9.お着替えと眼の種類
翌日、土魔法で造った家には布団は無く、体がバキバキである。どうやら睡眠不要の俺も、睡眠を取れないわけではないらしい。
だが今回は寝ずにいるべきだったと後悔している。
横を見るとカゲツさんが「もう身体中バッキバキだよぅ」とか言いながら外に行くところだった。
俺も続いて外に出てみる。
「あ、吸血鬼さんおはよぉ」
「おはようカゲツさん」
「今からラジオ体操やろうと思ってたんだけど、一緒にやる?」
「もう殆ど覚えてないけど、折角だからやろうかな」
「じゃあ始めるよ!ラジオ体操第一!」
それから暫くカゲツさんと朝のラジオ体操をしていたら、終わったところで丁度クロノスさんが家から出てきた。
「ム?らじお体操か、久しぶりに見たな」
「俺も久々にやったぜ」
「やっぱりこの体操をしないと一日が始まったって感じがしないね!」
「それより、お召し物が出来上がりました。早速お召になりますか?」
「もうできたの?なら早速着てみようかしら」
ということで家の中に戻り服を見る。
カゲツさんは白いTシャツの上黒いパーカーをファスナーを開けた状態で着て、デニムの短パンを履くというラフな恰好である。黒いドレスも貰っていたようだが今は着ないようだ。
「へぇ、そういうのも作れるのか。器用なもんだな」
「貴様のはこっちだ」
「どれどれ」
見せてくれたのは、赤いワンピースと女性用の下着だった。ずっと下を履いていない状態だったので、下着は装着した。ブラジャーには苦戦させられたが、何とか理解できた。
だがワンピースは着ようかどうか少し迷う。女性用の下着を着けているというのになにを迷うことがあるのかとは思うが。
「それと、カゲツ様たってのご要望でこちらも作ってみたのだが……」
「俺このワンピース着るから、悪いけどそれ片してもらっていいかな」
「ム?そうか」
クロノスが出してきたのは、フリフリの着いたへそ出しのオフショルダー?(肩出すやつ)にミニスカートだった。そんなアイドルが着るような服はいいです。
あれと比べりゃまだワンピースの方がいい。ということでワンピースを着る。
「にしてもピッタリだな」
「お、吸血鬼さん可愛い!あ、サイズがピッタリなのはクロが持ってる眼のおかげだね」
「眼?」
「クロは神眼を持ってるの!凄くない!?」
「なにそれカッコイイな」
「その眼にかかれば女の子のスリーサイズも丸見えよ!」
「なにそれキモイな」
「……そう言うカゲツ様だって、魔眼を持っているではありませんか」
「魔眼!?」
やはりこの世界にもあるのか魔眼!神眼というのも魔眼の一種だろうか。
あと、俺にも使えるのだろうか。
「あなたの今の気持ちはズバリ、自分にも使えるのか、ということでしょう?」
「あ、あぁ。使えるのか?魔眼」
「魔眼かどうかはやってみないと分からないけど……使えるよ」
「マジか!?」
「使い方は簡単。目に魔力を込めるだけ」
「おお、意外と簡単!じゃあ早速やってみようかな」
「こっち向かないでね」
「了解」
目に魔力を込める。しかし何も起こらなかった。なんで!?
クロノスさんに聞いてみるか。と思いクロノスさんの方を見る。
「本当にこれあってるのか?」
「いや、発動しているぞ。どうやら貴様の眼は邪眼らしいな」
「邪眼?」
「邪眼というのは見たものを金縛りにしたり、今のように相手の視界を奪ったりするようなものだ。今のように」
「ん?あ、悪い」
どうやら俺の邪眼がクロノスさんに発動してしまったらしい。取り敢えず邪眼を解いた。
あと、どうやら俺のは相手の視界を奪う邪眼らしい。
「ま、我と貴様では魔力量にそこそこの差があるからな。我からしたら、少し目の前に靄がかかった程度で済むがな」
「つまり、魔力量に差があり過ぎる相手には通用しない?」
「その通り!でも邪眼はある程度の差なら無視して術にかけることができるから、結構使い勝手がいいのが特徴よ」
カゲツさんがズイっと俺の目の前に出てきて俺の疑問に答えてくれた。
えっとつまり、今出てきたのが邪眼と魔眼と神眼か?それで俺は使い勝手のいい邪眼と。
「そういえば眼って何種類あるんだ?」
「眼には大きく分けて三つの種類がある。一つ目は今言った邪眼。簡単に言えば対象の内側から作用するのが特徴だ。二つ目は魔眼。これはカゲツ様の眼だな。これといって定義はし難いが、邪眼との違いを挙げるならば、こちらは対象に外部から作用するという事だろう。そして三つ目が真眼だ。これは先の二つの攻撃的なものと違い、対象の善し悪しや体調など、様々なものを見ることができる」
クロノスさんがそう言うと、クロノスさんの紫色の瞳が淡い光を放った。どうやら神眼を発動させたらしい。
こう見ると結構カッコイイな。俺も邪眼使ってる時はあんな風になってたのか。
「簡単に言うと鑑定眼ね」
「まぁそれだけではないがな」
鑑定眼。異世界モノの定番だな。邪眼は状態異常か?魔眼はどっちでもないやつかな?
「なるほど、それぞれの特徴は理解した。ただ気になるのが、クロノスさんは真眼、真の眼じゃなくて神眼、神の眼だよな。これはどれに入るんだ?」
「我の眼は真眼だ」
「じゃあなんで今は神眼になってるんだ?」
この疑問にはカゲツさんが答えてくれた。
「眼は成長すると世界から名前を与えられるの」
「名前?」
「そ、クロの真眼の名前聞きたい?」
俺は頷いた。
そりゃそうだ。なんかカッコよさそうだし。
「クロの真眼の名前は、『神眼・星詠』!なかなかカッコイイ名前でしょう?」
「おぉ、なんかカッケェ!俺もそういうの欲しくなってきた!」
「因みにカゲツ様の魔眼にも名前があるぞ」
「マジで!?どんなの?」
「ちょっ!恥ずかしいからやめてよー!」
「勝手に我の神眼の真名を言ったお返しですよ」
「そんな〜」
「カゲツ様の魔眼の名前は『極眼・蓋世』だ。なかなかカッコイイだろう?」
「おぉ!カゲツさんにもそんなカッコイイものが!やっぱ俺も欲しい!……ところで蓋世ってなんだ?」
「世界を支配するほどの力を持っているという意味だ」
「うぅ〜、クロのいじわる〜」
へぇ〜、勉強になるなぁ。
……ん?つまりカゲツさんの魔眼は世界を支配するほどの力があるってこと?ヤバくね?
「まあいいや。俺も邪眼練習しよ」
邪眼とか魔眼って憧れますよね!