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8.クロノスさんはお静かにどうぞ

 流れる沈黙。高圧的な態度で睨んでくる(クロノス)。怯える受付嬢。

 なんか受付嬢さんが可哀想に思えてきた。なんか、うちのクロノスさんがすみません。


「な、なんの御用でしょうか?」

「ここで魔石を買い取ってくれると聞いて来たのだが、買い取りはできるだろうか」


 もしかしてクロノスさん、睨んでるんじゃなくてあれがデフォルトなのか?けど俺たちには、あんな険しい顔は怒った時ぐらいしか見せないぞ?


「ま、魔石の買い取りですね?で、でしたらここではなく、あちらの端にある大きめのカウンターでお願いできますでしょうか」

「そうか、感謝する」


 受付嬢はクロノスさんとの会話が終わったと心の底から安堵している。胸をなでおろしてホッとか言ってるし。


「ところで女」

「は、はい!な、ななななんでしょうか!?」


 受付嬢さんがもうガタブル状態である。どうかこの受付嬢には給料を弾んでやって欲しい。


「布を売っている場所を知らぬか?服を作ってやりたいヤツがおるのだ」

「ぬ、ぬぬぬ布ですか?ぬ、布でしたら、東の大通りにある『レザー・クロース』という店が良い布がおぉ多いと聞きます!」


 もう半泣きである。


「うちのクロがすみません」


 カゲツさんもいたたまれなくなって謝り始めた。


「了解した。ではそこに行ってみるとしよう」

「レザー・クロースさんすみません」


 ということでお待ちかねの換金タイムだ!さて、我らの所持金はいったいいくらになるのか。

 端のカウンターにやってきた。


「おいムグッ!?」


 クロノスさんがカウンターの奥にいる人物に話しかけようとしたところを、カゲツさんが慌てて口を塞いだ。


「すいませーん。買い取りを頼みたいのですが」


 カゲツさんがそう言うと、カウンターの奥から筋肉ムキムキマッチョメンのオジサンが出てきた。


「あいよ、買い取りだったか?お前らギルド証は持ってるか?」

「いえ、持ってません。持ってないとダメでしたか?」

「いや、そんなこたァねぇが、少し安くなっちまうが、それでもいいか?」

「大丈夫です」

「で、お前らは何を売ってくれるんだ?」


 そう聞かれたカゲツさんがクロノスさんをどつくと、クロノスさんは何処からか、青い光と冷気を放つ大きな石を取り出した。意外とデカかったが、なんとかカウンターに入ったようだ。


「な、なんだこの魔石は!お前さん、この魔石をどこで!?」

「ただの氷龍の魔石ですが、どうかしましたか?」

「氷龍だと!?この辺りで氷龍が出たのか!?」

「いえ、実は私たち旅をしていまして、その道中で昔、氷龍から取り出した魔石です」


 なんか驚いているようだけどそんな凄くない魔石なんだよな?それとも今は氷龍の魔石があまり取れなくて希少価値が上がっているのか?


「ともかく、これを売ってくれるってことでいいんだな!?」

「あ、はい。いくらになりますか?」

「そうだな……白金貨二十枚でどうだ?」

「それでいいです。ところで、白金貨二十枚とはどれぐらいの価値があるのですか?」

「は?あぁ、白金貨なんて馴染みがないもんな。白金貨二十枚というとそうだな、ある程度贅沢をしても一生は暮らせるんじゃねぇか?」


 へぇ〜。果物一つ分の価値しかなかった魔石が、まさかそんな高値で売れるとはな。


「そ、そんなに?本当にいいんですか?」

「あぁ、ちゃんとしたとこで売りゃぁもっと値がつくだろうからな。寧ろこっちが心配になるぐらいだぜ」


 取り敢えず、今は大金貨五十枚(白金貨五枚分)を貰い、残りの白金貨十五枚は後日という事になった。


「いやぁ、それにしても凄いね。氷龍の魔石があんなに高額で売れるなんて」

「あっという間に億万長者じゃないか。一生暮らせるってさ」

「氷龍の魔石は今の時代だとアソコまで高価になるのか。我の知っている文明とは大きく異なるな」


 俺たちは今、ギルドを出て東の大通りの布屋さんを寄った帰りである。

 そこでもクロノスさんには喋らせず、カゲツさんが沢山の布を買っていた。

 その時クロノスさんに聞いたことだが、クロノスさんは人間を前にすると自然と顔が強張ってしまうらしい。


「さて、また門を抜けるか」

「帰りは我が転移を使うからその必要は無い」

「なんで行きではそれをしなかったんだ?」

「それは転移魔術が目印をつけた場所にしか飛べないからだ」

「なるほど、転移魔術はどこでもドアじゃなくてルーラみたいなもんだったのか」

「なんだそれは」

「私たちの世界の移動手段よ」

「なるほど、理解しました」


 そんな移動手段はありません。でも今それを言うとややこしくなりそうだから何も言わない。


 ということで路地に入って転移。すると見覚えのある草原に出た。

 俺は元の姿に戻り、ふとクロノスさんの方を見ると土魔法で簡素な家を造っていた。


「今日はここで寝ましょう。我もカゲツ様たちのお召し物を作らねばならぬ故」

「分かった」


 そして二人で家の中へと入っていく。魔法って、こんなこともできるんだ。


「おじゃましまーす」

「へいらっしゃい!」

「カゲツさん、それはお店の人の挨拶では?」

「え?そうなの?」


 家に入ったらカゲツさんに出迎えてくれたけど、お出迎えの挨拶は間違ってもへいらっしゃいではないと思う。

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