中でもひときわめずらしい呪紋使いだものね~? 気づいたときは私も驚いたわ~」
「えっ!? ど、どうしてそれを!?」
「うふふ~。こんな娼館にいると、自然といろんな情報が集まってくるものよ? それで、いろんな事情にくわしくなっちゃうの~」
そう言ってリスティさんはおっとりと微笑む。
なんでもないことのようにいうリスティさんの態度に内心うろたえながらも、話を続けようと僕はこっくりとうなずいた。
「そうなんです。だから、せっかく綺麗な服をもらっても、たぶん無駄になってしまうんじゃないかと……」
「あら? そんなことはないんじゃないかしら~? いくら冒険者だからっていっつも戦ってばかりいるわけじゃないでしょう~? だから、そういうときに着てくれればいいのよ~。そうね~? たとえば今日はお休み~って日とか~。そうそう、ロココちゃんとノエルくんのデートの日とかなんてどうかしら~?」
「デ、デートってぼ、僕たちは、そんな関係じゃ……!?」
「あらそう~? でも覚えておいてね~? 女の子はね? いつだって、気になる男の子には可愛く見られたいって思ってるものよ~? あ、ほら見て見て~!」
リスティさんに肩をたたかれて2階を見上げる。
「ノエル。 どう……? 変じゃ……ない?」
2階の階段を上った上で真っ白な半袖のミニドレスを着たロココがくるりと回った。フリルのついたスカートの裾が花のようにふわりと広がる。
「ううん。とっても可愛くて、すてきだよ……!」
見惚れる僕の口からは、自然とそんな賞賛の言葉がこぼれていた。
その後も青、赤、黄、紫、黒といろいろな色のミニドレスを着たロココはそのたびに2階階段の上で、はにかみながらくるりと回った。
ミニドレスだけじゃなく、もらった服の中には飾り気のないワンピースやブラウスにスカ―トなんかも混じっていた。
話を聞くと、これは衣装じゃなくお姉さんたちが娼館に来ることになったときに着ていたものらしい。
『いつまでもこんなもの、大事に持っていてもしょうがないしね……?』
お姉さんたちは笑って、そうつぶやいた。
……ただその笑顔は僕にはどこか少しだけ、さびしそうに見えた。
お読みいただきありがとうございます。





