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53.謹慎中の総指揮官

フハハハハ!久しぶりだな諸君ッ!!

今宵も、暗黒破壊神である余が貴様らに意外と知らない豆知識を……と思ったのだがその前に、先日気になる事を聞いてな。

どうやら富士の樹海でコンパスが狂うと思っている者が多いらしい。真偽は不明だが、余の盟友からは富士の樹海でコンパスが狂うことは無いと言っていたと思うが……。

では豆知識の時間だ!


地震雷火事親父の親父は実は『お父さん』のことでは無く『台風』のこと。


これで貴様らも一つ賢くなったな!フハハ八八ノヽノヽノヽノ \!!




 僕は帝城の廊下を歩いてイリーナのいる部屋に向かっている。

 すると前から全身鎧に身を包んだ、二メートルは超えているだろう長身の女性が歩いてくる。と言っても、顔まで冑で隠れているので鎧の形状から女性だと判断しているだけだが。

 ヤツはレーニアンタ。歳は離れているが一応同期だ。三年前から軍に所属している。


「お、ユヅじゃないか。相変わらずちっこいな」

「黙れ。それと、僕の名前はユヅじゃなくてユヅルだ」


 クソ、こいつ僕が身長を気にしてること知ってて、ワザと言ってきてるな?


「それと、城の中ではそのクソ重い鎧を脱げと言っているだろう」

「別にいいだろ。私が何をしようと私の勝手だ。私が何を着ようともな」

「貴様がその姿で上の階を歩いているのを見ると、いつ床が抜けるのかとヒヤヒヤさせられる」

「ん、なんだ?心配してくれるのか?可愛いヤツめ」


 そう言いながらヤツは僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。


「あ、おいやめろォ……!」


 僕はその手を払い除けながらヤツの横を通り過ぎる。


「あ、そういやぁアラタとアクトの二人がスゴい青ざめた顔で鍛錬してたぞ?」

「知ってる。丁度その件でイリーナに用があったんだ」

「そりゃあ……ご苦労さん」

「……まぁいい」


 通り過ぎザマにかけられた言葉に軽く返して、引き続きイリーナの部屋に向かう。

 そして、イリーナの部屋の前で何やら部屋の中が騒がしいことに気がつく。

 恐る恐る部屋を開けると、イリーナに抱きつかれたアリアリーゼの姿があった。


「何をしているんだ?」

「たすけて……!」


 おかしい。僕は何が行われているのかを聞いたはずなのに、助けを呼ぶアリアリーゼの声がする。

 

「まぁいい。戯れはいいが死なないように気をつけろよ。それよりもイリーナ」

「今イリーナさん寝てるから気づいて無いと思う……任務完了の報告に戻ったら捕まって動けなくなった。たすけて」

「酷い寝相だな」


 とにかく、起きてもらわないことには話は進まないか。

 僕はそう思い、懐から拳銃(・・)を取りだしイリーナに向けて──


「起きろ、イリーナ」


 ──発砲した。

 それに合わせてイリーナは左拳を前に突き出していた。


「かなり刺激的なモーニングコールね。次はもっと優しめでお願いするわ」

「当然のように銃弾を掴むのをやめろ。感覚が狂う」

「離して……」


 イリーナの左拳が開き、そこから今放たれた銃弾が現れ、床に落ちる。

 やはりただの鉛玉では効果は無いか。


「まぁいい。イリーナ貴様、アクトとアラタの二人に手紙を送ったそうじゃないか。二人が震え上がっていたぞ」

「あの手紙に一体何が……」

「そうなの?昨夜言っておいたはずなのだけれど。そうだ、第四闘技場って使っても大丈夫よね?」

「丁度その事で話があってきた。第四闘技場は現在メンテナンス中だ」


 なぜだがアリアリーゼが青ざめている気がする。まぁ彼女に限ってそれは無いだろう。

 まぁいい、話を続けるか。


「そうなの?他に空いてるところはあるかしら?」

「他に空いている闘技場は第五になるが、あそこでは少々手狭だろう」


 第五闘技場は広さこそピカイチだが、民間に開放されていて人が多く、使えるスペースが限られるのだ。


「そうねぇ。態々そう言ってくるってことは、他に何かあるのかしら?」

「城の中庭に開けた空間があるんだが、そこの広さが大体第四闘技場程ある。今日は殆ど出払っているから自由に使えるはずだ」


 この非常時にあの(バカ)どもは暢気に旅行に出かけているらしい。旅行先で暗殺されてしまえ。


「確かに、この城の中庭の広さは異常だものね。で、それを言うためだけにここまで来たの?暇なの?」


 この城の中庭は初代神器の一人によって空間が拡張され見た目よりも広くなっているらしい。


「暇だ。今は謹慎中の身でな。時間を持て余しているんだ」

「指揮官も大変ね」

「特にあの様な暗君では尚更な」


 頭も悪い、素行も悪い、性格も悪い。そのクセ野心やプライドは異常に高い。

 全ての軍隊の総指揮を担っている僕はあの暗君の愚行を抑制していたが、それが気に食わなかったのかヤツは僕に城内での謹慎を言い渡した。

 有り得ないだろ。僕は総指揮官だぞ?


「そういう事は無闇に口にしない方が身のためよ?」

「……分かってはいるつもりなのだがな──」

「とはいえ、時には発散も重要だものね。休暇だと思ってこの謹慎を楽しみなさい」

「ふむ。そうだな、貴様の言う通りだ」

「そろそろ離して欲しい……」

「あら、ごめんなさい」


 なんと言うか……しまらないな。

 っとそういえば、アリアリーゼにも用があったな。


「そうだ、アリアリーゼ」

「なに?」

「魔道具のメンテナンスが終わったらしい。一応貴様の部屋に全て送られて来るよう手配したが、よかったか?」

「うん。ありがと」

「本当に暇だったのね……」


 イリーナが呆れたような声を出しているが、当然だ。城から出ることすら禁じられているのだ。暇じゃないわけが無い。


「それじゃあ、僕は中庭に皆を招待してくるとしよう」

「分かったわ。私たちも準備してからすぐに行くわね」

「え、私も?」


 アリアリーゼは後学のために見学するのもいいだろうな。

 なんせまだ神器になってから五ヶ月半だ。それ以上前から面識があるから分かるが、彼女は少々勘に頼りすぎる傾向にある。

 彼女は有り得ないほど勘がいいからそれでも何とかなっているが、それだけじゃどうしようもならない時が来るだろうからな。

 まぁ、そんな時が来ないならそれが一番いいんだが。


 僕は先程言った通りに神器の皆を中庭に招待しに向かった。その時にアクトとアラタの顔が更に青ざめたのは言うまでもない。

暗黒破壊神がなんか言ってたのでこっちでは本作のちょっとした設定をば。


実は今回登場したユヅルとアリアリーゼは共に十三歳で同い歳。本作で出す機会を逸してしまいそうだったのでここで勘弁。

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