16話 地虫(ワーム)。
※虫は出ません。
「盗人だなんて人聞きの悪いことをいわないでくれるかな? ブッフォン。さっきもいっただろ? 助けたくもないあなたたちを【大妖樹】から助けた報酬はきっちりもらうってさ」
「ブブフォォォ……! お前ぇ……! どこまでも我輩を、このブッフォンさまをコケにしおってぇ……! お前、お前もその犬ッコロと同じ【闇】だなぁ……! この身のほど知らずがぁ……! 必ず思い知らせてやるからなぁ……! この我輩に味あわせてくれた痛みと屈辱を何十倍にもしてぇ……!」
少し高くなった日の光が差しこむ【妖樹の森】の中の広場。
豚のように鼻息を荒くし、憎々しげに僕をにらみ上げてくる【猟友会】のリーダー、ブッフォン。
足を折られて無様に地面に這いつくばってはいるものの、僕を脅してくるくらいには、まだまだ元気いっぱいらしい。
うん、はっきり言って気にいらない。【猟友会】こそ、もっとロココに【猟友会】が味あわせた痛みと屈辱をその体で思い知るべきなんだから。
にらみつけてくる【猟友会】のリーダー、ブッフォンを見下ろしたまま、僕は左手につけた腕輪の魔力式を展開。亜空間収納から目あてのものを取り出した。
それは、5本の上級回復薬。
先ほど魔力と体力の消耗が激しかったロココに使ったのと同じもので、いまの【猟友会】たちの負った足の骨折くらいなら立ちどころに治せるくらいの非常に高い効能をもっている。
僕が取り出した上級回復薬を見て、ブッフォンが地面に這いつくばったままでいびつに口の端をつり上げた。
「ブッフォフォォォ……! なんだお前、いまさら後悔でもしたかぁ……? まあいいだろう……! いますぐそれを渡して、その犬ッコロともども我輩の猟犬になると誓えば、一生こき使ってやる程度で済ませてやろう……! 我輩は寛大だからなぁ……!」
「ブッフォン。まともにしゃべれないほどボロボロのくせに、さっきから犬、犬ってうるさいよ? そっちこそ地虫の分際で」
「ブフォッ!?」
「ふっ!」
あいかわらず見当違いのことばかりを口にして、自分たちの現状をなにもわかっていないブッフォンに一瞥だけくれると、僕は足に魔力をこめて、つい今朝がたまでいたこの【妖樹の森】で一番高い木の上へと一気に駆け上った。
そして、一本の太い木の枝の上に上級回復薬を5本ずらりと並べる。
「ブフォアッ!?」
天を見上げたまま驚がくに口を開けて大きく唾を噴き出すブッフォン。
うわぁ。顔にべったり鼻水とよだれがついちゃってるよ。汚いなあ。
そんなことを考えながら僕は木の上から飛び降り、着地した。
それから、【猟友会】に向かって宣告する。
「ねえ、なにしてるのさ? ここは【妖樹の森】。つまり魔物の巣窟だよ? そんな動けない体でいつまでもここにいたら自分たちがどうなるのか、まだわからないのかな? 回復薬は用意してあげたからさ、さっさと取りに来なよ。片足が折れてても這うくらいはできるでしょ? 地虫みたいにさ」
「ブブブッフォアァァァ……!?」
「そ、そんなこといったって! あんな高いところにある薬、どうやってとれっていうんすかっ!?」
あまりの驚きにか豚のような奇声を発することしかできなくなったブッフォンに代わり、【猟友会】のメンバーのひとり、ロココを一番見下していたクズ男が這ったまま口を開いた。
けど、なにを言ってるのかな? このクズは?
「なんでそんなことわざわざ聞くの? 高い木の上にあるものをとる方法なんて、木の枝を揺らして取るに決まってるだろ? さあ、ご託はいいからさっさと始めなよ?」
僕はそこで、ピッと大木を指さす。
「あの木の下まで 地虫みたいに一生懸命に這って服も体もボロボロにしてさ、馬鹿みたいに傷だらけの体を何度もガンガンとぶつけて、あの大木を必死に揺らさないと。早くしないとあなたたち、本当に魔狼のエサか妖樹の養分になっちゃうよ?」
その的外れな質問に、僕はにっこりと心からの笑顔を添えて答えてあげた。
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