131話 僕たちの【光】。
燃料をありがとうございました。
どうかお楽しみください。
世界を赤く染める陽が沈み、かわりに深く暗い青と黒が世界を染め上げる――そのどちらでもない、昼と夜が混じりあう刹那の狭間。
無数の死霊たちが消滅し、静寂につつまれるグランディル山の頂。瓦礫と化した遺跡にて、迸る青き【光】の刃を手に、僕はその存在と対峙する。
「ノエルゥゥ……! レイスゥゥゥッ……!」
地の底から響くような怨嗟の声を上げる【死霊行軍】の元凶。その始まりにして、そして終わりを告げるもの――【死霊聖魔女王】〝玩弄〟のネクロディギス・マリーア。
その聖女を模した形相は見る影もなく醜悪にゆがみ、その真紅の瞳は憎悪に満ちた【闇】そのものをたたえていた。
眼前に立つその【魔王】の圧力をビリビリと肌で、同時に暴発寸前の膨大な魔力を手の中に感じとりながら、僕はその決意を固めた。
……長くはもたない! そして、大技をくりだす隙も与えない! 今度こそ、終わらせてやる!
「いくよ! 【死霊聖魔女王】!」
体中の魔力を足にこめ、強く一歩を踏みだした。
狙いはひとつ。その胸に、核に。最短距離で、この【光】の刃を、みんながつないでくれたこの最後の希望を届かせる!
「うおおおおおっ!」
「舐なめるなぁぁっっ! 人間んっっ! 【死霊滅陣波】!」
【死霊聖魔女王】の絶叫とともに、まっすぐに駆けだした僕の前を文字どおりさえぎるように黒い炎が埋めつくし、さらに波となって襲ってくる。
「無駄だ! いまさら、こんな小技!」
だが、僕は青い【光】の刃の一振りであっさりとそれを吹き散ら――
「がああアアぁァァッ! 死ィィねェェェッ!」
――そこに、高速で迫る尖ったなにかが飛んできた。
それは、骨。
模した聖女の殻も、魔王の威厳もすべてをかなぐり捨て、その喉を。声帯を。胸を。腹を。体中のすべてを突き破り、無数の骨の槍が僕を目指して進――
「【隠形】」
――その瞬間、僕はほんの一瞬だけ、気配を消した。
「がァァッ……!?」
そして、その一瞬で十分だった。
ほんのわずか僕の位置を誤認して伸びた殺意のかたまり、無数の骨の槍の横を抜け、影を縫うように肉薄する。
「今度こそ、これで終わりだ……! もうこれ以上、だれもお前にもてあせばさせはしない……! 【死霊聖魔女王】〝玩弄〟のネクロディギス・マリーア……!」
「ガ、あ、ア、ア、アぁァァっッ……!?」
もはや聖女マリーアとは似ても似つかない醜悪な魔物と成り果てた【魔王】へ向けて、その青き【光】の刃を。最後の希望を。
「これが僕たちのつないだ絆……! 【闇】属性の僕たちだからこそ、紡げた【光】……!」
「ガがガぐウァぁァァァッッっ!?」
その突き破られた肉の殻の中、剥き出しの【核】へと突き立て……!
「レイス流暗殺術! 奥義ノ弐!」
そして、その迸るすべての魔力を解放! 爆発させる!
「【輝く月・昇華連鎖爆撃】!」
「ガがグオウアアあアアァぁァッッっ!? おノレェェェぇェッっ! ノエるゥゥぅッッっ! レイスゥぅッッっっ!」
そして、すべてを呑みこむ、まばゆいばかりの青い【光】がグランディル山の頂に輝いた。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
そして、まだまだ切実にお願いいたします。どうか燃料をください……!
ということで、【輝く月】のつないだ希望がついに【死霊聖魔女王】の核に届きました。
また、奥義ノ弐の技名を過去を含めて変更しました。【黒点】がこの最後の展開に合わなすぎたので。
次回「結末」
書ききりますので、これからもどうかよろしくお願いいたします……!