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6.吸血の恐怖

ギリ今日中に間に合ったぁ!

 俺の前には今、首筋を出して見つめてくるカゲツさんがいる。

 うむ。なんというか、エロスを感じ得ませんな。


「きて……」


 おぅふ!そんな言葉を囁かれたら、男としていくしかないじゃないか!まぁ今は女だが。

 俺はゆっくりとカゲツさんの首筋に近づき、首筋を真近で見る。

 ん?なんだ、この感覚。頭が少しボーッとして……。


「ンアァッ!」

「!?」


 気がついたら、俺は彼女の首筋に噛み付いていた。

 ていうか今、カゲツさんの口から凄い声が出たけど大丈夫なんだろうか。ちょっと不安なんだけど。


「おい小娘。大丈夫なんだろうな」


 分からない。このまま続けていいものなのか?今もまだ声を出し続けてるし、止めた方がいいのかな?


「も、もっとぉおー!んっ!アァンッ!」

「おい小娘!本当に大丈夫なんだろうな!?」


 怖いよ!なに?何なの?俺まだ噛み付いただけなんだけど!血はまだ吸ってないんだけど!

 どうすんのこれ!?やめんの!?やめないの!?どっち!?


「吸血鬼さん!モットォ!」


 やっていいのか!?いいんだな!?やるぞ!?俺はやるぞ!?


 少し強く噛むと血が出てくる。それを舐めとってみる。

 ……美味い!今までこれほど美味しい物を食べたことがあるだろうか。否。例え世界中のあらゆる力を持ってしても、この味を超えるものを作ることなど到底不可能だろう。そう思える程に美味い!


「アッ、ダメっソンナ!イヤ、アァ〜ンッ!」


 は!?俺は一体何を!?俺の目の前には頬を赤らめて、ピクピクと痙攣しながら失神しているカゲツさんが。荒い呼吸をしているし風邪でも引いてしまったかな?

 などと若干現実逃避気味な事を考えていると、後ろから頭にポンっと手を置かれた。


「おい小娘、これは一体どういうことだ?説明してもらえるんだろうな?」

「エ!?ええっと〜」


 おこ?おこなの?クロノスさん怒ってる?ちょっやめ、手に力込めないで!頭がガガ!イデッ!イデデデデデデデデ、やめ、ヤメローッ!


「潰れる!潰れちゃう!それ以上はマジでヤバい!頭ミシミシいっちゃってるから!死ぬ、死ぬーーーっ!」

「いいから説明しろ!なにが!どうなったんだ!?」

「分かった!説明するから!それ以上はマジで潰れちゃうからァ!」


 ようやくアイアンクローを解いてくれた。助かったァ。


「これから今起こったことをありのまま、話すぜ!俺はカゲツさんの首筋を確かに見ていた。心の準備が整うまではそうしてようと思っていたんだ。だが、気がついたら、俺は彼女の首筋に噛み付いていたんだ!あれは催眠術だとか、超能力だとか、そんなチャチなもんじゃぁ断じてねぇ!もっとやべぇモノの片鱗を、味わった気がするぜ」

「そうか。で、なぜカゲツ様はあんな危ない言葉を連呼した後、倒れてしまったんだ?」

「いやぁそれが俺にも全く分からなくてさ」

「ふむ。……ならば我に噛み付け、小娘」

「はぁ?あんたそういう趣味があったのか?」

「違うわ!カゲツ様が倒れた原因を調べるためだ!」

「なるほど!頭いいなお前!頭……いいか?じゃ、いくぞ」


 今度はクロノスさんの首筋にガブリ。

 おぉ!やはり血は美味いな!


「よし、もういいぞ小娘。原因が分かった」

「こんなに早く。で、原因はなんだったんだ?」

「……」

「えっと、なんだったんだ?」

「……快楽物質が異常分泌されるのだ」

「……は?」

「貴様のその牙に噛まれると、そうだな、端的に言うと、とっても気持ちよくなれるんだ」

「俺の牙をそんな違法薬物みたいに言わないでくれます!?」

「同じようなモノだろう。まぁつまりだ。その……カゲツ様は……その……あまりの気持ちよさに失神してしまわれたのではと」

「……」

「……」


 なんだよ!スゲェ気まづいんだけど!?

 でもカゲツさんもカゲツさんだよ!もっともっとなんて言われなきゃ俺だってすぐ止めてたわ!

 だって怖いもん!何あれ!いくらなんでも叫びすぎでしょ!死んじゃうかと思ったわ!


「……取り敢えず、だ。小娘、これからどうするのだ?」


 あからさまな話題転換!乗るしかない、このビッグウェーブに!


「いや、特には決まってないかなぁ。逆にそっちは行く場所とかあるのか?」

「ム?まぁ適当に人里で暮らすのも良いが、昔の件もあるからな。まだ迷っている」


 人は信用できないか。ま、あんな事が起こったらな。

 あ、そうだ!


「じゃあ俺は魔王になろっかな!カゲツさんが黒の魔王だったなら、俺は吸血鬼だし赤の魔王とかどうよ!」


 やっぱ魔王って憧れるよね!


「いや、貴様の髪色は白銀だし白の魔王が妥当ではないか?」


 そういえば俺、自分の容姿見たことないな。


「なあ、俺ってどんな見た目してるの?」

「ム?それはもう見窄らしい見た目をしておるぞ?ボサボサの白髪にボロボロの麻布を纏った破廉恥な恰好。だがまぁ、その真紅の瞳はとても綺麗だな。人里で売ったらそこそこの値がつきそうだ」

「最後スゲェ物騒なんだけど!」

「いい金策ではないか」

「よくねぇよ!売る度に目を失うとか嫌すぎるわ!」

「……どうせ目などすぐ再生するだろうに。ちょっと痛いだけだぞ?ほれ」


 そう言ってクロノスさんは自分の右目を抉り出した。


「ほれじゃねぇよ!なにやってんの!?」

「見よ、もう再生した。これはやろう」

「いらねぇよ!」

 

 クロノスさんは俺にさっき抉り出した右目を放ってきた。俺は身体強化を全力で行使し、思い切り平手で飛んできた目玉をぶっ叩いた。

 目玉はとても硬いらしく、勢いよく地面に叩きつけられ、小さなクレーターを作ろうともその形が崩れることはなかった。……硬すぎでは?


「くだらん事をしてないでさっさと行くぞ」

「行くってどこに?」

「魔王になるのだろう?ならばいつまでもそんな破廉恥な恰好ではいかんだろう」


 クロノスさんは不敵に笑いながらそう言う。


「意外と乗り気だな。お前はこういうの、そこまで興味無いと思っていたが」

「そんな事はない。カゲツ様の影響か、我もそういう事には興味がある。それに、恩人の願いだ。叶えてやらぬ訳にはいかぬだろう?」


 まぁ、俺の今の服はボロボロの麻布一枚で下は履いてない。ボロボロの麻布は秘部が隠せているのが奇跡と言っていい破廉恥な恰好だ。

 確かにこれは、魔王の服装とはいえないな。

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