15話 聖水。
「それとお前たちが汚い手でかすめ盗った、約束したロココの報酬もね! さあ、わかったら全部返しなよ!」
僕は足に魔力をこめると広場を縦横無尽に駆けめぐった。
「うげっ!?」
「ぐばっ!?」
「ぎゃばらっ!?」
「ばべっっ!?」
「ブブフォフフォォッ!?」
そして、地面に這いつくばる【猟友会】の面々から、ロココに約束した報酬の食料を取り返した。
ついでに荷物の入った袋も全部ひったくっておく。さらについでに、ついメンバーを一発ずつ殴ってしまったけど、思いきり敵対宣言もしてることだし、別にいまさら問題ないかな?
それより、いま大事なのは。
「ロココ、街まではまだ遠いからね。これを食べて力をつけておいて。あ、でもちょっと待ってね? いま綺麗にするから」
僕は左手につけた腕輪の魔力式を展開。亜空間収納から目あてのものを取り出した。
これでも聖剣に選ばれた【光】の勇者パーティーの一員だった僕。それなりにいろんな希少アイテムも持っている。
これは、そのひとつ。浄化の聖水。毒や呪いといったあらゆる【汚れ】を物体から取り除くことができる。だから、当然。
土汚れにまみれた食料へ向けて聖水をふりまく。すると、瞬く間にパンやハム、腸詰めを覆っていた土汚れが落ち、それどころか新品のような艶々とした質感まで取り戻した。
「わあ……!」
「はい。どうぞ、ロココ」
感嘆の息をつきながら青い月のような瞳を爛々と輝かせるロココに、パンとハム、腸詰をひとつずつ渡そうと手を伸ばす。
「あ、ちょっと待って」
おずおずと両手を差しだしたロココを見てから思いなおした僕は、聖水をロココの手に向けて振りかける。
するとこびりついた汚れが消え、そこだけ輝くような艶々の褐色の肌が現れた。
「ありがとう」
お礼をいって美味しそうにロココがパンを、ハムを、腸詰めをほお張る。
口もとに運ぶたびに無意識に笑みくずれるその姿を見て、希少な聖水だったけど使って良かったと僕は心から思った。
さて、残りの食料と【猟友会】から僕のぶんの報酬としてせしめた荷物は、とりあえず亜空間収納に放りこんでおくとして――
「ブブフォフォォ……!? ぐううぅ、痛いぃ……!? お前ぇぇっ……! い、一度ならず二度までもぉ……!? しかも勝手に我々の荷物を……!? こ、この盗人がぁ……!」
――ああ、そうだった。いまの一撃なんかじゃ生温すぎる。【猟友会】にきっちり報いを受けさせないとね?
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