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170話 正直。

新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。

「ニニ、ニーベリージュ・ブラッドスライン!?」


「おや? なにを驚いている? ステーリヤ家のものよ。見てのとおり、【輝く月(ルミナス)】のリーダーである【闇】の勇者ノエルがそこにいるのだ。そのパーティーメンバーである私たちがいても、なんの不思議もないだろう?」


「そのとーり!」


「うん」


 その言葉を証明するかのように、青の霊気をほとばしらせるニーベリージュを小走りに追って、あとのふたりが現れた。


「大勢でよってたかって女の子をさらおうだなんて悪いひとたちは、あたしたちみんな、ぜーったい! ゆるさないんだから!」


「ロココも……おなじ」


 翡翠の瞳の奥に熱く燃える炎を宿してディシーが、青い月のような瞳の奥に静かに燃える炎を宿してロココが、ニーベリージュの左右に並ぶ。


 ただし、その身から前方に向かって放たれている【威圧】にあてられないように、ほんの少しだけ後ろに。



「や、【闇】の勇者パーティー、【輝く月(ルミナス)】……! せ、勢ぞろいかよ……!?」


「お、おい……! どうする……? さすがにこれじゃナルシシスさまには悪いが、オレたちみたいな下っ端じゃもう相手にもならねーぞ?」


 【威圧】にあてられ得物をとり落とし、石畳の上に尻もちをついたままの私兵たちが、あちこちでひそひそと相談をし始めた。


 ――僕はそれをひとつも逃すまいと、魔力を集中して【耳】をすます。



「いや、ていうか……正直いっていいか? 実はオレ、あの娘たちのファンなんだよね! 特にディシーちゃん!」


 ――ん?


「お前もかよ!? かー! やっぱ、あのぶるんぶるん揺れる胸、最高だよな! なんせ、前にいたあのなんとかいう【聖女】さま以上だって噂だぜ!」

 

「そーそー! 一度でいいから、あの豊満な胸に顔をはさんでもらいた――って、ちげーよ!? オ、オレは偶然、前に【輝く月(ルミナス)】のメンバーが酒場でメシ食ってるところに出くわして、そのときのディシーちゃんの裏表のない飾らない人柄にだなぁ……!」


「オレは断然ロココちゃんだな……! お前ら。あの娘が戦ってるところ、見たことあるか? 前に王都の外で偶然一回だけ見たことがあるんだが……本当に見惚れて、目が離せねえぞ!」


「え……! お、お前、そっちの趣味だったの……!?」


 ――んんん?


「それと、なんといっても外せないのは、ニーベリージュさまだよな……!」


「ああ……! もう一歩も動けねえくらい、オレたち心底ビビっちまってるけど……!」


 ――んんんんん?


「「「ああ……! それでもやっぱり……!」」」



「どうした? ステーリヤ家のものよ! いいたいことがあるなら、面と向かってはっきりいうがいい!」


「ぐ、うぐぐ……!?」


 ニーベリージュが紫と赤の眼光鋭く、凛としたしぐさで、まっすぐに指をつきつける。

 

 石畳の上にべたりと座りこんだままの震える男たちの目が一点を見つめ、羨望に染まった。


「「「う、美しい……!」」」


「踏まれてえ……!」



 ……なんか僕のときとぜんぜん反応違わない? ひとり変な趣味なひとまでいるし。僕、これでも勇者(リーダー)なのに。まあいいや。【輝く月(みんな)】が受け入れられ始めてることがわかっただけでも。


 さて。


「にいさま……?」


 【耳】に魔力を集中するのを打ち切ると、僕は腕を交差したまま僕を守るようにじっと立ちつづけていたネヤの前へすっと進みでた。そして、青と黒の輝きを放つ【闇】の聖剣の切っ先を立ちすくむナルシシスへと向ける。


「ひうっ!?」


「ナルシシス・ステーリヤ、だっけ? どうやらこの場で戦意があるのはもうあなたひとりみたいだけど。どうする? まだやる? あなたも手に剣を持っていることだし、一対一ならリーダーとして僕が受けて立つけど?」


「う、うううぅぅ……!?」


 その僕の申し出に、手に持つ自分の装飾過多な剣と青黒く光り輝く僕の【闇】の聖剣とを何度も見比べるナルシシス。


 それから、唇をわなわなと震えさせ、顔を真っ赤にすると――


「お、お、おぼえていろおぉぉぉっっっ!?」


「「「ハッ……!? ま、待ってくださいぃ……! ナルシシスさまぁっっっ!?」」」


 ――いまどき英雄叙事詩(サーガ)の中ですらめったに耳にすることのないお決まりの捨て台詞を吐いて、元貴族ナルシシス一行はその場から蜘蛛の子を散らすかのように逃げ去ったのだった。






お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。



ということで、蹴散らしました。余談ですが、このナルシシスの名前はできれば頭の片隅くらいに置いておいていただけると。


次回「花・2」それでは、また明日お会いできますように。


忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。

これからもどうかよろしくお願いいたします……!

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