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50.マザリモノ

気がついたら50話になってました!

マズイ……できるだけ話の流れを早くしているつもりなのにもう50話……ま、いっか。

 翌朝、ユリウスは国王アルディーノ・アストライアの私室で二人きりで報告を行っていた。


「ふむ、万事恙無く。と言ったところか。それは良かった。して、そろそろ話してくれてもよいのではないか?」

「なんの話だ?」

「しらばっくれるでない。玉座の間では話を合わせてやったが、貴殿が何故国境まで出向かねばならなかったのだ?貴殿の報告を聞いてもよく分からなんだが」

「あぁ、そのことか。それは撹乱のためだな。鉄馬車を使って三日で第一騎士団を運ぶ。鉄馬車で戦場に突っ込んだのは相手にそれを悟らせるためだ。そして俺が戦場で猛威を振るい、帝国軍のみんなに俺の俺の活躍を頭に刻み込んでもらう。その翌日には八帝神器に俺と王都の近くで戦ってもらう。すると、どうなると思う?」


 ユリウスの問いに、アルディーノは少し黙考した後に答える。


「互いの報告との間に齟齬があったと錯覚させられる、ということか?」

「その通り。まさか鉄馬車で三日かかる距離を一日で走破するやつがいるとは思わないはずだ」

「つまり、貴殿が国境に赴いたのは、同時に、同一の者が、離れた戦地で現れたという状況を作るため?」

「ま、そんなところだな。説明できなくてすまなかったな。あん時ゃ時間が無くて」

「理解しているとも。謝ることではない。にしても、貴殿がそこまで考えて動いていたとは驚きだ」

「いつも俺が考え無しに動いてるみてぇな言い草だな」

「なんだ違うのか?」

「違う!俺はこう……なんだ?海よりも高く山よりも深い……あれ?んがァ〜!もうこの話はやめだヤメ!」


 まるで言い訳じみたユリウスの返しに、アルディーノは声を出して笑う。


「お前……!よし分かった。そういうことすんなら剣の稽古はお預けだな」

「そ、それは卑怯ではないか!?」

「戦場では卑怯も何も無ぇんだぜ、国王陛下?」

「グヌヌ……」


 焦った様なアルディーノの言葉に憎たらしい笑みで返すユリウスであった。

 

───フィーネside───


「イィイヤダァ!た、たたたすたす助け……けてけててててすけすけすけてぇてて」


 人語を解し二足歩行する謎の生命体の不気味な叫びを、私は手に持った剣で頭部を突き刺すことで止める。


「本当に何なのコレ。どいつもこいつも命乞いばかりで、気味が悪い。ついでに後味も」


 そう呟きながら私は辺りを見渡す。あんなにいた帝国の兵が、今や数百人というところまで数を減らしていた。

 この数ならば私が手を出さなくても他の騎士に駆逐されるでしょう。ここまで戦局が優位に進んだのも、偏に団長のおかげでしょう。なんたって、一人で全体の半分以上の帝国兵を屠っていたのだから。

 この功績に免じて、殴る回数を五発から二発に減らしてあげましょう。


「よし!狩りは終わったな?総員、一度兵舎に帰還するぞ!」


 私の指示に皆が各々の返事を返し、指示に従って駐屯兵舎に戻っていく。そうして自らも帰還するフィーネ。

 駐屯兵舎に到着した私は、遠目に兵士の人と話している幼い女の子の姿を確認する。


「子ども?なんでこんなところに?」


 気になった私は兵舎に入らずにそっちに向かう。


「ねぇ、その子……あなた、その子から離れなさい」

「え?」

「いいから」

「は、はい」


 近づいたことで私はある事に気づいた。気づいてしまったなら、私は兵士を下がらせずにはいられない。


「この子は?」

「森で調査をしている時に見つけました」

「森?あぁ、団長に言われて行ったジャウラ大森林ね」

「はい。そこで調査をしている時に、不自然に拓けた場所がありまして……」

「そこにこの子がいたってわけね」

「えぇ、それとその空間、不思議と霜が降っていたんですよ」

「霜?」


 今は萌芽の月の終わり。ただでさえこの地域は温暖で雪があまり降らないというのに、おかしな話ね。


「……他には?」

「いえ、それ以外は不自然なほど。草の一本さえもありませんでした」

「……」


 森なのに何も無い?ギャップ?いえ、それでも普通なら草等の小さな植物は残るでしょうし、もしギャップだとしても何らかの原因がある筈。

 その原因の可能性が一番高いのは、この女の子か。けどこの子に木々を消滅させうる程の魔力量は感じられない。それに、霜が降っていたっていうのが一番よく分からない。


「フィーネ殿、この子がどうかしたのですか?」

「……この子、人間じゃないわ」

「人間じゃない?」


 まぁ当然の反応だろう。見た目は普通の、十歳かもっと低いくらいの女の子なのだから。

 茶髪に茶色い瞳。どこか活発そうな、笑顔が似合いそうなその顔。そして皮膚の質感などの細部まで人間そのものだ。

 だがその体に流れる魔力の流れと質は、普通の人間とは明らかに異なっている。


「ここまでの精度で人間に擬態できる魔物よ。高い知能と厄介な特性を持っていてもおかしくない」

「りょ、了解」


 兵士が腰の剣を抜き、私もいつでも抜けるように手を添える。


「ま……ま、て」


 喋った!?今のは『待って』かしら?

 私たちの言語を理解している?だとしたら、かなり高い知能を有しているのは明白。少なくとも、この子には言語の概念がある。


「ぼ、くは、わ……るいす、らい、む、じゃ、ない、よ」


 何かを伝えようとしている?声帯までは上手く再現出来ていないのか、途切れ途切れの言葉だったけれど。


「今のは、『僕は悪いスライムじゃないよ』であってるかしら?」


 私の確認に首肯で返す。やはり、この子は私たちの言葉を理解している。


「つまり、あなたはスライムってことかしら?」


 もう一度、彼女は肯く。

 ならば彼女はスライムということになるが、スライムが知能を示したことは長い魔物学の歴史の中でも一度も無いはずだ。だが、スライムは魔物としてだけではなく、生物としてとても強い種族だと言われている。それ故に、スライムは生まれてくる時に、代償として知能を失うのではないかと言われてきたのだが……。


「で、そのスライムが私たちになんの用?」

「よう、は、ない。つ、れ、てこ、ら、れた」


 彼女の言葉に私は兵士を睨む。


「あ、ええとその、コレはですね?その時点ではまだこの子が魔物だったなんて気づいてないわけでございましてですね?えっと万が一があったら取り返しがつかないのでその……」

「はァ……。もうイイわよ。私が悪かった。そうよね。むしろ魔物だって気づいてないのに子どもを森の中に置いていくなんて判断をしてたら、それこそあなたは人でなしだものね」

「よう、ない、けど、おねがい、が、ある」

「お願い?」


 唐突にされる魔物である彼女からのお願い。お命頂戴的なやつなら即刻切り捨てるけど……。


「ぼく、いや、このから、だの、お、もいを、つ、つたえて、ほしい!」

「「?」」


 その言葉の意味が分からず、私たちは頭に疑問符を浮かべる。

 一体どういった内容なんだ。

新しいものでも書こうかしら。

と、心のどこかで考えている自分がいる……!

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