98話 勝利と犠牲。※
※この章は基本的に別視点。三人称でお送りします。
「【光】の加護よ! 彼らに力を! 【戦女神の祝福】!」
「おおっし! 力がみなぎるぜぇ! くらえやぁっ! 【閃光突貫】! 」
「ぶつけます! 私のすべて! 【星光烈矢】!」
「滅びろ! 【闇】よ! おおおおおっ! 【聖光十字斬】!」
『グガオオォォォォォッ!? ヤ、灼ケルッ!? ヒ、【光】ガァァァァァァァアッ!? ネ、ネクロディギスサマガグァァァアァァッ!?』
高く上る太陽が照らすグランディガルド連邦のひとつ。
【センティア】の街の北に位置するルドル山の奥地。数多の死霊系魔物の残骸と、傷つき倒れた冒険者たちが転がる戦場で。
聖女マリーアの加護を受けた聖騎士パラッド、星弓士ステア、そして【光】の勇者ブレンからなるパーティー【黎明の陽】の立て続けの猛攻を受けて、鎧を着た髑髏の巨人【死霊魔王】の腹心【死霊将軍】は死闘の末、ついに塵へと還った。
「や、やった……! あのとんでもねえ化物を……! や、やっぱり【光】の勇者は、【黎明の陽】はすげえ……!」
その勝利に肩口の傷をおさえながら、まわりにいる無事な冒険者のひとりが快哉を叫ぶ。
「ああ。たしかにすげえよ……。でもな……」
「いやぁぁぁぁあっ! お願い! 死なないでぇぇっ! 目を開けてぇぇぇっ!」
わき目も振らず泣き叫ぶ少女がすがりつくのは、横たわる上半身だけの青年の体。
あきらかに絶命しているにもかかわらず、それでも少女は何度も揺さぶり、声をかけ続ける。目の前の現実を直視できないかのように。
「ああ、気の毒にな……。知ってたか……? 出発前に少し話したんだ……。あのふたり、もうすぐ結婚する予定なんだって、それはうれしそうに、幸せそうにしてたんだよ……。それが、こんな……!」
固くこぶしを握りしめる冒険者の男に、また別の冒険者が沈痛な面持ちでうなずく。
「あいつらだけじゃねえさ……。オレの飲み友達もほとんど逝っちまった……。大酒飲みばかりだけど、気のいいやつらだったのに……!」
「なあ……。こんなのが本当に手放しで勝利って呼べるのか……? だって、失ったものがあまりにも大きすぎ――」
「ありがとう! みんな!」
その朗々と響き渡る声に、ぼそぼそとした話し声が止み、いっせいに注目が集まった。声の主である水色の髪の青年――【光】の勇者ブレンは続ける。
「いま、俺たち【黎明の陽】は、【死霊魔王】の腹心【死霊将軍】を討伐することに成功した! だが、この勝利はけっして俺たちだけの力じゃない! 己が身を、命を懸けて【死霊将軍】の攻撃から俺たちを守ってくれた君たちの力がなによりも大きい!」
そう。冒険者たちはその命を懸けたのだ。
勇者ブレンたち【黎明の陽】を守るため、文字どおりの肉壁となって。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価などいただきました方、深く感謝申し上げます。
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どうか切によろしくお願いいたします。
そのお礼として、作者は精いっぱい更新をがんばっていきます。
あたたかい感想もお待ちしています。
※というわけで、【黎明の陽】も【死霊将軍】を撃破です。ただし、どうやら【輝く月】とは違い、全体の被害は甚大の模様。
ようやくいえますが、【黎明の陽】はそこらの魔物に後れをとるありえないほどの雑魚ではなく、ある程度の実力者です。
そんな彼らですが、それでもノエルを追放した結果、ふたたび魔王と相対したとき、結果がどう変わり、なにが起きるのか? それがこの2章になります。
どうか引き続きよろしくお願いいたします。
次回、「熱狂」。甚大な被害をもたらした冒険者と【死霊将軍】との戦いでは、いったいなにがあったのか。





