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127話 青い【月】。

燃料をありがとうございました。

一日遅くなりましたが、どうかお楽しみください。






「我は刻み、我は顕す! 揺蕩(たゆた)い、惑いし、寄る辺なき欠片! 導き束ね、ひとつと成せ! 【青幻の月(ファントム・ルナ)】!」


 【死霊行軍(デススタンピード)】の始まりにして終着点たるグランディル山の頂。


 赤く暮れはじめた空に、戦場に、青き月が顕現する。それは、高く空の上に浮かぶ本物の月ではなく、ディシーがつくりだした泡沫の幻――僕たちの切り札。


「うふふ。なにを企んでいるのかと思ったら、いったいそれ、なんのつもりかしら? なんの力も、魔力さえも欠片も感じないのだけ――」


 薄笑いを浮かべた【死霊聖魔女王】〝玩弄〟のネクロディギス・マリーアの表情が、そこでそのまま凍りついた。

 

 そう。【死霊聖魔女王】のいうとおり、たしかにあの【月】自体には、なんの力も魔力もない。


 ただし。


「あ、きれい……」


 断続的に聞こえていた【光】の矢を撃つ音が一瞬だけ途切れる。


 かわりに僕の後方から聞こえてきたのは、いまのこの無数の死霊たちがうごめく悪夢のような戦場にはそぐわない、思わずこぼしてしまったような星弓士(せいきゅうし)ステアの感嘆の声。


 いまこの戦場に広がるそれは、たしかに幻想的とさえいえる光景だった。


 戦場に倒れるすべての死霊たちの骸から、その制御を失った魔力がいっせいに無数の青い光となって立ち昇る様は。


「こ、これは……? ま、まさか貴方たち……!」


 空を見上げていた【死霊聖魔女王】の表情が驚がくのものに変わる。



 そう。【死霊聖魔女王】……! お前は最大の失策を犯した……!


「はああああっ!」


「おおおっ!」


 ニーべリージュが槍斧(ハルバード)を、僕が黒刀の鞘を休みなく振るい、次々と死霊たちの骨と腐った肉の体を割り砕き、骸へと還していく。


 すぐにその体に内包された制御を失った魔力は、青い光となって立ち昇り、いまもその大きさと輝きを増し続ける空に上る【月】へと吸いこまれていった。


 そう。僕が望み、ディシーが創りだしたこの魔法は、それ自体にはなんの力もない。ただ吸いこみ、そして大きくなるだけだ。


 この戦場に満ちた制御を失った魔力。仮初の命を失った死霊の骸、僕たちやステアが放った技の残滓。


 それらをすべて吸いこみ、どこまでも際限なく、純粋で膨大な魔力のかたまりとして……!


 これが僕たちの切り札……! 【青幻の月(ファントム・ルナ)】……!


 そう……! つまりは、【死霊聖魔女王】……! 


 お前自身が召喚した【死霊行軍(デススタンピード)】……! それこそがそのまま僕たちの、お前を倒すための力になる……!



「う、うふふ……! あはは……!」


 呆然と空を見上げていたはずの【死霊聖魔女王】ネクロディギス・マリーア。


「あはははははははははははは! これは驚いたわ! 貴方たち人間って、本当にどこまで愚かなのかしら!」


 だがそのとき、その狂ったような高笑いが青い【月】の照らす戦場に鳴り響いた。


 ――その心の奥底から僕たちを憐れみ、嘲るような高笑いが。






お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。


そして、まだまだ切実にお願いいたします。どうか燃料をください……!



ということで、【死霊行軍(デススタンピード)】をそのまま逆にぶつける切り札の完成です。【死霊聖魔女王】は余裕そうですが、はたして……?


というところで、次回「愚かなのは」


現在ストックのない状態での執筆となっております。なるべく早めの更新を心がけますので、どうかご容赦ください。


書ききりますので、これからもどうかよろしくお願いいたします……!

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