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164話 つながる断片。

燃料をありがとうございました。

どうかお楽しみください。

 そうか。そういうことだったのか。


 いままで耳にしてきた断片的な情報、そして胸の中でいだいてきた疑問が次々と僕の中でつながっていく。



「た、ただいまお父さまに紹介にあずかりました、今代の【遠視姫】姉のレーヤヴィヤです……! お父さまやププルちゃん、それに、私たちのことを知らされているゴルドーさんのような一部のひとたちからは、レーヤって呼んでもらっています……! よ、よろしくお願いします……!」


 広大な謁見の間。


 みんなの前で、ひと目でわかるくらいにガチガチに緊張しながら、姉姫レーヤヴィヤが恐縮したように頭を下げる。


「ふぁ~。妹の~【予言姫】ププルフェ~。ププルでぇ~いいよぉ~。それでぇ~、この子はぁ~ヌイヌイ~。よろしくぅ~」


 対照的に、いまにもその場で眠ってしまいそうなくらいにゆるみ、だる~ん、と間延びしきった調子で、妹姫ププルフェが抱きかかえたうさぎのぬいぐるみの片手をちょこんと上げた。


 【遠視姫】と【予言姫】。


 あの【死霊行軍(デススタンピード)】の最中、僕たちが【リライゼン】の街で耳にした、いち早く【光】の勇者パーティー【黎明の陽(デイブレイク)】の派遣を可能にした王都の【遠視】と【予言】。


 ずっと不思議に思っていた。そんな特異な技能をどんなクラスなら可能とするのだろう、と。

 

 その答えの断片がいま、ピタリと僕の中ではまる。


 だって、僕たち【闇】属性は、特異なクラスのみにこそ、適正を持つのだから。


 そして、もうひとつ。


「うむ。初顔あわせはひとまずこれでよかろう。では、ゴルドー」


「は。陛下。あとは手はずどおりに。レーヤさま。ププルさま」


「は、はい!」


「んゅ~」


 階段の上、玉座へと向けてうやうやしく頭を下げてから、ふたりの姫を伴って、黄金騎士ゴルドーが僕たちのほうへとやってきた。


「では、場所を移すぞ。【輝く月(ルミナス)】、ステア。お茶会の用意が整っているはずだ。両姫さまがたについてのくわしい話はそこで聞け」


 なぜ、老王は僕を、【輝く月(僕たち)】をすんなりと受け入れることができたのか。


 なぜ、いまや確証のない古き伝承にすぎない【闇】の勇者の到来を信じ続けることができたのか。


 その答えの断片がいま、僕の中でピタリとはまる。


「あ、あの……! よ、よろしくお願いします……!」


「よ~ろ~し~く~」


 目の前でおずおずと頭を下げる成熟した体を持つ眼鏡の女性、そしてそのかたわらに立つ眠たげな目をした少女。


「あ、あの方たち以外に……わ、私の知らない王族が……姫さまが……いた……?」


 そして、いまだ事態を受け入れきれないのか、僕のうしろで呆然と立ちつくすニーベリージュ。


  【恐慌騎士(テラーナイト)】、【遠視姫】と【予言姫】。


 このディネライア王国を永きにわたって、影から【闇】属性の実力者(もの)たちが支えつづけてきたのだとしたら。


 それも、その中のふたりは、王族として、ごく近くに。


「こちらこそ、よろしく。レーヤ姫。ププル姫」


 そんなニーベリージュをふたりの視線からさえぎるように立ち、僕はことさらにっこりと笑顔をつくって微笑みかけた。


 この豪奢な王城の中。隠されるようにして育ち、いまだ脚光を浴びることのないふたりの【闇】属性の姫に向かって。


 叶うことなら連れだしてあげたいと、心からの願いをこめて。



 そんな僕にゴルドーがぼそりと耳打ちする。


「……【闇】の勇者。茶会には私は参加せぬが、道中、貴様にだけ伝えておきたいことがある。両姫さまがたの負う宿命について」



 ――まさか、たったそれだけのことが彼女たちにとって、どれだけ困難かさえ、いまはまだ知るよしもなく。






お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。



ということで、老王がなぜあっさりとノエルたちを受け入れたのか、でした。

次回「姉妹姫との茶会(前編)」また明日お会いできますように。


忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。

これからもどうかよろしくお願いいたします……!

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