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7.街へ

 クロノスさんは倒れているカゲツさんを担いで移動を始める。


「あの、クロノスさん。いったい何処へ?」

「先ずは貴様の服を見繕ってやる」

「人の街か?」

「あぁ、なにか変装とかできないか?流石に魔王が素顔で人の街を歩く訳には行かぬだろう?」

「確かに、それもそうだな。ちょっとやってみるか」


 なんかできる気がするんだよなぁ。本能的なものかな。やり方もなんとなく分かるぞ。


 体の内にある魔力?いや、これは血か?どちらも間違ってはない気がするが……血の中の魔力?

 まぁ、なんとなくだが俺の思った通りに変身出来るっぽいな。


「どんな姿が望ましいと思う?」

「貴様のズタボロの服から考えるに、子供の姿が妥当ではないか?」

「なるほど。ところでお前らは変装とかしないのか?」


 俺は子どもの姿になってそう聞く。


「うむ。ならば顔の輪郭を弄っておこう」


 そう言って、クロノスさんは紫色の魔法陣を出した。何かの魔法を使ったようだ。

 すると二人の顔がぐにゃぐにゃと歪みだし、最終的には誰だこいつって感じになった。クロノスさんの角も綺麗さっぱり消えている。


「スゲェ」

「ただの幻惑の魔術だ。少しクセがあるが、コツを掴めば案外楽だぞ」

「へぇ〜。面白そうな魔法だな」

「タネを言うと、見た者全てに幻惑をかける魔術だが、まぁ看破されることはまずないだろう」

「何故?」

「幻惑の魔術は絶対に掛かるのだ。まぁ相手の魔力量に応じて幻惑の濃さは変わるが、絶対に掛かるが故に、幻惑に掛かったと相手が知覚するまでは無効化できないのだ。代わりに、知覚されるとそれだけで幻惑の魔術は無効化されてしまうが、我の幻惑に気づけるものなどそうはおらん。それに気づいたところで、幻惑が解除されるのはそいつだけだしな。証拠に、今お前には幻惑は掛かっていないはずだ」

「あ、ホントだ」


 なるほど。魔法とは奥が深いな。


 その後も歩き続けていると、街が見えてきた辺りでカゲツさんが目を覚ました。


「んぇ、ここは?」

「お、起きたか。そろそろ街に着くぞ。歩けるか?」

「え、えぇ」

「では、降ろしますね」

「おっとと」


 カゲツさんは降ろされると、バランスを崩し倒れそうになった。咄嗟にクロノスさんが支えていたが大丈夫だろうか。


「大丈夫ですか、カゲツ様」

「ありがとう。もう大丈夫よ」


 どうやら大丈夫らしい。一先ず安心かな。


「ところで、どうやって街に入るんだ?検問とか無いのか?」

「あると思うが、一々そんなものを受けるのも面倒臭いからな、勝手に入らせてもらう」

「なにか策はあるのか?」

「堂々としてれば案外バレんさ」

「知ってる?そう言うのを無策って言うんだよ?」


 そう言いながら俺は魔法を行使する。今回は、自分を中心に半径0.5mを透明化する魔法である。


透明化空間インビジブルフィールド

「やはりか」

「何がやはりなんだ!?これに関しちゃ妥当なラインだろうが!」

「まだ我は何も言っておらんだろうが。ネーミングはともかく、効果はなかなかのものだな」

「それは褒めてんのか?」

「もちろんだ。ネーミングはともかくな」

「テメェは毎回一言余計なんだよ一言!」

「二人とも仲良いね」

「「よくない!」」


 俺の魔法のおかげで検問をスルーして街に入る。……俺の魔法のおかげで!

 途中路地裏に入って透明空間インビジブルフィールドを解除し、大通りを歩く。


「ねぇねぇクロ」

「何でしょうか」

「この街には何をしに来たの?」

「言っていませんでしたっけ。小娘の服を見繕おうと思いまして」

「えぇ!じゃあ吸血鬼さんの服を買いに来たのね!」

「いえ、布を買いに来ました」

「「へ?」」

「何故に布?」

「言ったであろう、見繕ってやると。我自らが貴様の服を縫ってやろうと言っているのだ」

「はぁ?お前裁縫とかできたの?そんなイメージ全くないんだけど」

「無論だ。どれだけの年月を生きてきたと思っている。そもそも、我が今着ているものは全て我の手作りだ」

「「すっご!」」


 クロノスさんの服は黒い軍服の様なもので、その上に外套を羽織っている。クロノスさんってば意外と多芸!?

 因みにカゲツさんはごくごく普通の村娘って感じだ。


「ところで布を買うお金は持ってるの?私持ってないよ?」

「俺も」

「恐らく大丈夫だと思います。適当にそこらで氷龍の魔石でも売れば布を買う金くらいは工面できるかと」

「氷龍って強そうだけど、その氷龍の魔石とやらはあんま高く売れないのか?」

「私が前に売りに行った時は一日分の食料にしかならなかった気がする」

「そうですね。ですが今回は沢山持ってきているので問題は無いかと」

「ところで魔石って、よくラノベで出でくるあれでいいのか?」

「うん」

「おけ」


 氷龍って名前からして強そうなのに意外と安いんだなぁ。だって龍だよ?ドラゴンだよ?

 強そうだけどなぁ。そうでもないのかなぁ。

 などと考えていたら、クロノスさんが人に話しかけていた。


「そこの御仁よ、少しいいだろうか──」


 ふむ。魔石を買い取ってくれる場所を聞いてたみたい。


「どうやら冒険者ギルドという場所で魔石を買い取ってくれるらしい。場所も聞いた。行くぞ」

「「冒険者ギルド!?」」

「なにかマズかったでしょうか」

「いやだって冒険者ギルドだよ!?」

「やっぱ異世界モノっていったら冒険者ギルドだよね!」

「「ワクワクする〜!」」

「……?」


 俺とカゲツさんはワクワクしながらクロノスさんについていく。

 そして少し歩いた所でクロノスさんが立ち止まった。その先には大きな建物がある。

 入口の上には剣と杖が交差している大きなエンブレムが着いている。


「着いたぞ」

「「おぉ〜!」」

「これが冒険者ギルドか!」

「思ってたより大きい!」

「それでは、入るとするか」

「「は〜い」」


 ギルドの中は酒場も兼業しているらしく、酒臭い。椅子とテーブルがいくつか置いてあり、冒険者と思われる人達が酒を呑んだり話し合ったりしている。

 端の方へ目を向けると大きな掲示板があり、あそこに依頼が貼られるんだろうと思う。入口から真っ直ぐ行けばカウンターがあり、何人かの受付嬢がカウンターに立っている。

 正にザ・冒険者ギルドって感じで心躍る!

 クロノスさんは迷いもせずにカウンターへと歩いていくので、慌ててそれを追いかける。


「おい女」

「は、はいなんの御用でしょうか」


 カウンターに着くや否や、クロノスさんが受付嬢に言い放った言葉がこれである。

 なんでこいつはこんなに高圧的なんだよ。受付嬢怯えてんじゃねえか。

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