166話 姉妹姫との茶会(後編)。
新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。
「ロ~コ~。ププルから~おかえしぃ~。あ~~ん」
「あむ」
王城内、王族区画に設けられた庭園で、お茶会はまだつづいていた。
いまも、ちょこんとロココのひざの上にのった妹姫ププルフェが、口を開けるロココにじゃれつくようにフォークにさした切り分けた果実をさしだしている。
姉の【遠視姫】レーヤヴィヤと同じく、現国王オルドライトを父とする母親違いの妹、【予言姫】ププルフェ。
王城で秘匿されながら、代々つづいてきた【闇】属性、【予言】の今代の能力者。
ときに近く、ときに遥か遠き未来をも夢の世界で識ることで、それを他者へ【予言】として伝えることができる、まさに神のごとき【知識】を得しもの。
……だが、その代償は、この王城を一歩もでることができない姉をも、はるかに超える。
「ふぁぁぁ~」
いまもまた、ロココのひざの上で眠たそうな目をこすりなごら、ププルフェが何度めかのあくびをする。
そう。彼女は、1日のそのほとんどを眠って過ごさなければならないのだ。
それも、ただの眠りではなく、昏睡。なにが起きようとも、そのときがくるまでけっして目覚めることのない、夢の世界へとその意識を沈みこませる深い眠り。
そして、さらに、もっとも大きな代償として――
「あ~! いいないいな~! ロココちゃん、すっかりなつかれちゃって~! ね、ププルちゃん! あたしにもちょーだい!」
「ん~。じゃあ~、ディーにも~、あ~~ん」
「あんむっ! 美味し~! ププルちゃんのおかげで
もっと美味し~! ね、ね、ププルちゃん! ほら、ニーベさんも、ステアも、食べたそうにしてるよ~?」
「な!? わ、私!?」
「ディ、ディシー!? なにいって……!?」
「ん~? いいよ~? じゃあ~、ニーも~、スーも~、こっちきて~」
お互いの顔を見あわせてから、おずおずと近づいていくニーベリージュとステア。
だが、愛らしいププルフェの手からひとりずつその口もとにケーキを運ばれると、頬をほころばせ満面の笑みを見せる。
和気あいあいと女の子たちから囲まれ、可愛がられるププルフェ。
――だが、そもそも彼女は、その見目に見あうほどに幼くなど、ない。
「二―~、スー~、ププルに~、おかえ……ふぁ~~~」
ロココのひざの上でゆったりと体をあずけるププルフェ。両腕を振って駄々をこねようとしたそれが、途中で大あくびに変わる。
起きているわずかなあいだですら、半分眠ったようなその意識。
その内に秘める膨大な魔力も未来の情報を処理するために頭へと特化せざるをえない結果、肉体そのものへの循環が滞おり、その身も心も、極めて緩慢な成長しかできない。
そう。いうなれば。
「ププルちゃん、そろそろ……」
「ふぁ~。ん~、わかった~。レーねえ~。ん~。じゃあ~、さいごにぃ~、ノ~エ~?」
「……え? 僕?」
現在を十全に生きることができないがゆえに、彼女は未来を識ることを許されたのだ。
レーヤヴィヤの手を借りて、ププルフェがロココのひざの上から下りる。
「ん~。ノ~エ~、しゃがんで~。しゃがんで~」
「えっと、こう?」
姉に手をつながれながら、とことこと僕の前まで来るとしゃがむようにうながし――
『【闇】の勇者ノエル・レイス。いまよりオマエに【予言】を授ける』
――その灰色、いや七色の瞳がすっと開かれた。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
ということで、妹【予言姫】ププルが豹変しました。ちなみに見た目よりは年上ですが、極端に上とかではありません。妹ですので。
次回「予言と覚悟」また明日お会いできますように。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!